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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第七章 国王の椅子と新たな命
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マルコvsティレーズ【後半】

王妃様の自室にいつものお茶会のメンバーが揃いました。



「ジュリアちゃん。あなた、3人もの天使様からご加護を頂けるだなんて、前代未聞よ?

もしかしたら、続編の公式ヒロインが受けるはずだった加護なのかしら」


「ああ、確かにヒロインならそれくらいの加護を受けそうですわね」


「もう、ノアと結婚してイザベル様を撃退した時点で、あなたヒロインに成り代わったのね」



そうなのでしょうか。

モブの私が、ヒロインに?

ただの偶然のような気もするのですけれど。



「それに、ロングアイランドの国王からも求婚されたのでしょう?」



王妃様、なんでそんなことまでご存知なのですか? 

王妃様はうふふ、と笑います。


くっ、可愛い……!



「ノア様がいらっしゃるからこそ、ジュリア様も輝くというのに、ヘンリー陛下はわかってらっしゃらないのですね」


「わ、私の話題はもう結構ですわ。

それより、お二方にお力を貸してほしいのです」


「まぁ。どうしたの?」


「実は……」



私はティレーズとマルコの話をしました。

仮にマルコに悪気がなく言ったのだとしても、ティレーズはマルコから謝ってくるまで許す気がないということも。



「まぁ。まぁまぁ!なんて面白いことになっているのかしら!」


「王妃様、思っても言葉に出してはいけませんわ」



マリアンヌ様がそっと諌めます。



「確かに、前世でも女を見下す男は多かったですわ。同じように医療行為をしていても。

それに、女性はどうしても妊娠すると仕事を休まなくてはいけなくなるでしょう?そのことで職場で嫌味を言われるという患者さんも少なくなかったですわ」


「でも、今回のマルコについては、それには当てはまらない気がするのよね」



王妃様がおっしゃいます。

やはり、王妃様も私と同じ考えなのでしょう。



「それに、ああ見えてマルコはティレーズにベタボレですわよ?まぁ、気がつくきっかけを与えたのは私達ですけれど」



マリアンヌ様もおっしゃいます。



「では、問題はどうやって、マルコの失言を本人に気が付かせて、謝罪させるかですわね」


「ちょっと、マルコを呼んでみましょうか」



王妃様が外に控えていた侍女長のマリアに命じて、マルコを呼び寄せます。



「ああ、マリア。あなたもちょっと中へ入って一緒に話を聞いてちょうだい」


「かしこまりました」



「お呼びと伺いましたが」



マルコは訝しげな顔で私達を見回します。

更には自分の母親もいることに戸惑っているみたいです。



「ちょっと聞きたいのですけれどね、あなた、ティレーズとの子供を早く欲しいの?」


「申し訳ありませんが、それはプライベートな問題ですので………」


「王妃様からのご質問ですよ?いいから早く答えなさい」



マリアにピシャリと言われて、マルコは渋い顔をしました。



「それは……私も年齢が年齢ですから、出来れば早く子供の顔を見たいとは思っております」



やっぱり、早く子供がほしいだけだったようですわね。

問題は、マルコの失言についてです。



「正直に答えてほしいのだけど、あなた、私やジュリアちゃんのことも含めて、王城で働く女性は、男性より軽い仕事をしていると思う?」


「軽い重いでお話していいかはわかりませんが、やはり、国務の中心である陛下やノア様に比べ、王妃様やジュリア様は背負うべきものが軽いかと。王城で働く女性たちについては、女性にしか出来ない事や、気付かない点もあるので、大変だろうと思っています」


「マルコ!あなたなんて事を!外交だけが国務ではないのですよ?王妃様や王太子妃様のなさっている治水事業は、国民の病を減らし、且つ経済も回す、とても大変で、それでいて重要なお仕事なのですよ!それとも、あなたは王族の女性はパーティーやお茶会でただ笑っていればいいだけの簡単な仕事だとでも思っているの?」


マリア、とても怒っています。

激怒です。



「決してそのような事は考えておりません。私の失言でした。申し訳ありません」


「その言葉、本来ならティレーズに伝えるべきですわね」



私の言葉に、マルコの表情が硬くなります。



「ああ、ティレーズが私に告げ口したとか考えないでくださいな。私が無理矢理聞き出したのですから」


「ジュリア様。一体何が?」



私は事の次第をマリアにもしっかり伝えました。



「子供を早く授かりたいという焦りから出た言葉なのでしょうが、ティレーズは酷く傷ついておりますの」


「マルコ!」



マリア、ついに怒鳴りました。



「あなたを授かる時、また授かってから生まれて乳離れするまで、あなたのお父様はそのような事は一度も言いませんでしたよ?

それなのにあなたときたら、婚期をとっくに逃したオジサンにせっかく嫁いできてくれた女性に、なんて事を言ったのです!」



そこへ、トントン、と扉を叩く音がしました。

マリアがドアを開けて確認すると、ノア様です。



「マルコと予定していた公務が終わったから、マルコと次の仕事の打ち合わせをしようと思ったのですが……」


「今は無理ですね。私はここの女性陣に猛攻撃を食らっているところですから」


「どういうことだ?」



私はノア様にティレーズとマルコの話をしました。

三度目ともなると、要点を掻い摘んで説明することできます。


私の話を聞いたノア様は、困った顔をされました。



「いや、しかしマルコも子供が欲しかったわけであって、その為には、ティレーズが懸念していることは何とかなるから大丈夫だと言いたかったのだろう?」


「そんなことはわかっています」



私はキッパリスッパリ切って捨てました。



「問題は、マルコの伝え方なのです」


「まぁ、確かに伝え方は悪かったと思うが、マルコは元々口のうまい男ではないし」


「嘘おっしゃい。あなた、一度もマルコに口で勝てたことはないではないですか」



今度は王妃様が切って捨てます。



「ああ、いや。仕事に関してはそうですが、恋愛に関しては初心者。恋もろくにしたことがない男なのです。照れ隠しもあって、そんな言い回しになったのではないかと」



さすが男同士。

ノア様はマルコの味方をします。



「それならそれで結構ですわ。でも、失言だったとわかっているなら、きちんと謝るのが誠意というものでしょう?

それとも、女に、妻に頭を下げるのはプライドが許しませんか?或いは今後も尻に敷かれるのではないかと怯えてらっしゃる?」



マリアンヌ様、容赦なしです。



「エリクは本当に口下手ですけれど、私を傷つけてしまったり、自分が間違ったことをしたと思った時は、ちゃんと謝ってくれますわ」



あ、惚気でした。

では、私も便乗して。



「ノア様だって、私が初めての恋のお相手のはずですけれど、必要な時には謝ってくれますわ」


「陛下もよ」


「ポアロもですわ」



女たちに口々に言われて、さすがにノア様も口を噤みます。



「とはいえ、マルコにも喧嘩をしてから今まで、謝れていない理由がなにかあるんでしょう?」



味方のふりをして聞いてみます。

マルコは、ため息をつきました。



「それは……あんなに分かりやすく腹を立てて私に敵意を向けているのですから、謝ろうにもタイミングがつかめないのです。

ティレーズは、私の言葉を聞こうとしてくれません」



確かに、ティレーズは仕事以外ではマルコと口も聞いていないようですからね。



「それは、ティレーズにも問題があるわね。

でもね、マルコ」



王妃様が急に優しく語りかけます。



「女性はなかなか素直になれない生き物なんですの。だから、喧嘩をした時は男性から声をかけてあげれば、相手はすぐに許してくれますわ。

あなただって、ティレーズとこのままなのは嫌でしょう?」


「はい。ですが、なんと声をかけたらいいのか」


「簡単ですわ。『この間は誤解させるようなことを言ってしまい悪かった。君との子供が早くほしいばかりに、焦ってしまったんだ。君の仕事の重要さは理解している。大好きな君と仲直りしたい』そう言えばいいのです」



マリアンヌ様が堂々とおっしゃいました。

また、立ち上がったジャンヌ・ダルクのようになってます。

きっと、マリアンヌ様は前世で数多くの恋愛をしていらっしゃったに違いありません。


マルコは真剣な顔でマリアンヌ様の言葉を聞いて、大きく頷きました。



「後は、花束もあるとなおいいわね」



王妃様が楽しそうにおっしゃいます。



「皆様方、母上。私とティレーズの為にこんなに色々と考えてくださり、ありがとうございます。最初は私を一方的に悪者にして責めるつもりかと、内心反抗的な気分でしたが、そうではないと、よく分かりました。

早速、ティレーズに謝ります。そして、これからは迂闊な発言でティレーズを傷つけないよう注意いたします。では、御前失礼致します」



ティレーズの為に花束を作りに行ったのか、マルコはあっという間にいなくなりました。


ノア様ですか?

もはや空気です。



「王妃様、この度は愚息の為にありがとうございました。あの通り、融通がきかず、甘い言葉の一つも言えない子ですが、ティレーズちゃんのことは本当に大切にしているのです。今度のことで、少しでもティレーズちゃんを甘やかすことを覚えるといいのですけれど」


「うふふ。マルコに甘い言葉は似合わないわ。

ポアロだって、そんなに頻繁に甘い言葉は言わないでしょう?本当に、似たもの親子ね」


「そんなところ、似なくてよかったのですが」



ため息をつくマリアは、すっかりお母さんの顔です。



「ああ、そうそう。忘れるところだったわ。

ジュリアちゃんがね、また妊娠したの。

まだ初期だから安静にしつつ公務という形になると思うのだけど、あなたにはまた負担をかけてしまうわね」


「おめでとうございます、王太子妃様。

王妃様や王太子妃様の仕事を管理するのも私の役目でございます。ティレーズとマルコとよく話し合って決めますわ」


「ありがとう、マリア」



お礼を言うと、マリアは優しく微笑みした。



「王太子妃様は、もっと周りに甘えてもよろしいのですよ?あまり、一人で抱え込んで無理をなさらないでくださいませ」


「そうさせてもらうわ。

それから、マリアンヌ様。今回も、よろしくお願いします」


「ええ。任せてちょうだい」



翌日。

ティレーズはいつもより随分ご機嫌でした。

マルコとうまく仲直り出来たようです。

とてもわかりやすいですね、ティレーズ。


私はティレーズに身支度を整えてもらいながら、ほんの少し微笑みました。

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