ノエルのお見合い
「セブプリ」続編の夢を見てから二年が経ちました。
ノエルは相変わらずエドワードにベタベタに甘やかされていますが、エドワードがアルのことも甘やかすようになって分散したことと、ノエルの元々おとなしい性格もあり、今のところワガママには育っていません。
むしろ、我が娘ながらとても優しいいい子に育っています。
馬車で移動中に怪我をしてる猫を見つけて、王城に連れ帰って看病したり、顔色の悪い侍女を心配して休ませたり。
王城ではとても人気者です。
ちなみに、お義母様はあの相談した日から、ノエルのお見合い相手に相応しい男の子がいないか徹底的に探して、今現在候補者が3人ほどいます。
性格や普段の生活態度については、お義母様の「影」が調べて、マリアンヌ様がさり気なく候補者のお母様方を子供同伴でお茶会に誘って、しっかり性格を見極めてくれました。
その上で残ったのが、候補者の三人です。
ベアルーチェ伯爵家の長男、ファリスくん。
アーノルド侯爵家の長男、バトンくん。
カーディアナ侯爵家の長男、ジェイソンくん。
この三人です。
三人とも、ノエルより2、3才年上です。
四人でお茶会をした時は、人見知り気味のノエルも三人によく懐いて、楽しそうにしていました。
この三人の内からうまく婚約者を作ってしまえば、ノエルが悪役令嬢として邪魔することもないでしょう。
もっとも、ノエルが攻略対象に一目惚れでもしたら、私達の作戦も意味をなさないのですけれど。
そこは、お義父様とお義母様、ノア様と私という2組の夫婦の姿を見せて、婚約者以外には興味を示さないもの、と刷り込みました。
それでも、恋に落ちるのは止められないので、もしかするとノエルに我慢させてしまうかもしれませんが。
ノエルが5歳になった時、正式に三人とお見合いをさせました。
「ノエル。あの三人の中では誰が一番好き?」
「あの……バトン様が、いいな」
あらあら。
頬をピンクに染めています。
ノエルの初恋でしょうか。
「じゃあ、ノエルの婚約者はバトンくんにしましょうか」
もちろん、先方の気持ちも確認済です。
バトンくんもノエルのことが可愛くて仕方ないようで、3日とあけずに花束を送ってきてくれています。
王城に来たときも、ノエルをとても大切に扱ってくれます。
まぁ、王女だから余計かもしれませんが。
早速、アーノルド侯爵家に連絡を取って、ノエルとの婚約を打診しました。
王家からの打診なので断りたくても断れないといけないと思い、あくまでも本人たちの気持ちを優先して無理はしなくていいから、と手紙には書き添えましたが、アーノルド侯爵家からは大喜びの返事が届きました。
「ノエル。バトンくんもノエルが好きだから結婚したいって。良かったわね。
バトンくんにもっと好きになってもらえるように、王女教育も頑張って、今まで通り優しいノエルでいましょうね」
「はい。お母様」
ちなみに、ノア様には事後報告です。
涙目になっていましたが、ノエルを行き遅れにするつもりですか?と詰め寄ったら、まだ嫁に行くのは何年も先だからな、と諦めてくださいました。
1番反対するかも、と思っていたエドワードですが、シスコンは相変わらずですが、ノエルの可愛さについてバトンくんと話し込むうちにすっかり仲良くなって、全然反対しませんでした。
トリス国では学園の入学は13歳から。
あと8年あります。
その間に開かれる王族主催のパーティーでは、ノエルのエスコートは必ずバトンくんに任せて、二人の婚約も発表しました。
ノエルを狙っていた貴族は結構いたようで、婚約を発表した時は、あちらこちらから残念そうなため息が聞こえました。
駄目ですよ。
ノエルは攻略対象にはできるだけ接触させず、好きな人と幸せな結婚をしてもらうのですから。
そんじょそこらの貴族のご子息には渡せませんわ。
ロングアイランド王子のマイク様と、ミモザから留学に来るミモザ王子のツェペリ様にもパーティーで顔を合わせましたが、ノエルはまったく無関心だったので安心です。
むしろ王子たちの方がノエルを熱い視線で見つめていて、ちょっと心配になりました。
もしかして、ノエルがヒロインに嫌がらせをして悪役令嬢になるというより、攻略対象たちがノエルに夢中になって、ヒロイン目線からはノエルのちょっとした行動を悪意としてとられるとか、そんな感じなのでしょうか。
ノエルはちょっとおっちょこちょいさんなので、パーティーでうっかり転びそうになってヒロインのドレスに飲み物をかけてしまったりとかありそうです。
私とお義母様とマリアンヌ様はまた相談して、あえてヒロインと仲良くさせることにしました。
根っから優しいノエルなので、おそらくいい子キャラのヒロインともすぐに仲良くなれるでしょう。
話の中で、ノエルがバトンくんを大好きという話題も出れば言うことなしです。
とはいえ、いきなりヒロインのクロエちゃんと二人きりでのお茶会も不自然なので、学園に通い始めてからも仲良くしてくれそうな令嬢二人と、クロエちゃんを呼んで、何度かお茶会を開くことにしました。
問題は、クロエちゃんが、リリアンと同じような性格だった場合どうするかという事でしたが、今のところ、大丈夫そうです。
初めてのお茶会では四人とも緊張していましたが、ちょうどバトンくんからの花束が届いたことで、ノエルの婚約者の話になり、そこから惚気話になり、クロエちゃんを始めとしたほかの令嬢たちも、羨ましがって早く婚約したいとキャッキャウフフと盛り上がっていました。
ひとまず、ノエルの悪役令嬢ルートは阻止できたでしょうか。
あとは、学園に入ってからでないとどうしようもできませんね。
ですが、できる限りのことはしました!
ノエルには、学園に入学して何か変わったことがあったらすぐに言うように、一人にならないように、悪口は絶対言わないように、今のうちからしっかり言い聞かせることにしました。
ノエルが悪役令嬢にならないように。
願いはそれだけです。
どうか、ノエルが無事に結婚できますように。
私は祈るような気持ちで、ノエルが学園に入学するまでの年月を過ごしました。




