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新しい防御結界と新たな難題

本編に戻ります。

甘い物を食べて脳に糖分を送りつつ、何度も何度も魔法陣を書き直した結果、ようやく、目的の国土防御結界が完成しました。

ただ、他国で罪を犯そうとした場合にその場で石化するようには出来ませんでしたけれど。


早速魔法陣を広げて詠唱をします。


とは言っても、こればかりは実験できませんので、どなたか罪を犯そうとしている方が入国しようとしてくれないと、成功したかがわかりません。


そしてこの結界、これまでのようにイメージだけでは発動しないので、術者の血で描かれた魔法陣が必要なのです。

仕方ないこととはいえ、少し切った手が痛いです。

魔法陣は警備が一番厳重な、ノア様の自室の中にある隠し戸棚の奥に仕舞い込みました。

私からのラブレターと混ぜておいたので、そうそう見つかることはないでしょう。


これまで、トリス王国は犯罪を決心しただけで、或いは犯罪をするつもりで入国しようとしただけで国外に弾き飛ばされる、と有名だったので、なかなかそういう方は来てくださらないかもしれません。

いえ、来ないなら来ないでいいのですが。


気になった私とお義母様は、手の空いている騎士に、中央広場をしばらく見ていてもらうことにしました。

ちなみに、騎士の主はノア様なので、ちゃんとノア様を通しての依頼です。

たとえ王族と言えども、好き勝手に騎士を扱っていいわけではないのです。

騎士団にも指揮系統がありますし、そこをすっ飛ばすわけにもいきません。



「成功しているといいね、ジュリア」



ノア様は優しく微笑んで言いました。

本当に、ノア様はいつでもお優しいです。

軽く細められた瞳から、大人の色気が立ち上って、鼻血が出そうです。


騎士を配置して1日目は何もありませんでした。

そして2日目。

見張りに立ってくれている騎士の方に差し入れを持っていったちょうどその時、広場の中央にある噴水の近くがパアッと光りました。


護衛騎士の方々が慌てて私を取り囲みます。


でも。

その場所に現れたのは台座に乗った石像。

ワクワクしながら、騎士の皆さんと様子を見に行くと、台座には石像になった人の名前、そして罪状として強盗を目論んでいたことが記されていました。


つまり!

成功です!


あ、でもちゃんと定めた期間で石化が解けるかどうかも確認しなければなりませんね。


強盗を目論んでいた場合は半年の石化です。

私は、騎士の方に毎日警備のついででいいので中央広場を見ていただけるようにお願いしました。


それから半年後、石像もいくつか増えた頃に、やっと初めに石化した人が普通の肉体に戻りました。


その方は、自分の身体にされた落書きや犬猫の糞尿で汚れた自分の姿を見て舌打ちしました。

そして、腹を立てて何か悪いことを考えたらしく、またすぐに石化してしまいました。

これ、もしかするとエンドレスじゃないでしょうか。

改心するまでずっと石像のまま。


うん。

いい結界ですね。


そうは言いつつも気になったのが……意外に子供の石像がいくつかあること。

罪状を見ると、彼らのほとんどはスリや置き引き、万引きなどと言った窃盗です。


こんなに小さな子たちが、そんな事をするということは、おそらく、衣食住に不自由しているからではないでしょうか。

石像の服を見ても、サイズの合ったきちんとした服装の子は一人もいません。


この国は比較的格差が無い方ではありますし、貧しい子供達には領主がきちんと保護をするように法で定めています。

それなのに、こんなことが起きるなんて。


私の予想でしかありませんが、子供たちは保護を受けられることを知らない、または領主自体があまり裕福ではなく与えられる保護が少ないなどの理由で、犯罪に手を染めたのではないでしょうか。

領主がガメつくて、決められた保護をきちんと与えていないなら、領主も石像になっているはずですから。


これは、一度ノア様と相談して、何か画期的な施策を打ち出さないといけないかもしれません。

母子家庭や父子家庭、孤児の保護を。


とはいえ、お金をばら撒けば良いという簡単な話ではありません。

私達王族の生活もそうですが、国民の方から集まった税金で成り立っていることは多く、国民の方の負担を減らすために極力税金を下げているこの国では、あまり使えるお金は多くないのです。

それに、保護金がもらえるから、と言う理由で簡単に子供を捨てられたりするようになっても困ります。

もちろん、やむを得ない事情がない限り、子供を捨てることは罪に当たるのですけれど。


やはり、教会で孤児院を運営してもらう、などの方法しかないでしょうか。

教会なら、勉強も教えてもらえますし、教会への寄附金があるので、修道士や修道女の方の生活、建物の維持などに必要なお金を除いた金額で、なんとかやり繰りしてもらえるかもしれません。


ですが、教会への寄付金も決して多いわけではないですし……


その時、王城の鐘が3時の時を告げ、私はお義母様とお約束していたお茶会に参加することにしました。



お義母様とマリアンヌ様に先に相談してみます。

おふたりも転生者ですから、なにか前世の記憶の中にいい解決策があるかもしれません。



「そうね……少なからずいる貧困層をどうするかは、マークの時代から問題視していたのよ」


「それなら、古代ローマ帝国の方式を取るのはいかがかしら。

富裕層が、毎朝貧困層に食事やお金を提供するのです。

富裕層、つまり貴族ですけれど、彼らはお金が余っている方が多いですから、少しは貧困層に分けてもいいと思うのです。

貴族にはその責任がありますから」


「ですが、そうすると働かないでも食べられる、と怠ける人たちが出てくるのでは?」


「それは確かに、そうですわね」


「では、貧困層の人間に限り、街の清掃やそう言った仕事を終えた者だけが寄付を受けられるようにする、とか」


「それもいい案だけど、中には働きたくても病気で働けないという人もいるでしょう?そういった方々のフォローが出来ないのよ」



ううん。

本当に難しい問題です。


結局あれこれ案を出しましたが、どれもどこかに難点があって、いい案が見つからないままお茶会は終了いたしました。


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