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卒業パーティー

一部修正しています

1ヶ月なんてあっという間に過ぎて。


気がつけば、明日はもう卒業パーティーです。



「ティレーズ。その……濃紺のリボンは用意できているのかしら」



見ざる聞かざるを貫いていたティレーズですけれど、私がノア様に紺色を身につけて欲しい、と言われた時、ティレーズもその場にいましたから、流れは理解しているはず。



「一応用意は致しましたけれど、本当に付けていかれるのですか?」


「ええ……そのつもりだけど、ティレーズは反対なの?」


「こんな事を申し上げるのは不敬に当たるかもしれませんが、ノア様とお嬢様は歳が離れすぎている気が……」



ノア様は22歳。

私とは6歳差になりますけれど、そんなに「離れすぎてる」と言われるほどでしょうか。

前世ではこれくらいの歳の差は珍しくもなかったからか、今ひとつピンと来ませんけれど、確かに、適齢期の令嬢と適齢期を大幅に過ぎた男性では、離れすぎてると思われても仕方ないかもしれませんわね。


でも!


他の「観賞用」の王子様方には一切心が動かされませんし、他のご子息に至っては論外です。

私にとってはノア様だけが恋愛対象。

だから、最近お父様が持ち込んでくる縁談も尽くお断りしているのは、ティレーズも知っているはず。



「歳の差があると言われようとも、あの大人の魅力が堪らないのよ?

だから、卒業パーティーには紺色のリボンをつけていきますわ」



もしかしたら、本当にもしかしたらですけど。

ノア様とダンスをすることになるかもしれませんわね。

幼い頃から侯爵家の令嬢として基礎から徹底した教育を受けてきましたから、ダンスに自信がないわけではありませんけど、男性からのダンスの申込みは、「あなたを恋愛対象としてみています」という意味合いがありますし、そんなことになったら私、平静でいられるか自信がございません。


でもでも、濃紺のリボンをつけてほしいと言われてますし、やはりダンスに誘われる可能性……高い、ですわよね?


そんなことを夢想していたからか、その夜はあまり眠れませんでした。



……………………………………………………………………………………


とうとう今日は卒業パーティー当日。

淡い水色のドレスに濃紺のリボン。

リボンはドレスだけでなく、髪にも編み込んでもらいました。


ティレーズは気を利かせてくれて、濃紺のイヤーカフもつけてくれました。

私の気持ちを、大事にしてくれたのですね。


トントン、と扉をノックする音がして、続いて弟の声。



「姉様。用意はできましたか?」


「ええ。今終わったところよ。お入りなさいな」



返事をすると、緊張した面持ちの弟が入ってきました。

弟はまだあどけなさの残る可愛らしい子で、私の自慢の弟です。

でも、もう既に婚約者がいるのですけどね。

その令嬢も可愛らしい方で、三人でのお茶会は私のお気に入り。



「今日は、エスコートをお願いね」


「はい。姉様に恥をかかせないよう頑張ります!」


「先生方へもご紹介しますから、そのつもりでね」


「あの、姉様……学園は、楽しいところですか?」



どうやら来年度から入学する学園のことが心配な様子。

少し人見知りなところのある弟ですから、私も心配ですけれど……



「大丈夫。すぐにお友達ができますわ。

あなたも卒業したらすぐに結婚することになるのですし、それまでの学園生活をお楽しみなさい」


「はい」



私の結婚は……いつになるのでしょうね。


ノア様以上の方が見つからない限り、結婚はするつもりはないのですけれど。

かといって、適齢期を逃した令嬢は、余りものみたいな男性としか結婚できませんし……

諦めるしかないのでしょうか。


ノア様の言葉を、ほんの遊び程度のつもりで仰ったとしか思えない私には、少し憂鬱な話題です



弟と馬車に乗り、パーティー会場である学園の大広間へ向かう。



「ジュリア・ルクラシア嬢、入場!」



入り口の騎士に名前を告げられ、パーティー会場の中へ。



「ジュリア様、ご機嫌よう」


「ご機嫌よう、マリア様。素敵なドレスですわね」


「ジュリア様のドレスも華奢で素敵ですわ」



パーティーは、相手の服装をほめるところから始まる。

少し同級生の令嬢方と挨拶をした後、私は弟を連れて先生方の所へ。



「先生方、お世話になりました。学んだことを活かせるよう、これからも精進いたします」


「ジュリア嬢。あなたはとても真面目でいい生徒でしたよ。

ところで、そちらの方は?」


「弟のマシューでございます。来年度から入学致しますので、どうぞよろしくお願い致します」


「マシュー・ルクラシアと申します。来年度からよろしくお願い致します」



弟もキチンと挨拶をする。

まぁ、この一連の流れは決まり文句のようなものなのですけれど。


挨拶さえ済ませてしまえば、後は弟と一緒にいなくても問題ございません。


私は盛り付けられた料理を取りにいそいそとテーブルに足を運びました。


さすが、王子様方も食するだけあって、何もかも、とても美味しいです!



「今日もよく食べてるね」



不意に後ろから声をかけられました。

聞き間違えるはずはありません、これはノア様の声。


お皿をテーブルに置いて振り返ると、私はゆっくりと貴族の礼を致しました。



「ノア先生……もう、ノア様とお呼びしても?」


「私も今日で講師を辞めるからね。構わないよ」



そう言って、私の髪を1筋指に絡めました。



「濃紺のリボン、付けてきてくれたんだね。ありがとう」


「い、いえ……」


「ダンスの相手をお願いしても?」



ダンスの申込みキター!


私が頷くと、ノア様はゆったりと手を取って、会場の真ん中へエスコートされました。


そこには、ナード様とダンスを始めようとしているリリアン様の姿も。

どうやら、ナード様ルートを選んだようですわね。


ワルツの曲が流れ始め、私たちはダンスを始めます。

ノア様はとてもリードがお上手で、緊張していた私でも優雅に踊ることができました。


1曲踊り終わったところで、ノア様が跪かれました。



「もう1曲、お相手していただいても?」



もう、1曲?


私はその場で固まりました。

パーティーの場において、2曲続けてお相手を申し込むのは、プロポーズの証。


つまり。

ノア様が、私にプロポーズを?



「さすがに、駄目……かな」


「いっ、いいえ!喜んでお相手させて頂きます」


「ありがとう」



ダンスをしながら、ノア様が耳元で囁きます。



「ジュリアが申込みを受けてくれて、とても嬉しい」



低いテノールの声が、鼓膜をくすぐります。

私、もういっぱいいっぱいです。



「ジュリアは、本当にこんなオジサンでよかったの?」


「私は……ずっとノア様の事をお慕い申し上げていましたから」


「本当に?嬉しいな」



私とノア様が2曲続けて踊っている姿に、周りもさすがにざわめいていますけど、それどころじゃありません。

今にも気絶しそうです。



「ルクラシア侯爵には、改めて結婚の申込書を送るよ」


「はい……」



ダンスを終えた後は、もう食欲もどこかへ行ってしまって、フワフワした気持ちのまま過ごしました。


帰りの馬車の中で弟に何か聞かれた気もしますが、正直記憶にございません。


こうして、波乱の卒業パーティーは幕を下ろしたのでございます。

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