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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第七章 国王の椅子と新たな命
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リリアナの野望

ノア様目線です

慌ただしくリリアナ嬢の滞在準備が整えられた頃、リリアナ嬢は侍女や騎士たちを従えて、大きな馬車でやってきた。


正直、こんなに侍女はいらないんじゃないかという程だ。

荷物もとんでもなく多い。


今回は勉学……トリスの政策について学ぶために来た。

期間は2週間程と聞いている。

その間、私が主に相手をすることに決まったので、ジュリアやエドワードに会える時間が無くなってしまうのが、とても困る。

しかしこれも外交の一環。

適当に済ませるわけにはいかない。


リリアナ嬢が来たからといって、特にパーティーなどは行わない。

これは、ジン共和国の首相からの依頼だ。

まぁ、頼まれなくても、普通に学ぶ為に数週間滞在するだけのご息女の為にパーティーをわざわざ開くなんてしないのが通例なのだが。


出迎えに出た俺とジュリアに、馬車から下り立ったリリアナ嬢は美しい笑みをうかべて淑女の礼をした。



「ジン共和国首相テスラ・キホーテの長女、リリアナ・キホーテと申します。

これからしばらく、お世話になりますわ」


「トリス王国王太子、ノア・トリスと申します。

遠いところをようこそいらっしゃいました。

お手伝い出来る事があれば、何なりと仰ってください」



続いてジュリアも挨拶をしようとしたが、それより先にリリアナ嬢が口を開いた。



「妃殿下はご懐妊中の身。わざわざ出向かえに来てくださらなくてもよろしかったのに」


「お気遣いありがとうございます。ですが、やはりノア殿下だけのお出迎えでは失礼に当たりますから」


「あら。全然失礼じゃなくてよ?むしろノア様だけでよかったくらいですわ」



ジュリアの何がそんなに気にいらないのか、随分ひどい物言いだ。

ジュリアも笑顔が引き攣っている。



「それでは、侍女に滞在中のお部屋までご案内させますので、どうぞ」


「まぁ。侍女が?そこは女同士、妃殿下がご案内してくれませんの?」



普通は、侍女や執事が案内する。

つまり、案内は彼らの仕事なのだ。

それを、王太子妃にやらせろと?



「リリアナ様?こうした案内は侍女達の仕事ですの。私が彼らの仕事を奪うわけには参りませんわ」



ジュリアがやんわり断ると、リリアナ嬢はつまらなそうな顔をして侍女についていった。



「なんだか……少し変わった方ですわね」


「変わった方?いや、あれは失礼な方だと言っていいだろう」



あの失礼な令嬢の相手をしなくてはならないのかと思うと、今から気が滅入る。



「ノア様。頑張ってくださいね?私にもできることがあればお手伝いしますので」


「ありがとう、ジュリア。でも君は第二子を宿した身体だからね。あまり無理はさせられないよ」



ジュリアをそっと抱きしめると、私たちはそれぞれの公務に戻った。




最初の事件が起こったのは、昼過ぎのこと。



「ええっ!歓迎パーティーを開いてくださらないのですか?」



明日からの予定を告げに行き、今夜は一緒に晩餐を、と伝えると、リリアナ嬢はとても驚いた顔をした。



「ええ、滞在期間も短いですし、リリアナ嬢のお父上からもそのように言われていますからね」


「そうですの……わかりましたわ。では、晩餐でお会い出来るのを楽しみにしていますわ」



なんとか納得してくれたようで一安心だ。


晩餐の席では、リリアナ嬢はとてもにこやかで、ジュリアに対する失礼な物言いや、パーティーがないと聞いたときの不満げな様子などチラリとも見せずに会話している。



「明日は一日、現在進行中の施策について、ノアから学ぶのでしたね」


「はい、陛下。しっかりと勉強致しますわ」




そう言っていたのに……



翌日、朝から施策について説明をしていたのだが、昼食をとると、リリアナ嬢は思いもかけないことを言い出した。



「ノア様。私、町へ出てみたいですわ」


「え?なぜ、また」


「実際に暮らしている民たちの暮らしぶりをこの目で見たいのです。私はこの国では顔を知られていませんし、ノア様も少し変装すれば大丈夫ですわ。行きましょう?」



断りたい。

嫌な予感しかしない。

しかし、トリスの政策がどのように民に影響しているのかを知るのも、確かに勉強の一つ。

簡単に断るわけにもいかない。

仕方なく、私とマルコは貴族階級くらいの簡素な服に着替えて、同じく着替えを済ませたリリアナ嬢と一緒に城を出た。



「ああ、あまり大勢で歩くと目立ちますので、護衛騎士もマルコ様も私達から少し離れて歩いてくださる?」


「しかし、次期国王をお守りするのは私の役目です。

護衛騎士は少し離れてもらうとしても、私はノア様のお側を離れる気はありません」


「そう。融通の効かない方ね」



この言葉に、マルコがムッとしたのがわかった。

リリアナ嬢は、どうも時折失礼な物言いをするようだ。

父上たちの前ではそんな素振りは見せなかったのに。



「ねぇ、ノア様。あそこの露店に行ってみたいですわ」



そう言うと、私の腕をとってさっさと歩き出す。

正直、香水臭いし、胸を押し付けるように腕を引かれて、とても不快だ。



「あ、ノア様。次はあちらへ行きましょう?」



そう言って、いくつもの露店や店に連れ回される。


おいおい。

民の暮らしぶりを確認したかったんじゃないのか?

これじゃあ、単なるショッピングじゃないか。



「それにしても、随分あちらこちらで妃殿下の絵葉書が売られていますのね」


「ええ。ジュリアは国民から大変慕われていますからね」


「それはそうなんでしょうけど……このお守りはなんですの?」


「ジュリアには縁結びの力があると噂されていましてね、少しでもあやかりたいとこうしてお守りまで作られているのですよ」


「ああ、その噂なら我が国にも聞こえていますわ。

でも所詮、そんな力はないのでしょう?」



ふっ、とリリアナ嬢が鼻で笑ったのを、私もマルコも見逃さなかった。


そろそろ堪忍袋の緒が切れそうだ。


私はミモザでの講師時代の癖で、勉学に不真面目な生徒には厳しい。



「リリアナ嬢。今日はショッピングをしに来たわけではありません。もう城へ帰りますよ」


「そんな!もう少し……」


「早くしてください」



急かすと、リリアナ嬢はようやく城へ戻ってくれた。



それから数日が過ぎ、私は、リリアナ嬢がまったく学ぶ気がないことに気がついていた。

当然、父上と母上にも報告済みだ。

そして、父上からはジン共和国の首相へ。


それでも、何とか無理矢理、施策について説明をしていた。

リリアナ嬢の距離がとても近いことに不満を覚えながら。

ただ近いだけでも嫌なのに、香水の匂いが移ってしまって、つわり中のジュリアには、シャワーを浴びてからじゃないと近寄れないのだ。


そして、やっと、リリアナ嬢が国へ来て1週間、リリアナ嬢は晩餐の席で爆弾を落とした。



「私思ったのですけれど、我が国の共和国制と、この国の君主制のいいところを合わせれば、とてもいい国ができると思いますの」


「それは、そうかもしれないね」


「ですよね?なので、私、ノア様の元へ嫁ぎたいのですわ」



ゴフッと、その場の全員が噎せた。



「私とノア様なら歳も近いですし、気も合います。とてもいいお話だと思いません?」


「リリアナ嬢?あなた、少し不勉強なのではなくて?この国は王族と言えども一夫一妻制なのですよ?」



ああ、母上が怒ってる。



「まぁ、そうでしたの。でしたら、ノア様とジュリア様が離婚されて、私と再婚なさっては如何かしら。もちろん、妃殿下の出産が済むまで待ちますし、生まれてからはお子様は二人とも私が大切に育てますから、心配いりませんわ。

それに、我が国には妃殿下と歳の近い私の弟がおりますので、妃殿下の再婚相手にも困りませんわ」



まるで、自分がさも素晴らしいことを言ったかのように、ドヤ顔で胸を張るリリアナ嬢。


その場にいた私たちは、呆気にとられてどう反応すべきか、すぐに思い至らなかった。


そんな中、一番早く我に返ったのはジュリア。



「リリアナ様?結婚も離婚もそんなに簡単にできることではありませんし、お腹を痛めて産んだ子供を他人に任せる気にもなりません。何より、私はノア様を愛していますから、離婚などする気はありませんわ」



続いて母上も。



「リリアナ様。勉強の為にこの国に来られたのに、その勉強も真剣に出来ないような方は、ノアの嫁にはできませんわ。

それに、ジュリアちゃんになんの落ち度もなく、国民の信頼も篤く、ノアと愛し合っているジュリアちゃんを離婚させるなんて真似、出来るわけ無いでしょう?」



その通り。

しかもジュリアと別れないことは大前提だが、ジン共和国の首相の長男は、女関係にだらしがないことで有名だ。



「そうだね。この国はジュリアによって守られているようなものだ。それも、ノアのことをジュリアが愛し、ノアもジュリアを愛しているからこそ。ジュリアとノアを離婚させてまで君を迎え入れる気はないよ」


「父上や母上の仰る通り、私はジュリアを愛していますし、他の女性には心動かされません。あなたに、ジュリアの代わりが出来るとも思えません」



はっきりと告げると、リリアナ嬢はツンとすました顔でジュリアに言った。



「妃殿下は確かに天使の加護を多く受けられていますけど、何か加護を受けられる方法などはありますの?」


「いえ。特には」


「つまり、ただのラッキーですのね。妃殿下の実力ではなく」



その言葉に噛み付いたのは母上。



「それは違いますわ。ラッキーではなく、日頃の行いです。

それに、ジュリアちゃんの実力は、天使様からの加護を指しているのではなく、別のことですのよ」


「別のこと?」


「よく知られているのは、ジュリアちゃんの精霊の祝福。

その他にも、治水事業なども私と行っていますのよ。

あと、この国の国土防御魔法陣はジュリアちゃんの力で展開されているの。あなたに、同じことが出来て?」



リリアナ嬢は悔しそうに唇を噛んだ。



「予定より少し早いけれど、あなたには明日にでも帰国してもらいます。

当初の目的から大きく外れた言動。

これ以上、この国にいらしても、誰のためにもなりませんわ。

いいでしょう?陛下」


「そうだな。この後すぐに、リリアナ嬢のここでの様子、何を言ったかも全て記した上で、帰国させる旨をテスラ殿へ知らせよう。

ジュリア、紙鷹を頼めるかい?」


「かしこまりました」


「良かったですわね、リリアナ様。ジュリアちゃんの紙鷹なら、半日で貴国に書状が届くから、明日の朝一番で出ていっても、帰国に驚く方はいらっしゃいませんわ」



母上はこの上ない笑顔で言っているが、目が笑っていない。



「あなたにも早くいい御縁があるように、ジュリアちゃんのお守りを買って帰るといいですわ。

ああ、でもその前に、その性格を少し直したほうがいいでしょうけれど」



母上は冷たく言い切って、料理をまた食べ始めた。

父上もティーダも、そして私とジュリアも。


ガタン、と乱暴に席を立ったリリアナ嬢に、父上が追い打ちをかけた。



「今夜中に荷造りを終えるように。あなたには明日の早朝、出国してもらう。もし強引に残るつもりなら、強制送還魔法を使ってでも帰らせるから、そのつもりで」



リリアナは返事もせずに食堂を出ていった。


そして翌早朝、リリアナは大人しく馬車に乗り込み帰っていった。



面倒事がやっと収まったことで、私はジュリアと目を見合わせて、お互いにホッとため息が出て、クスクス笑いあった。

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