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ロングアイランド祝賀パーティー

ノア様目線です。

ロングアイランドのヘンリー国王から結婚祝賀パーティーの招待状が届いたのは、新法が国民に浸透しだした頃。


以前に素敵な方と巡り会えた、と言っていたが、その令嬢と結婚するようだ。


本当にジュリアが絡むと婚期が訪れるんじゃないかと、最近では信じ始めている。


もしかして、ジュリアは天使なのかな。

あんなに愛らしいし、優しいし、縁結びの力もあるし。


ジュリアにそう言ったら、頬を染めながらもちょっと呆れた目で見られてしまった。


それはともかく、祝賀パーティーは1ヶ月後なので、早速公務を調整して、出発に向けて準備をする。


ティレーズは産み月に入るので、今回も城で留守番をしていてもらう。

今は仕事も休んでいるが、元々マルコと同じ仕事人間のティレーズだ。

仕事をせずにのんびり過ごすのが苦痛らしい。

ジュリアが、あまりストレスを与えるのも良くないから、とたまに庭園の散歩に付き合わせているみたいだ。

お茶の用意ならさして負担にはならないようで、ティレーズもいい気分転換になっているらしいとマルコから聞いた。


ロングアイランドへの出発日が決まり、ジュリアはティレーズに、自分が帰ってくるまでは出産しないで、とお願いしていたが、それは無理な相談だろう。

産み月に入ったら、いつ産まれてもおかしくないのだから。

結婚して数年たつが、ジュリアのこういうところは、本当に可愛いと思う。


それはともかく、今回のロングアイランド行きは、退廃の国だったロングアイランドが生まれ変わった姿を見られるはずなので、割と楽しみにしている。

あれ以来、ジュリアに精霊の祝福や天使アリエルの加護の力で協力してほしいと言ってこないので、おそらくは作物の栽培もうまくいっているのだろう。

或いは、自分たちの力で色々と研究し、田畑の手入れに力を入れることを覚えたか。

あまり、他国に頼ってばかりでもだめなのだ。


いよいよ祝賀パーティーへ出発する日、私達はまたノエルを母上に任せて、エドワードを連れて出発した。

エドワードは将来の国王だ。

こういった場にはどんどん連れて行って、今のうちから色々なことを経験させたい。

ノエルも、もう少し大きくなったら王女として連れていくつもりだ。

社交の場での経験は、王族として必須事項。

特に王女であるノエルは将来、降嫁することになるので、きちんと男を見る目を養ってもらわないと困る。

いや、本音を言えば嫁になんて出したくないのだが。


エドワードは長旅にも慣れたようで、エリクお手製のお弁当をジュリアと美味しそうに食べながら、たまに国民に手を振っている。

またパーティーで食べ物にばかり夢中にならないといいんだが……


ロングアイランドに入ると、私とジュリアは外の光景に目を瞠った。

作物がたわわに実っている田畑。

黒い布で覆って中を温めつつ、外の寒風を防ぐ対策をしているところもある。


何より、派手な街並みは前と変わらないが、以前のようにあちこちで男女がイチャついていることが無い。


もちろん、デートしているカップルは見かけるが、人目も憚らず悦楽に耽る姿は見受けられない。


よほど、神の怒りが恐ろしかったのだろう。

国が滅びるかどうかの瀬戸際だったのだ。

二度と同じ目には遭いたくないだろう。


トリス王国の紋章が入った、私達の馬車を見かけると、ロングアイランドの国民たちが頭を下げる。

もちろん、他国とはいえ王族の馬車に頭を下げるのは当たり前のことなのだが、時折、ありがとうございました、と声が聞こえるから、どうやら感謝の念も含まれているようだ。


王城に入って割り振られた部屋で寛いでいると、ヘンリー国王が挨拶に来たがっていると先触れが来た。

断る理由もないので、お茶の準備だけしてもらい、部屋で待っていると、可愛らしい令嬢を伴ったヘンリー国王がやってきた。


どことなく、ジュリアに似ている気がする……



「遠いところ、はるばるおいでくださりありがとうございます」


「いや。この度は誠におめでとうございます」


「ありがとうございます。こちらが、妻になるアナン公爵家令嬢のナンシーです」


「アナン公爵家が長女、ナンシー・アナンと申します。以後、よろしくお願いします」



洗練された身振りで、よく教育をされていることがわかる。



「トリス国王のノア・トリスと、妻のジュリア。それに王太子のエドワードだ」


「ジュリアと申します。よろしくお願い致しますわ。

ナンシー様は、お見合いパーティーでヘンリー陛下と?」


「はい。私はあまり目立つことが好きではないので、できるだけ目立たぬよう、壁際にいたのですが、それがかえって目立ってしまったようで…」

 


ナンシー嬢が苦笑する。


確かに、国王の妻を決めるお見合いパーティーとなれば、ほとんどの令嬢が我先にとヘンリー国王に近付こうとするだろう。

そんな中、近寄って来ない令嬢のほうが目立つのは仕方ない。



「最初は、プロポーズを断られたんですよ」



ヘンリー国王が笑いながら言う。

国王のプロポーズを断るとは、なかなか勇気がある。



「私では王妃など務まらないと思いましたし、こんなことを言ってはいけないのかもしれませんが、何かと面倒そうだと思ってしまって」


「でも、ヘンリー陛下が諦めずにアプローチされて、絆されましたの?」



ジュリア、そんなに目をキラキラさせて……



「ええ。あまり断るのも外聞が良くないですし、とてもマメにお誘い下さったので、つい絆されて」


「つい、なのか?」



ヘンリー国王が苦笑する。

過去はともかく、今は二人とも幸せそうだから問題ない。



「また祝賀パーティーでもご挨拶いたしますけれど、お幸せにね」


「トリス王国の国王夫妻の仲の良さは有名ですからね。私たちも貴方方のような夫婦を目指しますよ」



ヘンリー国王はナンシー嬢のつむじにチュッと口づけを落とすと言った。



「他の方が見ている前では、やめてくださいと申したではありませんか」


「いいじゃないか、少しくらい」



うん。幸せそうだ。

うちもそろそろ3人目の子が欲しくなってきたな。



「ではまた、祝賀パーティーで」



早く二人きりになりたいんだろう。

ヘンリー国王はナンシー嬢の腰に手を回して、部屋から出ていった。



「お幸せそうで何よりですわね」


「そうだな」



その晩の祝賀パーティーは、予想通りジュリアとエドワードが料理の置かれたテーブルに吸い寄せられ、私とマルコでそれを止めることになった。





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