第14話 壊れた日常
彼女は苦しみながら…倒れた。
静かに…倒れ込んでいた。
その光景は……不自然なのに……自然的なものであると錯覚させるものであった。
「…嘘、だろ?なんでだ?なんで…倒れたりしているんだ?」
その光景を見るのに。俺は耐えることができなかった。
すり減る精神をどうにか立て直すように、脳から身体全身へと、一斉に指令を下した。
だが……それに身体が、呼応することはなかった…ましてや、今目の前で起きている非現実と変えようもない現実…を直視すると、足がすくんだ。
動けない、身体が動かない…鎖で縛られたように動かない。
彼女が苦しそうに、地面にうずくまっている…助けたい…それでも、身体が動くような予兆は感じられない。
その理由と、今起きている現状すら……石のように不動と化している、身体を動くことはない…。
「カエデ…さん………今、行きますから…耐え…て……く…ださ…い」
口も動きも遅い、カタコトになり…自身が喋っているのかすら…わからなくなるほど遅い。
その声の速度は……まるで、機械がゆっくりと話しているような速度……でしか説明がつかなかった。
すると…その、容量限界の脳で1つだけ……うずくまっている、彼女のへといけそうな手段を手段を見つけた。
記憶の引き出しに……1つだけ……。
———それは…異界幻像で”この状況でも足を動かせる“という、一筋の可能性であった。
コレしか…いや、コレ以外……今の自分にはできなかった。
自分が、彼女のために……彼女のために…今できることを。
────コレをできることが…今の自分の使命だと確信した。
足に…異界幻像によってる作られる、何かを込める。
すると…縛られたような感覚が消失する、消失すると共に……身体が動くようになった。
「はぁはぁ……カエデさん…今、助けますから」
足を少し引き摺りながら、部屋という箱の中を歩く。
声の遅さも解消され…自身の言いたいことはっきり言えるようになった。
彼女の元へと、残り数センチとなる…その数センチは…。
俺にとって……数メートルにすら、感じさせるほどの長さである。
もうすぐ着きそうなのに、辿り着けない、この感覚が今の俺を支配していた。
「……本当に、大丈夫だから…七星クンは……」
明らかに大丈夫ではない、確実に彼女は苦しいという感情を表に出している。
彼女は痩せ我慢をしているつもりなのだろうが…。
俺にとっては苦痛に耐えるだけの、少女が地面にうずくまっているようにしか見えない。
「ダメですって…とりあえず、救急車を───」
俺が話しながら、ポケットに手を入れ…スマートフォンを取り出そうとした時。
「いい…から……本当に、心配しなくていいから…!!」
俺に手を伸ばしながら彼女は口を開き、苦痛に耐える。
そして…彼女の手が、スマホを持とうとしている…右手に到達すると。
なんと、俺の手をスマホから強制的に…叩き落としたのだった。
しかも…それは、目に止まることなく…本当に一瞬の出来事だったのだ。
「………ッ!?」
その行動に…俺は全く理解できなかった。
自身を助けようとしているのに、それを無しにするような行動を。
…なぜ、なぜ…なんで…。
確かに都合が悪いことがあるかもしれない…それでも、彼女を助けたいという思い。
「なんでですか…なんで…?」
「私は大丈夫だから……こんなの、すぐ治療できるから…だから、七星クンは何もしないでよ」
それでも、彼女は我慢を突き通すらしい…その意志には、揺るぎないものが見えた。
それでも、彼女の下唇のふちには…淡い色へと変化した…血液が付着していた。
それは…どう変えても、隠しきれないものであること………。
「……じゃあ、七星クン……キミの手を借りてもいいかい?」
「はい…?」
「だから…キミの手を貸してくれないかって……聞いてるの!!」
その言葉を強く言い放った、その小さな口で。
そして、、悶え苦しみ…今にでも散りそうな意識の全力を彼女は出す。
俺は何かに突き動かされるように。俺は彼女に対して…自身の手を差し出した。
すると、風のような速さで…俺の手を力強く掴んでくる。
「いっ………!!」
つい、口から声を漏らしてしまう。
だが…彼女がソレを気にすることは全くなかった。
手を掴まれえた時、なんとも言えない痛みが手の全体に走った。
いや…“なんとも言えない”というのは、解釈違いが起きる…。
実際は、先日彼女から手を繋がれた時の痛みだろうか。
ソレと…ほぼ変わらない。
すると、彼女が自身の心臓部を抑え始める。
その掴む強さは、Tシャツに大きなシワができるほどであった。
そして、シワの大きさが服全体にまで到達した時……彼女が口を開いた。
「………修復式……」
そう唱えると同時に、彼女から出ていた苦痛満ちた表情が、少しずつ消失していった。
とは言っても…残っているのには、変わりはない。
「はぁはぁはぁ…………痛かった……」
だが、彼女は普通だと思わせるように…すぐにいつもの口調へと変化する。
「はぁ、迷惑かけて……本当にごめん………なさい」
「……………………はい」
彼女が言葉を言った後に、数十秒の静寂を作った。
その間、俺の頭は混乱していた。
彼女から手を握られたのもそうだが、なんといっても…彼女の身体の状況が、心配でたまらなかった。
「カエデさん……何か隠していますよね?というか……”隠していない時点で“おかしいですよね?」
「…………………何?」
今更聞くのは遅いのはわかっている、だって…。
だって……家に来た時から、彼女の異変には気づいていた。
最初はただ単に…体調が悪いだけかと思っていた。
実際は見て見ない、フリをしていただけだった。
万人はこう言うだろう「なんで、わかっていたのに助けなかったんだ!」と…。
だが、彼女を……彼女を傷つけたくなくて…わざと言わなかった。
「どう言うこと?」
「血を吐くなんて…明らかに何か隠していますよね?」
こう淡々とでしか、彼女と会話ができなかった。
彼女と話すには…こうとでしか離話せない。
すると、彼女が唇についた、淡い色合いに変化した血液を拭って言った。
「まぁ、隠すことはできないだろうね…だってさ、もう気がつかれているんだから」
彼女が口を開き、空へと言葉を放つ。
その声は…人間のものとは思えないほどの…。
───まるで、悪魔が声を出しているよう。
そうとしか思えないほど……彼女は…。
「はぁ…ああ、これは……私の落ち度かなぁ…せっかく気づかれないようにしていたけど………まさか、ここで来ちゃうとは……」
そう言うと彼はゆっくりと顔を上げ、俺のことを見ようとしてきた。
その刹那、一瞬だけ彼女の表情を見ることができた…その顔は怒りに満ちていると言うよりも…信頼していたものに裏切られたような…。
そんな表情にしか、全く見えなかったのである……。
「…どういうことですか?カエデさん」
「……それは…話せないかなぁ………まだまだ、君に教えれるまで…。
“ちょっとの時間が必要だからね”」
すると彼女は片腕を宙に上げた、すると中指と親指の先をつける。
その…シルエットには見覚えがあった。
間違いなく、彼女は俺に何かをしようとしてきている。
それは…確実に…口止めに近いもの……いや、これは完全に口止めにしか見えない。
その光景を目の当たりにしていると、彼女が一言…俺に投げかけたきた。
「じゃあ、ちょっとの間…眠っててもらおうかな…?」
「…………ッ!!」
そん言葉は全くの注意の台詞ではなく、完全に”相手を仕留める時の声“であった。
すかさず、こちらも構える…構えたとは言っても…彼女が間も無く発動する初手の攻撃を避けれるという保証は全く無い。
寧ろ、避けれるということすら…一生の運を使い果たすのと同じくらいの等しさだろう。
つまり彼女に挑むには、死んでもいいという覚悟がないと……いけない。
「さて、じゃあ…倒れて……」
途端、彼女の指がパチッという音を響かせる…その響く音と同時に俺は体を空中に捻らせる。
捻らせると同時に、今この瞬間まで……自身が立っていた場所が一瞬だけ見えた。
その空間は…空間自体が歪に歪んでいた。
その歪な空間が…最高潮まで歪んだ瞬間。
……普通の日常を過ごしていれば、聞けるとは思えないほどの…爆発音のような轟音が、狭い空間に満遍なく響いた。
その轟音に釣られたかのように、木製の床が巨大な音を響かせて…部屋の中心に大穴を開けた。
その大穴は人が1人、すっぽり入るくらいの大きさであった。
「………おい、なんだよ……おかしいくらい、強すぎるだろ……!!」
そのようなことを口にすると、その言葉に対して彼女が息を吸ったように、返しの言葉を述べた。
「そりゃそうだよ、だって……いくら5割といえど……やろうと思えば…世界の40%は、文明の痕すら残さず破壊できるからね……」
その言葉に背筋が、一瞬にして凍結する。
つまり、心の中に存在していた”得体の知れない“恐怖が身体に影響を与えてきたという事だ。
「さーて次行くよ、本当に避けないと…直撃さえしたら、本当に死んじゃうかもしれないからね…じゃあ、行くよー!」
「……クソッ!」
第二波を起こすという予告を涼しげな表情で語る。
その表情を見て、より一層深い狂気を自身の眼球で直視して悟った。
「それっ!!!」
その時、彼女が手を横に全力で振り切った。
振り切る時の力は、無邪気な子供のようにも見えた。
「……………………!!」
風のように早く、自身の体を床へと落とした。
途端に自身の頭上に風が走った、その風は直撃した場合…首が上空へ飛んでいると確信した。
そんなこと、彼女は全く気にしていないように見受けられた。
「キミ……さっきの戦いで少し成長していないかい?」」
「……さぁ、どうですかね!」
俺が言葉を言い終わると同時に、彼女が腕を振り下ろした。
その攻撃の範囲内に、俺は完全に入っていた。
───すぐに避けようと体を動かす。
足を動かし、手も全力で動かした。
それに応えるかのように、足と手は動いてくれた。
だが、俺が全力で四肢を動かしたところで…。
彼女が巻き起こそうとしている攻撃に、俺が巻き起こす“全力”は、全く及ばなかったのである…それも———足元にすら。
「があっ!?」
足に痛覚が走る…痛覚は一生で数えるほどしか、経験しないであろうと思わせる。
表すのならこの一言に限る…雷が起こす雷撃のように…と。
「…もう、キミは限界のようだね」
彼女が口から言葉をこぼした。
残酷に……それも、心によく刺さるように…その言葉は暗殺者が振るう、白刃のナイフのように鋭かった。
「…あっ…あが……かああ……が……ああああ」
まるで人間には出せないような言葉を、口から放出させる。
猛獣が断末魔を喉底から上げる前の、小さな呻きのようである。
「さぁて・・じゃあ、ちょっとだけ…キミには静かに待ってもらおうかな…」
意識が痛みで完全に支配され、もう抵抗よりも痛みから解放されたいと思った瞬間。
彼女が俺の顔に、白色の手を差し出してきた。
氷のように…ひどいくらいの冷たさ。
その手は止まる事なく俺に接近して…。
遂には…俺の顔に触れる。
——————そうして、意識は閉じられた。
はい、どうも出雲・ツキです。
今回は………結構、ギリギリで作りました。
最近、ある本を読んで、表現を工夫しました。
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