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三章 十七歳、夏  雷鳴の夜2

 その日のお昼時も、気が付けばみんなの将来の話になっていた。

「稜人君は部活の推薦で大学行く予定なんだよね。……もうほとんど決まってていいなぁ」

「まだ決まってねえよ。まあ、落ちないように頑張るけどな。楓子は私大の文学部志望だったか」

「うん」

 最近付き合い始めた二人は、お互いの名前を呼ぶのもどことなく初々しくて、可愛い。ニヤニヤしていたら、楓子にもうっとはたかれた。

「花咲さんは、どうして文学部に行きたいんだい?」

「うーんとね、まだ秘密、かな?綾香ちゃんはどうするの?」

「……多分、どこかの大学にいく……?」

「何それ」

 笑いながらご飯を食べている楓子が、本当はめちゃくちゃ頑張っているのを私は知っている。前にこっそりと彼女が教えてくれたのだ。

『私は小説家になりたいの』

『えっ? でも小説家ってほんとに一部の人しかなれない狭き門だよ?』

『確かに、売れっ子になってそれ一本で食べていこうと思ったらね。でも最近はネットとかからアマチュアの作品が発掘されることも多くなってきてるし、可能性は広がって来ているわ!兼業でもいいの。ーー私の本をいつか、小さな頃から通っている大好きな書店に並べたいの』

 ふわふわ笑っている彼女は、今でもネットの小説投稿サイトにコンスタントに話を上げているという。

 彼女から話を聞いた後で、調べてみると、結構コメントが来ていたりして自分のことのようにう嬉しかった。

「ーーーーさん、ーーさん、聞いてる?夏沢さん」

「あっ、ごめん巽君、何の話?」

「もうっ、綾香ちゃんったら、夏祭りの話だよ」

「そうそう、夏祭りならちょうどお盆の時期開催だし、夏期講習も休みでしょ?息抜きにどうかな?」

 この町には、地元ではちょっと有名なお盆に開催する夏祭りがあるのだ。

 今まではお盆は毎年家族旅行に行っていたのだが、今年はーー。

「うん、行けると思う」

「そっか、良かった!このメンバーで仲良くなったの今年からじゃない?だから思い出も作っときたくて」

 きらきらと瞳を輝かせる楓子がかわいくて、思わず抱きしめた。

「わぁ!どうしたの、綾香ちゃんっ」

「ううん、いい思い出にしようねっ!」

「うんっ!!」

「おーい、俺たちは放置かよ」

「どんまい、稜人」

 男の子たちが何か言っていたが、とりあえずかわいい楓子が優先なので、放置することにした。


 その日の夕食。

  いつもは無言な食卓で、私は久しぶりに母に話しかけた。

「お母さん、私、今年のお盆休みは友達とお祭りに行くから」

「なっ、あんた、勉強はどうするの!?」

 そういわれると思っていた私は、あらかじめ用意していた学校の模試の結果をテーブルの上に取り出した。

「これみて。成績は落としてない。国公立の文系なら大概のところは合格圏内な偏差値だし、理系もだいたいは狙える。これ以上って、お母さん、私をどの学校に入れるつもりなの?」

 お母さんの受験じゃあるまいし、と言うと、母は言葉に詰まったようだった。

  その様子を私は冷めた目で見つめる。そのまま席を立った。

「ごちそうさま。二階で勉強してるから、来ないでね」

「……許さないわよ……」

 母が私の背に向かって、何か言った気がしたが、無視して二階へと上がっていった。

 部屋の座椅子に座って、天井を見上げる。

 ぼんやりと蛍光灯の光を見つめてから目をつぶった。

 思い出すのは先ほどの母の顔だ。

「なんでこうなったのかなぁ」

 三年前の今頃は、家族三人が揃っていて、同じく受験生だったが、お盆休みが一番楽しみだったはずだ。家族で旅行に行って、美味しい物を食べて、ちょといい旅館やホテルに泊まって、その中で父も母も良く笑っていたのだ。

 私はそのころの光景を瞼の裏に思い浮かべて懐かしんだのだった。


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