本気のプロポーズ
それからのロングアイランドはとても慌ただしくなりました。
突然の譲位に、法改正。
王族や宰相と言った主要メンバーは、毎日夜遅くまで話し合いをしているようです。
国民も国民で、これまでの多夫多妻から一夫一妻制に変わるので、貴族の方々は側室のこれからの生活の補助を、一般の方は誰を伴侶にしてそれ以外の方をどうするか、といった問題に追われているようです。
もはや、食物の成長がどうとかいう問題ではなくなっています。
邪魔になってもいけないので、とノア様と帰国しようと致しましたが、ヘンリー国王に強く引き止められました。
「どうか、新しい法の叩き台を作るのに手を貸していただきたい」
「わかりました。これで、貸し2つですよ」
ノア様はため息をついて、でもやっぱりヘンリー国王がちゃんと国を治めていけるか心配だったようで、協力されることにしたようです。
ノア様の言う通り、これで貸し2つ。
外交において、貸しがあることは、今後何かあった際にとても有利に話を運べます。
予定より1週間長く滞在して、ようやく新法の形が出来上がってまいりました。
ノア様が付いているのですもの。
適当なものにはならなかったはずですわ。
とりあえずヘンリー国王の即位式に参列してから帰ることにします。
司祭や上流貴族立ち会いのもと、前国王が頭上に戴いていた冠が、ヘンリー国王の頭に乗せられます。
「新法は既に出来上がっているので、近々皆に発表するつもりだ。
まだまだ若輩者の私だが、父上を支えてくれたように、私のことも支えてくれると嬉しい」
広場から大きな拍手が沸き起こります。
「この度は、トリス王国の王太子夫妻に大変助けられた。今一度、王太子と王太子妃からお言葉を頂こう」
私とノア様がバルコニーへ出ると、大きな拍手が沸き起こりました。
一夫一妻制になったことで、恨んでらっしゃる方もいらっしゃると思いますが、これは外交の一環。
ノア様が挨拶をして、続いて私が挨拶をします。
「ティレーズ、例の物を」
ティレーズが取り出したのは籠に一杯の花びら。
ええそうです。
建国記念の日にやった、例のアレです。
花びらに魔法を乗せて、蝶の姿にすると、一斉に飛ばしました。
「今飛ばした蝶は、国内全土に飛び散り、蝶が降り立った土地一帯に精霊の祝福が与えられるよう魔力を込めました。
後は、皆さんで土地の管理をしっかりとしてくださる事をねがいます」
一段と大きな、割れんばかりの喝采が広場を包みました。
これで、貸し3つです。うふふ。
即位式が終わり、ノア様とお茶を飲んでいると、ヘンリー国王が難しい顔をしてやって参りました。
「ヘンリー陛下?どうなさったのです?」
「ジュリア様。どうか、私と結婚して頂けないでしょうか。
これからの我が国には、ジュリア様のような王妃が必要なのです」
「そのようなことはありません。きっと、王妃様に相応しい方が見つかりますわ」
「ヘンリー陛下?我が国の将来の王妃を奪うということがどういう事か、わかってて仰るか」
「もちろん、見返りもなしにというわけではありません。我が国の国土の半分を差し上げます」
ノア様のこめかみに青筋が………
「我が妻を国土と引き替えにするというのか。
ジュリアは、他の何にも代えがたい存在。
何を差し出されても譲るわけにはいきません。
それに、我が国が既に貴国に貸し3つあることをお忘れになったわけではあるまい?」
「それは………確かに仰る通りです。
しかし私には、公私ともに支えてくれるジュリア様のような伴侶がどうしても必要なのです」
「ジュリアは渡さない。伴侶を探すなら、お見合いパーティーでも開いたらいかがですか?
素敵な令嬢と巡り会えるかもしれませんよ。
ああ、ジュリアには縁結びの力があると噂されていますし、ここでお茶をご一緒しましょうか。
我が国でもジュリアのお茶会はとても人気なのですよ?」
「やはり、どうしても無理でしょうか」
「そちらが強引な手を使うなら、我が国はいつでも開戦する準備はできていますよ」
「いえ、そんな!恩こそあれ、貴国と戦争など、間違っても致しません」
「ならば、ジュリアの事は諦めてもらおう。
私達は明日には出立しますが、貸し3つは、いつか返していただきますので、そのおつもりで」
「承知いたしました。せっかくのお茶の時間を邪魔してしまい、申し訳なかった」
ヘンリー国王は、肩を落として退室致しました。
「やれやれ。私の妻はどうにも人気がありすぎて困る」
「また、そんなこと仰って。私の人気というより、精霊の祝福と天使様の加護が目当てなだけですわ」
だって、モブの私ですよ?
まさか、ノア様以外の王子……ああ、もう国王ですね。とにかく、二人の王族からプロポーズされるなんて、普通ならありえません。
ヒロインならともかく、私、モブですから!
「ジュリアのそんな謙虚なところも大好きだよ」
ノア様は私のつむじにキスを落として、微笑みました。
「早いうちにジュリアを捕まえておいてよかった」
「あら、私がノア様を捕まえたのかもしれませんよ?」
何しろ、私の中でダントツイチ推しキャラのノア様ですから。
「どちらでもいいさ。君が私のものであることに変わりはない。
今回はとんでもない国外公務になったな。
帰国したら夏の離宮で少しのんびりしようか」
「公務は大丈夫でしょうか」
「父上も母上もティーダもいる。なんとか回せるさ」
ノア様は気楽に仰って、私を抱き寄せました。
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