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メリッサの作戦

それから数日は、何事もなく過ぎていきました。

『拘束の指輪』に反応があったのは、リリアナ様がカルーアに戻られて、数日経ったかという頃。


『拘束の指輪』は、反乱の意思、今回は私とノア様への悪意に絞っていますが、それを感知すると、どんな内容なのかもこちらに流れてくる優れ物。


おそらく、リリアナ様とメリッサ様がお会いになっているのでしょう。


指輪から流れてくるのは、私を嘲る気持ちと、明らかな殺意。

どうやら、ヨハン王子との結婚後、トリス国をハネムーンで訪れ、こっそりイザークを開放し、私を殺す作戦のようです。

殺すのはイザーク。

イザークを開放したのがメリッサ様だということさえ知られなければ、メリッサ様はなんの罪にも問われることなく、私を殺害することが出来るのです。

結婚記念パーティーで事件を起こせば大がかりなことになるので、パーティーでは何も仕掛けて来ないようです。


ただ、この作戦には穴があります。

メリッサ様は知らないのです。

イザークは、『永遠の牢獄』に囚われているだけでなく、魔力と血を吸い取られる『永遠の縛め』にも捕らわれていることを。


仮に、ゲーム補正で『永遠の牢獄』を破ったとしても、イザークは既に生きてはいないでしょう。


もちろんメリッサ様、この作戦が失敗したときの為に他の作戦も立てているようです。


トリス王城に滞在している時に、メリッサ様が私を捕縛魔法で捉えている間に、リリアナ様に私を殺させるという作戦。

この作戦、リリアナ様にはまるでその後ノア様の正妻になれるとでもいうようなことを言っているようですが、殺害の実行犯であるリリアナ様が許されるわけもなく、おそらくメリッサ様が何らかの理由をつけてヨハン王子と別れ、ノア様ルートをやり直すつもりなのではないでしょうか。

メリッサ様なら充分にありえます。

それほど、メリッサ様のノア様への執着は激しいものなのです。

そして、モブの私がノア様の正妻の座についているのが、どうしても許せないのです。

この作戦も失敗したら、どうやらカルーア対トリスとの戦争も視野に入れていらっしゃる様子です。

その場合、ジン共和国もカルーア陣営に組み込むおつもりのようです。


どうやら、作戦はここまでのようですね。

でも、メリッサ様はお忘れなのではないでしょうか。

トリスの国土防御結界は、悪意を持つ人間を弾き飛ばすということを。


私とノア様は、『拘束の指輪』を通して得た情報を、お義父様とお義母様に知らせました。



「なるほどな。それならば、いっそハネムーンで王城に泊まれないようにしたらいい。

この城も建造されてからだいぶ経つ。そろそろ作り替えてもいいのではないかな?」


「なるほど。王城の工事には何ヶ月もかかりますし、仮にメリッサ様がこの国に入り込めたとしても、王城には泊まれませんね」


「『永遠の牢獄』だけには触れないように工事しなければな」


「果たして、メリッサ嬢がこの国に入れるかどうか、見物だな」


「しかし、魔法も大分使えるようになっているようだし、油断は禁物だぞ、ノア」


「はい、父上」



それから間もなく王城の工事が始まり、私達の仮の住まいは夏の離宮になりました。


数ヶ月後、私達はカルーアでの結婚記念パーティーに参加し、ヨハン王子から、ハネムーンでトリスを訪れたい、言われましたが、王城は工事中で泊められないことを伝えると、ホテルに宿泊するとおっしゃいました。


そして、更に数日後。

ヨハン王子とメリッサ様はトリスへやってきました。

いえ、正確にはメリッサ様以外の御一行が、ですが。

ヨハン王子は戸惑った様子で、夏の離宮を訪れました。



「あの、国境を超えた瞬間、メリッサの姿が消えたのですが、これは一体どういうことでしょうか」


「私の張った国土防御結界は、悪意を持つ者が国に入れないように弾くのです」


「そんな……メリッサに悪意があると?」


「弾かれたのでなければ、ヨハン王子とはご一緒できない理由があったのではないかな?」


「ハネムーンなのに、そんなことあるわけ無い。メリッサは何も言ってなかった」


「実は、メリッサ様と仲のいいリリアナ様から話を聞いているのです。メリッサ様が、私の命を狙っていると」


「メリッサが?!あり得ない、あんな優しい女性が」


「では見せてあげますわ。リリアナ様が私の命を狙ったときのことを」



ヨハン王子だけ連れて、再現魔法であのお茶会でのやり取りを見せます。

それでも、リリアナ様の単独犯で、メリッサ様は利用されているだけだ、と頑ななヨハン王子に、私達も少し考えます。

『拘束の指輪』で得られる情報は、作成者である私とノア様の脳内に直接流れ込んでくるので、他者に見せることができません。



「では、ほんの一時結界を解きます。その間にメリッサ様が入ってこられるでしょう。ヨハン王子は、幻惑魔法でメリッサ様に気付かれないよう、メリッサ様が王城で何をしようとするか、その目で見届けたらいかがですか?」


「メリッサは悪い子じゃない。きっと、あなた方の思い違いです」


「信じるのは結構だが、現実から目を背けないようにして頂きたい」



そうして、私は一旦結界を解いたのです。

メリッサ様が入国してからも、また結界を張れば国外へ弾き飛ばされてしまうので、しばらくの間は結界を解いたままです。


そして、メリッサ様が何食わぬ顔で入国してきました。


私達に挨拶をし、王城の工事に興味があるから、と工事中の王城に行きたがります。



「私はノア陛下とお話があるから行けないけど」


「一人でも平気ですわ」



そうして王城へ向かったメリッサ様を幻惑魔法で惑わしておいて、私とノア様、ヨハン王子で後を追います。


『永遠の牢獄』がある場所に辿りつくと、メリッサ様は魔力を練り上げました。



「『永遠の牢獄に囚われし囚人よ、目覚めの時が来た。我が魔力と血をもって、牢獄を打ち破れ』」



練り上げた魔力が、『永遠の牢獄』に向かいます。

まさか、『永遠の牢獄』を破る魔法があったなんて。



「目覚めなさい、イザーク。今こそジュリアの命を奪う時よ」



興奮状態のメリッサ様は、気づいていないようです。

『永遠の牢獄』に、なんの変化も起きていない事に。

それもそのはず。

本来なら外部から与えられた魔力をもって、牢獄を破るのでしょうが、命の枯れ果てた人間にどれだけ魔力を与えても、復活などするはずがないのです。



「イザーク、起きなさい!」



メリッサ様がイライラし始めます。



「なんで……詠唱は間違っていなかったはず。じゃあ、どうして」


「そこまでですよ、メリッサ嬢」


「ノア様!」


「あなたがしようとしていたことは、全てこちらに筒抜けです。そして今、我が国の王妃の命を狙う発言も確かに聞きました。

あなたの負けだ」


「なっ……私は、負けない!」



メリッサ様が再び魔力を練り上げます。


防御結界を張る私とノア様。


そこに、カツンカツンと一人の足音が聞こえてきました。



「ティーダ様!危ないですから、離れてください」


「私の力は、この為にあったんだ」


「ティーダ?」


「リリアンの生まれ変わり、メリッサ。あなたは今も、そして今後どれだけ生まれ変わったとしても、二度と魔力は使えず、トリス王家の人間に害を為すことは出来ない」


その言葉とともに、練り上げていたはずのメリッサ様の魔力が消失します。

ティーダ様の言葉は、強い魔力が込められているがゆえに、誰であろうとその発言を覆すことはできません。



「そ、そんなっ、私の魔力が……」


「メリッサ。とても残念だよ。本当に、とてもね」


「ヨハン王子?!」



そのタイミングで、私は国土防御結界を張り直しました。

メリッサ様が国内から弾き出されます。



「ヨハン王子。あなたの見たことが全てです。

今回の騒動、メリッサ一人の企みとはいえ、許されることではありません。直ちにカルーア国王を呼んで、今後のことについて話し合いたい」


「はい。分かりました」



とりあえず私達は王城から出て、夏の離宮に戻りました。


ヨハン王子は、紙鷹で国王に手紙を送ったようです。


ここから先は、国と国との話し合い。


ヨハン王子はがっくり肩を落として座りこんでいました。

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