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他人の空似?

翌朝はゆっくりして、昼過ぎにミモザ国王城を出発ました。


途中のホテルでマリアンヌ様と落ち合います。


ロード王子は、久しぶりに家族と再会し、ゆっくりできたご様子です。

側室の方とはやはり別れていました。

お相手がまだお若い方なので、いつまでも宗主国で人質になっているロード王子の側室でいるよりも、違う男性に嫁いだほうがいいという判断だそうです。


何事もなくミモザ国を出国し、カルーア国に入った時、馬車の窓から見えた光景に、私は目を疑いました。


リリアン様………!


いえ。

リリアン様は確かに亡くなって、遺体も消えたはずです。

亡くなったのは、マリアンヌ様が確認したので、こっそり生きていて逃げ出したとは考えられません。


でも。

黒い髪に黒い瞳。

少しのっぺりしたお顔。


下位貴族の令嬢が着るような服を着て花屋にいましたが、あのお姿はどうみてもリリアン様。


いえ、そんなはずはありません。

見えたのも一瞬だけでしたし、きっと、他人の空似でしょう。



「ジュリア、どうかしたかい?」


「いえ。今一瞬、リリアン様を見かけた気がして……」


「……まさか。確かに遺体は消えていたが、マリアンヌ嬢が死亡を確認したんだろう?」


「ええ……ですから、きっと見間違いか、他人の空似ですわ」



そこで、ロード王子が反応しました。

そう言えば、元正妻候補ですものね。



「遺体が消えていたと言うのは、本当ですか?」



このことを知っているのは、ノア様と私とマルコとティレーズ。それに遺体がなくなっていたことに気付いた侍女だけです。

ロード王子が知らなくても無理はありません。



「ええ。不思議な話なのですが、一旦地下に安置していたはずの遺体が、短時間の間に消えていたのです」



ロード王子はその話を聞いて少し考え込みました。



「ロード王子?何かありました?」


「いえ……私が元修道士と言うのはご存知ですよね?」


「ええ」


「聖典の中に似たような話が出てくるのです。

亡くなった聖女の遺体をガラスの棺に納めておいたはずなのに、ある時忽然とその遺体が消え、数年後にまったく別の場所に復活された、と。

聖典の中では聖女の奇跡として扱われています」



そんな……

それでは、もしかすると先程見たのは、やはりリリアン様?

ゲーム補正で蘇ったのでしょうか。

だとしたら、またノア様を狙ってくるのでしょうか。

最後には狂気に堕ちていましたが、もう正気に戻っているのでしょうか。

また、私とリリアン様は戦わなくてはならないのでしょうか。

それとも、全く別の王子をターゲットに?



「ジュリア、大丈夫だよ。君が見たのがリリアン嬢とは限らないし、何かあってもまた私が守ってあげる」


「ノア様……」



私はなんとかノア様に笑顔を向けましたが、内心これからどうなるのかという恐怖に怯えていました。


カルーアの王城についてすぐ、お義母様宛に手紙を書き、そのことを記します。

万が一何かあってからでは遅いので、紙鷹で飛ばしました。

そして、マリアンヌ様をお呼びして、二人だけで部屋に篭ります。



「お手紙拝見しましたけれど、本当にリリアン様なのかしら」


「分かりませんわ。私の見間違いならいいのですが、この世界に黒髪に黒い瞳の方なんて、リリアン様以外に今まで会ったことがないものですから」


「そうね。私もリリアン様以外は見たことがありませんわ」


「お顔も日本人らしくのっぺりしていましたし」


「油断できませんわね。リリー様にはもう報告を?」


「ええ。王城についてすぐに紙鷹で」


「もしもリリアン様本人だとしたら、何が、或いは誰が目的か、ですわね」


「リリアン様はゲームでノア様ルートにたどり着けなかったからこの世界ではノア様ルートを、と仰っていましたけど、学園にいる時はどちらかと言えばハーレムルートが目的みたいでしたし、その後も、他の王子様がた全員と絡んでいますから、残るはカルーアのルカ王子かヨハン王子。後はたどり着けなかったノア様のルートを目指すのではないかと……

ミモザにはもういられないでしょうからね」


「カルーアでも、イザークとの一件は知られているでしょう?」


「ええ。たとえ復活したとしても、以前のような性格ではなければ、とりあえずは安心なのですけれど」


「しばらくは、警戒が必要ですわね。私の『影』に調べさせますわ」



マリアンヌ様の仰る『影』と言うのは、文字通りいつも影から令嬢や令息をお守りし、諜報活動も行う人物のことです。


マリアンヌ様のようにそれなりの家柄で、家督を継ぐ方には付くことが多いです。

もちろん、ノア様や私の弟のマシューにもついています。


ただ、たとえ主人といえども『影』の姿を見ることは出来ないのですけれどね。

すべて、言葉のみで連絡を取り合うのです。

お守りする時も、瞬時にカタをつけて姿を消すそうで、顔を見ることはないそうです。

日本で言うなら忍者のようなものでしょうか。


さすがに、私やお義母様との秘密のお茶会の時は離れているように伝えているらしいので、このお話も聞かれてはいません。

もし聞かれていたら、「ゲームが」とか「転生が」とか意味不明の言葉が出てくるので、混乱させてしまうでしょう。


話が逸れましたが、取り敢えず、私達はマリアンヌ様の『影』からの報告を待つしかなさそうです。


モヤモヤしたまま私たちはカルーアに滞在し、翌日にはまたトリスに向かって出発しました。


お義母様からも手紙の返事があり、不気味だけれど、何か動きがあるまでは静観しよう、と書いてありました。


そうして私達はトリスに無事戻り、ロード王子を離宮に送り届けたあと、王城へと帰ってきたのです。

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