転生ですか?
クロエ視点です
私、クロエ・オブライエンは子爵家次女で、前世の記憶がある。
前世の記憶が蘇ったのは3才くらいの頃で、最初はすごく戸惑った。
自分のいるところがどんな世界なのか全くわからなかったから。
でも、成長するにつれ、これは前世の親友みゆちゃんの言っていた、乙女ゲー「セブプリ」第3部の世界なんだとわかった。
ちなみに、私はみゆちゃんから話を聞いていただけで、自分ではゲームをしていない。
ただ、みゆちゃんの話だとこれまでの「セブプリ」には悪役令嬢がいなかったのに、今回からは悪役令嬢がいて、しかもその令嬢は王女様だから怖いものなしで、ハッピーエンドルートの邪魔を凄くしてくるらしい。
「くそっ、コイツマジで性格悪いな」
とか、よくみゆちゃんがぼやいてたのを覚えてる。
ちなみに、ヒロインの名前は公式設定されていて、「クロエ・オブライエン」。
つまり………私です。
みゆちゃんの話だと、「セブプリ」は選択肢を間違えてバッドエンドルートに行くとヒロインなのに死ぬこともあるらしい。
そんな世界、嫌です。
私は、普通にモブでよかったのに!
神様を詰りたい。
まだ前世の記憶と現世の記憶が混濁していた幼い頃から、何故か私は王女様のお茶会に頻繁にお呼ばれするようになった。
え?なにこれ。
さっそく悪役令嬢の邪魔が始まってるの?
最初はそう思ったけど、王女のノエル様は天使のようにお可愛らしくて、しかもとてもお優しい。
お茶会でご一緒しているティア様もルディア様も、私一人子爵家という身分差があるにもかかわらず、やっぱりとても優しい。
家は比較的財力の乏しい子爵家なので、お茶会に何度か同じワンピースで行ったり、同じ服を少しアレンジしただけの格好で行ったりしていたけど、バカにすることもなく、普通に友達として接してくださる。
13歳から入学しなければならない王立学園に行ったらきっとバカにされるんだろうと幼い頃から憂鬱だったから、涙が出そうなくらい嬉しかった。
ノエル様は華奢で、あまり人を疑うことを知らない方。でもラブラブな婚約者がいるから変な男には騙されないだろうけど、王立学園に入学して、王族に取り入るのが目当てのような子息や令嬢から、絶対に守ってあげようと思っている。
何度でも言うよ。
ノエル様は天使。マジ天使。
ノエル様のお母様である王妃様は、なんか神々しい。
お顔立ち自体は可愛らしい感じなのだけど、オーラが!
数々の伝説をもつ王妃様。
最初の頃は品定めされているような気がしたけど、すぐにそれもなくなった。
王妃様のお名前はジュリア様。
みゆちゃんに聞いた情報だと、第1部のヒロインの名前はリリアン。第2部のヒロインの名前はイザベル。
ヒロインの方は、ノア国王を選ばなかったのね。
他の王子様を選んだのかしら。
そう思っていたら、ある日のお茶会でとんでもない話を聞いた。
第1部のヒロインのリリアンは、一度は狂いながらジュリア王妃の命を狙って、タッグを組んでいた、同じく狂った騎士に斬られて死亡。
のはずが、聖女の奇跡で蘇って、今度は他の国の令嬢とタッグを組んでまた王妃様のお命を狙った為、罰として今は隣国のカルーアで永遠石化の魔法にかけられ、人々のさらし者になっているらしい。
これじゃまるで、ヒロインが悪役令嬢じゃないか。
私も気をつけないと、万が一にでもノエル様の敵に回ったら、酷い罰が待っているに違いない。
まぁ、ノエル様の婚約者のバトン様は一度お会いしたけど好みのタイプじゃなかったし。ノエル様はバトン様一筋なので、私の恋路をわざわざ邪魔するような暇人でも悪人でもない。
バトン様もノエル様を溺愛してらっしゃるし。
だから、敵対することは絶対にないのでそこは安心。
そして。
今日は王立学園の入学式。
今ではもうクロエとしての人生に馴染んでいて、前世の言葉遣いや習慣はほとんど抜けています。
我が家は貧しいけれど、せめてノエル様たちのそばにいても恥ずかしくないように、必死にマナーや勉強など、淑女教育は頑張りました。
入学式が終わって、ノエル様はバトン様のエスコートで教室へ。
私はルディちゃんとティアちゃんと手を繋いで逸れないように歩いていたはずなのですが……
人混みに揉まれて見事に逸れました。
場所は分かっていますし問題ないか、と教室に向かって歩いていく途中、人混みで少し汗をかいてしまった私は、ノエル様に失礼にならないよう、ハンカチで汗を拭うことにしました。
その時、強風で私のハンカチが飛ばされ、木の枝に引っかかってしまいました。
乙女ゲーをやったことがない私でもわかります。
何このヒロインテンプレ。わざとらしすぎませんか?
ゲームの攻略対象との出会いイベントでしょうか。
それはともかく、なんとか取ろうとピョンピョン跳んでいたら、後ろから手が伸びてきて、私のハンカチを取ってくださいました。
金髪に青い瞳。
恐ろしく整っていながらもどこか愛嬌のあるお顔。
まるで、絵本の王子様です。
………はい。
ひと目で恋に落ちました。
ゲームのシナリオ通りと言われても構いません。
だって、本当に素敵なんですもの。
「大丈夫?新入生だよね。はやく、教室に行ったほうがいいよ」
軽く私の頭を撫でて、その方は行ってしまいました。
私のバカ!
お名前も聞けなかったどころか、お礼すら言えていないなんて!
制服から、この学園の生徒だということだけはわかりました。
それと、おそらく先輩だということも。
放課後、バトン様がノエル様をお迎えに来られるまでそんな話をしてきゃーきゃー言っていたら、いかにも貴族のご令嬢といった高飛車な感じの令嬢が3人程やってきました。
「クロエ様。あなた、子爵家の令嬢でしょう?
そんな身分の低い方がノエル様と親しくなさるなんて、不敬に当たりますまわ。
少しは鏡でもご覧になって、ご自分の立場をご理解なさるべきじゃなくて?」
まさに悪役令嬢みたいです。
悔しくて少し涙がにじみましたが、言い返そうとした時、私の天使が言いました。
「私、人を貶めるような発言をする方とはあまりお友達になりたくありませんわ」
あまりにもきっぱりと堂々と仰ったので、言いがかりをつけてきた令嬢達は青くなって逃げ出しました。
ノエル様。
やっぱり天使です!
「ノエル様、ありがとうございます」
「私のた、大切な友人を傷つける方には容赦いたしませんわ」
少し頬が赤らんでいるのは、「大切な友人」という言葉に照れたからでしょうか。
本当にお可愛らしい。
ノエル様のお兄様のエドワード王子と、婚約者のバトン様がメロメロになるのもわかります。
一生付いていきます!ノエル様。
それにしても、ハンカチを取ってくれたあの方は、本当にどなただったのでしょう。
せめてもう一度、お会いしたいですわ。




