帰国、そして夏の離宮へ
ノア様目線です
ようやく、ロングアイランドから帰国できる日が決まった。
今回の国外公務では、ジュリアが天使と交渉したり、ロングアイランドの国王が変わったり、法改正に巻き込まれたり、ジュリアがプロポーズされたり、とにかく疲れた。
帰国したらすぐに、夏の離宮でジュリアとのんびりイチャイチャ過ごすつもりだ。
一夫一妻制になったことで、国民の反感をかっているかもしれないから、と国境まではロングアイランドの騎士たちも護衛についてくれた。
何事もなく国境を越え、ようやくトリスへ戻ってきた。
ほんの数週間しか離れていなかったはずなのに、とてもトリスの空気が懐かしく感じる。
城へ戻ると、とりあえず今回のあらましを父上に報告する。
ロングアイランドのヘンリー陛下からも書状が届いていたようで、感謝の意と、私の提案どおりお見合いパーティーを開催することにした旨がしたためられていた。
ロングアイランドは、昔から退廃の国だったわけではない。
元は情熱の国と呼ばれていて、好きな相手ができると、とても情熱的にアプローチし、情熱的な恋をする国だった。
それが、いつの間にか多夫多妻制になり、一夜のアバンチュールは当たり前、夫も妻も気に入った相手がいればすぐ結婚して何週間も閨から出てこない、という性に乱れた国になってしまったのだ。
ちなみに、その相手は同性でも構わなかったらしい。
私には、とてもじゃないが考えられないことだ。
今回のロングアイランドの事件を受けて、トリスの王族も、平民と同じく一夫一妻制を取るように定められた。
内心、これで側室にと望む貴族がいなくなることにホッとしている。
それはジュリアも同じようで、見るからに安心した顔をしていた。
「父上。今回は巻き込まれたような形ではありますが、ロングアイランドに貸しを3つ作り、私もジュリアも疲れ果てています。
許されるなら、1週間ほど夏の離宮で休暇を取りたいのですが」
「いや、しかし……ロングアイランドでの滞在が伸びた分公務もみっちり入っているし、私たち三人でそれを回すのは……」
渋る父上を説得したのは母上。
「いいではありませんか。もしかすると、次の孫の顔が見られるかもしれませんよ?」
「む………」
どうも、父上は母上の手の上で転がされてる気がする。
父上が口下手なのもあるが、母上の意見に勝てたことなど見たことがない。
「1週間、夏の離宮でのんびりしていらっしゃい。孫の顔を楽しみにしてるから。
ああ、それと、夏の離宮に行っている間もエドワードはこちらで預かるから、安心してね」
母上。
エドワードの面倒を見たいだけなんじゃ……
口には出さずに、とりあえず礼を述べて自室に戻った。
「エドワードとまた離れる事になるのは寂しいですけれど、新婚旅行の時みたいで楽しみですわね」
ジュリアが可愛らしく笑う。
今回も、使用人との接触は最低限になるように、夏の離宮の管理者に連絡を入れておこう。
ジュリアと二人きり、どこでもなんでもし放題の状況は、とても良かったからな。
ジュリアは恥ずかしがり屋ですぐに声を抑えたがるから、こんな状況でもないと、可愛い声を聞けない。
せっかくだから、マルコとティレーズにも休暇をやろう。
もしかしたら、これをきっかけにあの二人にも子供ができるかもしれない。
子供ができたらティレーズはしばらく働けなくなるからジュリアは困るかもしれないが。
そう思ってジュリアに聞くと、他の侍女もいるし、ティレーズに子供ができた方が嬉しいから、と言ってくれた。
マルコとティレーズに休暇を与えた翌日、私たちは夏の離宮へ向けて出発した。
夏の離宮は、王城から比較的近くにある。
一番近い離宮には今はミモザのロード王子がいるから使えない。
いや、折角だから、ロード王子に挨拶をしてから行くか。
不便がなく暮らせるように手配はしているが、何か気が付かない点もあるかもしれない。
そう思って、ロード王子の元へ行ったのだが……
ロード王子は軟禁生活をこの上なく楽しんでいた。
どうやら、侍女の一人がお手つきになったらしく、人目も憚らずイチャイチャしている。
離宮から出ることは出来なくても、公務に追われることもなく、国を背負う重圧もなく、快適なんだそうだ。
もちろん、いざという時には1番に殺される運命にあるが、それがまた侍女との恋を燃え上がらせているらしい。
ロード王子。
ジュリアより1つか2つ歳下で、元修道士だったはずだが、こんな性格だったのか?
もう少し生真面目で、勉強熱心な王子だったと思うのだが。
まぁ、性格の矯正をリリアン嬢が受けている間に側室を娶ったくらいだ。
おとなしい顔をして結構女好きなんだろう。
「なんだか、養ってあげているだけな気がしてきましたわ」
「……言うな。まぁ、不満があって侍女や使用人を抱き込んで反乱を起こされるよりはマシだ」
「そう、ですわね……」
「それより、もう夏の離宮だ。
ジュリア。ロード王子と侍女の仲なんて比べ物にならないくらい愛してやるから、覚悟しておいてね」
ジュリアの顔が真っ赤になったので、私は満足してジュリアを夏の離宮へ押し込んだ。




