第2話 異界の魔術 (少し改良)
あらすじ……
有宮 カエデという、超高スペックな美少女に告白された主人公・神崎 七星。
いつもの日常が一転してしまった、彼はカエデから自身の両親と異界魔術について知る。
その後カエデに連れて帰られるが………
二話
「あれここは?」
目覚めるとそこは、自分の家ではなかった。
そこはホテルのような内装だった、すると横から声が聞こえた。
「おや、起きたかな?」
その声は聞き覚えがあった。
完全にカエデの声だった。
「カエデさん?」
その人物を言い当てると、微笑みながら。
「おはよう、七星クン…いや、こんばんはの方が正しいのかな?」
そこには先ほどまでの学生服ではなく、部屋着を着た彼女だった。
上半身は水色のTシャツを着て、下半身は白色のショートパンツだった。
雪のように白い肌は、彼女の全身に広がっていた……詳細に言えば、顔・腕・足…全てが白い肌で構成されていた。
「えっと、ここはどこですか?」
彼女は少しの静寂の後、口を開く、そこから出た言葉は、俺を驚愕させた。
「ここは私の部屋だよ、まあホテルみたいだけどね」
「ちょっと!?大丈夫なんですか?」
女子の部屋にいることに対して、全く驚きを隠すことができなかった。
あまり女子との付き合いがないせいで、脳内が緊張という名の情報で押し潰されそうになる。
彼女は少し不思議な顔で見ると、数秒後笑いだす。
「やっぱり七星クンは可愛いなあ」
笑い混じりで言葉を流す。
俺はカエデが笑っていることに、なぜ笑っているのか疑問を抱いた。
「カエデさん笑いどころじゃないですって、これがバレたらどうするんですか?」
「大丈夫だって、ここ鍵閉まってるから」
大丈夫ではない、俺からしたら大事件なんだが。
「というか、自分家に帰らないといけないんですが」
早くここから出なければ、もし学校で話題になったら、一発で呼び出しを喰らうだろう。
「大丈夫あと少しで返すから」
少し笑った彼女は可愛かった。
「キミには今から、見てもらわないといけないものがある」
すると彼女は木製の椅子から立ち、かなり巨大な窓に近づく。
窓には、外界の光を完全に遮断したカーテンがあった。
そしてそのカーテンを、左右に勢いよく割く。
「うわっ、なんだこれ!?」
目に入り込んできたのは、今まで見たこともない巨大なビル群、空にはあまりにも美しすぎる銀青の月が浮いていた。
その月はかなり近い場所にあり、手を伸ばせば取れそうだった。
「見たことはないだろうね、七星クンの言っていることは正常だよ、ここはねこの国の全てを司る街……名をラディアンス・シティという」
彼女は空から降り注がれた、月の光が彼女の背中を明るく照らす。
それはまさに、天使そのものだった。
「……綺麗、すぎる…」
天使と大差ない彼女に魅了された、このままずっと見ていたいと思った。
見るだけでも美しさで、目が痛くなりそうだった。だけど、見ていたい。
矛盾が交差する状態だった。
だがそんな、願いは叶うはずがない。
彼女は後ろを向いて、巨大なコンクリートジャングルを見つめた。
それを見る背中に……俺は少し悲しみを感じた。
だから、彼女が少しでも悲しみや寂しさを覚えないように……。
ベッドから立ち上がり、彼女の方へと音を出さずに近寄った。
若干、さっきまで寝ていた為……頭がクラクラした。
その時の体制は、忍者そのものと言っても、違和感は全く無かった。
「ふぇっ!?」
彼女が声を上げる、その声は今まで聞いた美声よりも何百倍も自身に響いた。
後ろから抱きついた、あまり力は入れずに抱きしめた。
「ごめんカエデさん、俺だって離れたくない」
「私だって離れたくない…」
数秒が経過し彼女から離れる、そして二人でビル群を見つめる。
「ねぇ急だけど七星クンは、私の異界魔術について知りたい?」
唐突で返答に困ったが、すぐに答えを見つけることはできた。
「もちろんだ、知りたいに決まってる」
これから人生を共に歩む者については知っておきたい、いや知っておかなければならないと思った。
「私が使える異界魔術は、[全て可能になる]いう特性なんだよね」
異界魔術…どんなものなんだ、まず不可能を可能にするなんて理想の先の理想だろう。
「そして私の異界魔術には名前があるんだその名前は、[異界幻像]という」
すると彼女は、自身の手を俺に差し出す。
「召喚」
無機質な声が耳に響いた、明らかに今までの彼女からは聞こえない声であることは明らかだった。
その瞬間彼女の手に一冊の本が、何もない空間から落ちてきた。
「これは!?」
それには見覚えがあった。
その本は俺がいつも愛読している本だったのだ。
「これって、キミがいつも読んでいる本でしょ?」
彼女の言葉通りいつも持ち歩いている本だった。
本を開き、数ページだけ読んだ。
「これが能力だけど、今のは能力の一端にしかすぎないよ」
話を聞くが非日常なことが、起こっている俺からしたら声なんて、聞こえていないようなものだった。
「凄すぎないですか…」
「そんなに凄いことじゃないよ、他にもできるけど行使はあまりしたくないから」
すまないと言う単語が混じった言葉を発した、流石にこれ以上何かをしてもらおうとは思わなかった。
「でも、正直私はこの能力いらないんだよね」
俺はその言葉に疑問を覚えた、なぜ必要ないのかと思ってしまった。
「便利じゃないですか、なんで必要ないなんて言うんですか」
その言葉に、彼女はすぐ返答をしてくれた。
「私はさこれを使うこと自体嫌いなんだよね」
「え……」
俺は言葉に驚愕してしまった、こんな便利なものを嫌いだなんて正直意味がわからなかった。
「意味わかんないよね、便利なのに嫌いだなんて…」
彼女は少し何かを言いたそうな、声をしていた。
「すみませんカエデさんが言いたくないのに聞いてしまって」
自身の、幼稚さに気づいてしまい謝罪をする。
「大丈夫だよ」
「でもキミにはこれから、やってもらわないならないことがある」
許してもらうと同時に、彼女から要望を聞かされる。
「やってもらわないといけないことって?」
少しの間が空いた、その間要望について少しの好奇心と、それを塗り潰すぐらいの恐怖が脳内を渦巻いていた。
恐怖から吐き気が少し催した、何が起こるのかわからない。
「キミに……私の魔術の五割を受け取って欲しいんだ!」
俺が思ってもいなかった言葉を
「え、あの、それ……」
言葉にならなかった、いや正確には言葉にしようとしたら、強制的に片言になるように脳が処理したようだった。
「意味がわからないのはわかってる、だけど……!」
その言葉に突き動かされた、この返答はもう決まっている、いや最初から決まっていたのかもしれない。
「いいよ……いや、いいですよ……カエデさんの要望なら飲みますよ……」
彼女の瞼によって閉ざされた目が開く、あの赤い瞳がこちらを覗く。
その瞳からは、月の光すら反射する涙が溢れていた。
「ほんとにいい…の?」
少し涙を堪えながら話すところで、またまた理性がどっかに消えそうになった。
「当たり前だよ」
涙がポタっと一粒落ちて、すぐに止んだ。
「ありがとう……ございます」
彼女は敬語を使ってくる。
正直今までの雰囲気からは想像できないほど、弱々しくなっていた。
「じゃあ、やっていいですよ…」
「わかった」
すると彼女の手に半透明で水色の球体が浮かんだ。
その物体は、落ちることもなくただただ、空中を停滞しながら浮遊しているだけだった。
「これをキミの体に移植する、ほんとうにいいんだね?」
────ああもう迷いはない。
今は自身に突きつけられた現実を直視するだけだ。
「いくよ…」
その時、球体が俺の胸部に向かってくる、その球体は何も音を出さずに体に入り込んだ。
加えて、痛みなどというものも全く起きない。
「これで移植完了だよ、もう後戻りはできないけど」
移植完了か………
もうあの日常には……
干渉のようなものに浸る、今までの日常は戻ってないことを確信して、後悔が自身に這い寄ってくる。
這い寄ってくる後悔に抵抗するように、頭を左右に強く振った。
「あともう一つのお願い聞いてくれる…………?」
少し頭の中で考えていると、カエデの声が聞こえた。
その声はとても小さく、悲しみなどの感情が入り混じっているような気がした。
────すると、数秒を置いてゆっくりと口を開いた。
「私と魔術を使って………この世界に反逆してくれませんか?」
そう…疑問混じりに力強く言った………。
第二話 終
はい、作者の出雲・ツキです。
今回はアナザー・マジック・リベリオンを読んでいただきありがとうございます。
今回は裏話がありまして…実は二話の原稿の九割が消えてしまい書き直したのです、それから何とか書き直して現在に至ります………
あと、自分は夏休みが終わったので投稿がかなり遅くなります。
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