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「それはつまり……、平民になるという事ですか?」
「あぁ、既にその届け出も出してきた、この家も出て行く事になるし国も出て行く事になる」
「国もですか……」
「王家や公爵家に迷惑をかけたんだ。この国で暮らしていく自信はない……、それでエマお前はまだ未就学であり社交デビューもしていない。流石に何の迷惑もかけていないお前をこのまま一緒にする訳にはいかない、まだ話はつけていないが親戚の家に養女として引き取って貰う、という手もあるがどうだろうか?」
「親戚、って誰ですか?」
「弟のルイフォースの所に『絶対嫌です!』お、おぉう……?」
私の大声にお父様は驚いた。
「あの家だけは絶対に嫌です! あそこの娘のエミリーとは仲が悪いんです! 何かと私の事を目の敵にして嫌味を言ってきたりしますし、同じ家に暮らす事になったら私は下働きみたいな生活をしなければなりません! あの女は必ずしてきます!」
「そんなに仲が悪いのか……、ならばこの話は無しだな」
「それよりお父様達はどうなさるんですか?」
「私は隣国のクルーベル王国に知り合いがいるから頼ろうと思っている。妻のカルティアは実家に返す事にした。これは話し合いでお互いに納得して決めた事だ」
できれば私もその話し合いに参加したかったけどまだ学園に通っていない私に発言権など無いし決まった事に従うしか無かった。
結局、私はお父様と一緒に母国を出て隣国へ引っ越す事にした。
勿論、そこで貴族としての生活が出来る保証なんてない。
ただ、このままこの国で平民として暮らしても幸せになんてなれない。
それだったら心機一転して新天地で暮らした方が良い、と思ったのだ。
そして1か月後、荷物を纏めて私とお父様はクルーベル王国へと旅立ったのだ。