2度目の出産
ノア様目線です
マリアンヌ嬢のおかげで、今回のジュリアの妊娠も順調だ。
父上と母上から即位の話を聞いたときは流石に驚いた。
そのことも影響しているのだろうか。
その晩、ジュリアが陣痛を訴え始めた。
エドワードの出産の時は、ここからは女の世界、と言われて立ち会えなかった。
いや、立ち会えずともギリギリまでジュリアの側にいてやりたかったのに。
しかし、初産だし何かと大変だろう、と諦めたのだ。
だが、今回の私は違う。
出産を控えた妊婦に対して何をしてやれるか調べたし、ジュリアも2度目の出産だから、多少は慣れて気持ちにゆとりもあるはず。
今度こそ、側についててやるのだ。
そう、思っていたのに。
「殿下。ここからは女の戦いです。失礼ながら、殿下にしていただくことは何もありません」
また、マリアンヌ嬢にピシャリと言われ、縋るようにジュリアを見たが、ジュリアもにっこり笑って、外に出ているように言った。
そして私は、また今回も部屋の外で廊下をウロウロしている。
「なんだ、ノア。こんなところでウロウロして」
たまたま通り掛かった父上に声をかけられる。
「ジュリアの出産が始まったのですが、側についててやりたいのに追い出されてしまって……」
「……ああ。それは仕方ない。本当に、私たち男にできることは何もないんだ。
お前が生まれる時な、私はギリギリまでそばにいようと思って、リリーに言われるがまま腰を擦ったりしてたんだ。だが、場所が違うとか、そんなんじゃいないほうがマシだと言われてしまって。
出産は、命がけの行為だから、そばに付いていてやりたいが、邪魔になるくらいなら外にいるしかないんだよ」
「父上も、ティーダが生まれる時はこうして外に待機していたのですか?」
ティーダが生まれた時は私も幼かったから、周りがバタバタしていたのが記憶にあるくらいで、父上がどうしていたのかまでは覚えていない。
「ああ。今の君みたいに廊下にいたんだが、湯やタオルを運んだりするのに邪魔だし、時間がかかるのだから、公務でもしていろと、母上に言われてな。仕方なく執務室に戻ったよ」
お祖母様は既に他界しているが、なかなかに気の強い女性だった。
それに比べ、母上はいざという時は怖いが、フワッとした女性だ。
ではジュリアはというと、母上よりも更にフワッと……いや、のほほんとしていて、怒ることも殆ど無い。
いつもどこか、自分なんて、と思っている節があり、もっと自信を持ってほしくて褒めてばかりいる。
ジュリアの素敵なところなら幾らでも挙げられるが、誰も聞いてくれないので私の心の中に収めている。
いや、そんなことより今はジュリアのお産だ。
「私も、廊下にいるだけでも邪魔だと言われるでしょうか」
「その可能性はあるな。まぁ、執務に戻って1時間に一度様子を見に来るくらいならいいんじゃないか?」
「分かりました。そうします」
私は父上の言葉を信じて、執務室に戻った。
ジュリアに、私が大変な時に執務室にいたなんて、と後々詰られ、人それぞれ考えは違うのだと思い知らされるのは、それから数時間後のこと。
執務室で公務を行いながら、今回は赤ん坊の夜泣きの際には私も出来る限り手伝おうと思っていた。
調べたところによると、予め搾乳しておいて、それを飲ませることも出来るらしい。
エドワードの時は、本当に頻繁に目を覚ますものだから、ジュリアは私に気を遣って別室でエドワードと寝ていた。
だが、今回は手伝ってやりたい。
マリアンヌ嬢の話ではあまり乳母に頼るよりも母乳の方がいいということなので、ジュリアも殆ど乳母には任せなかった。
たぶん、今回もそうだろう。
夜が無理ならせめて昼間、私が授乳してジュリアを休ませてやろう。
私は鼻息荒くそう誓った。




