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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第五章 トリス王国建国記念日と新たな恋の始まり
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会談

翌日の深夜、ミモザ国王より書簡が紙鷹で届きました。

私の紙鷹ですと、届くまで半日。

普通の紙鷹で1日。


ミモザ国王が急いで書簡を送ってきたことがわかります。


実は、今朝方ミモザ国王より、リリアン嬢が騎士と共に姿を消したので、充分に警戒を、という手紙も届いていたのですが、おそらくトリスの国境ギリギリまで転移で来て、トリスに入国するとともにまた転移して来たであろうお二人の早さには間にあわなかったのです。

ミモザ国王が急いでくれたことはわかりますが、全てが遅すぎました。


陛下の話によると、今すぐにでもトリスへ向かい、今後のことを話し合わせて欲しい、としたためられていたそうです。


ノア様は熱こそ出しましたが、抗生物質のおかげで感染症にもかからず、今朝からは体を起こしています。



「父上。私も、会談に出席させてください」


「お義父様。出来ましたら、私も」



「うむ。本来であれば国王同士で話すことだが、此度狙われたのはジュリアとノア。次期国王とその妻だ。

お前たちの意見も取り入れ、その上で落とし所を決めよう。

それに、ジュリアには事件当時を再現魔法で見せてもらう必要がある。

君なら、再現魔法も使えるのだろう?」


「はい。出席の許可、ありがとうございます」



再現魔法とは、五感で感じたことを、スクリーンに、この世界にはスクリーンがないので白い壁ですが、映画のように映し出す魔法です。

難易度の高い魔法なので、使える人間は然程多くありません。


この魔法があれば、犯罪や事故が起こったとき、速やかに原因や成り行きを知ることができる便利な魔法なのです。

要は、監視カメラを見るようなものです。



馬車ではなく、早馬を飛ばしてきたのでしょう。

ミモザ国王は数人の側近とバロン様を連れただけで、1週間後にはトリス入りしました。

通常の半分の日程で来られたことからも、事態を重く見ていることがわかります。


バロン様を連れてこられたのは……おそらく、最悪の場合に国王かバロン様、どちらかの命を差し出すつもりなのではないでしょうか。

我が国だけでなく、ミモザも戦は避けたいのです。

民や国のことはもちろんですが、大国であるトリスが敵に回れば、勝ち目はないのですから。



滅多に使われることのない謁見室で、陛下とノア様と私、それにミモザ国王とバロン殿下がテーブルにつきます。



「ようこそ参られた。まずは、事件のあらましを皆で確認しようと思う」



会談の主導権は、当然ながら陛下にあります。


部屋の明かりが落とされ、カーテンが閉められ、

私たちは正面の白い壁に向かいました。



「『彼のときのありのままの記憶を今ここに』」



私の再現魔法で、壁にあの時のことが映し出されます。


明らかに正気を失っているリリアン様とイザーク様。

私を攻撃するリリアン様。

駆けつけたノア様に歩み寄るリリアン様を斬りつけるイザーク様。

そして、ノア様とイザーク様の闘い。


イザーク様が永遠の牢獄に閉じ込められたところで、私は再現魔法を解除しました。



「見ての通り、リリアンは王太子妃を、騎士は王太子の命を狙っていた。

これは、あなた方の本意ではない、と考えてもよろしいか?」


「もちろんでございます。間にあわなかったとはいえ、危機を知らせる書簡も送っています。

それに、この二人はいつからかわかりませぬが、正気を失っていました。

私どもは、ミモザは、トリス王国に楯突くつもりも、害をなすつもりもありませぬ。

どうかこれだけは信じていただきたい」


「我が国と戦になれば」



ビクッと国王とバロン様が震えます。



「ロングアイランド国も手を貸すと言って下さっている。カルーア国がどちらへつくかは……」



陛下は口を噤みましたが、二大大国を敵に回そうなどとは思わないでしょう。

そうなれば実質、ミモザは孤立します。



「どうか!どうか、戦にだけはしないで頂きたい。もし償いが必要ならば、私の首を差し出します」


「その言葉、もはや取り消しは聞きませぬぞ」


「承知の上でございます」



陛下は厳しい顔でミモザ国王とバロン王太子を見つめると、1つ咳払いをした。



「今日のところは、ここまでと致しましょう。

あなた方も着いたばかりでお疲れのはず。

こちらも、少し話し合いが必要だ」


「かしこまりました。お気遣いありがとうございます」


「申し訳ないが、王城にあなた方を泊めるわけにはいかぬ。まだまだあなた方を敵視している使用人も多い。

ここから然程離れていない場所に離宮がある。

信頼できる者たちを付けるので、そこに泊まっていただきたい」


「重ね重ね、御礼申し上げます」



お二人と側近が離宮へ行くと、陛下は王妃様も呼び、4人で話し合いを始めました。



「ノア。どう見た?」


「ミモザ国王の言う通り、ミモザに敵対する意思はないでしょう。首を差し出す覚悟も本物かと」


「そうなると、どこを落とし所にするかだな。

ここで何もせず許してしまえば、周辺他国からも舐められ、同じようなことが起きる可能性もある。その時に、今回のように怪我だけで済むとも限らない」


「では……ミモザ国王の申し入れを受けて、首を?」


「それは、悪手です」



王妃様がきっぱりとノア様の言葉を却下しました。



「現国王の首にしろ、王太子の首にしろ、差し出させれば、国民や貴族、王族の間で我が国への怨嗟が残ります。

たとえ、こちらに全く非がなくとも」


「私も王妃様の意見に賛成です」


「では、どこを落とし所とする?」



暫く沈黙が流れ、私が口を開きました。



「ミモザを、我が国の従属国とするのは如何でしょうか。

我が国の支配下にありながら、国として残るので、ミモザの国民も受け入れやすいでしょう。

それに、万が一、カルーアが敵対した場合、挟み撃ちにできますし、カルーアもこちらへ戦を仕掛けては来ないでしょう」


「なるほど、従属国か。面白い意見だな。

その場合、主な統治は現王族に任せ、司法、立法などは我が国のものを優先させる、ということで良いのか?」


「そうですね。あとは従属国にするに当たっての条約を結ぶ上で、約束を違えた場合や反乱を起こした場合には即座に王族を根絶やす、という文言を入れておけば、身動きは取れないでしょう」


「血も流れず、侮られることもない。良い意見なのでないでしょうか」



王妃様もホッとしたようにおっしゃいます。



「念の為、向こうの王族を一人人質としておくか」


「あまり気は進みませんが……」


「王族を根絶やしにするというのが脅しではないという意思を明確に示さなければならないからな」



私から言い出したことではありますが、何となく戦国時代の日本みたいになってきましたわね。

でも、無血で事態を収拾できるのなら、それに超したことはありません。





翌日、まだ青い顔をしたミモザ国王とバロン王太子が席につくと、早速陛下はミモザを従属国にする旨を伝えました。




「それで………よろしいのですか?」


「うむ。我が妃と王太子妃に感謝することだな。

無血での解決は二人の強い意志によるものだ。

この後、詳しく条約内容を詰めていくが、主には主権はこちらに、現地の統治はそちらに任せることになる。

ただし、条約を違えた場合には国を滅ぼす。

その為、王族を1人こちらへ渡していただきたい」


「かしこまりました。ここにいるバロンにも、第二子のナードにも貴国から嫁いでこられる花嫁修業中の婚約者がいますが、末の息子のロードには正妻がおりませんので……あ、いえリリアンがそうだったのですが、今は側室のみなので、ロードを差し出します」


「側室は連れてこないように」


「かしこまりました」


「それと、こちらを」



お二人の前に、指輪を2つ差し出します。

これ、私とノア様で作ったものなのですが、国土防衛結界と同じで、反乱の意思を感知し次第、こちらに伝わるようになっています。

しかも、すごく頑張って、反乱の意思の具体的内容まで感知出来るようにしました。

新たな魔法で、「拘束の指輪」と名付けられています。

現国王が亡くなれば、次の王太子に渡さなければなりません。

しかも、死ぬまで外れません。


それをしっかり説明して、お二人に身につけて頂きました。


お二人の帰還を心配して待っておられる方が沢山いらっしゃるでしょうから、条約をまとめて、署名すると、そのまま帰っていただきました。

別に邪魔だったからではありませんよ?

ええ。


ちなみに、イザークの牢獄は地下の最下層に収めて入り口を厳重に施錠し、土壁で塗り固めました。

永遠の牢獄は、言葉の通り永遠に閉じ込めておくので、ノア様が亡くなったとしても解けることはありません。

ただ、念には念を入れ、です、


リリアンの遺体は、地下に安置していましたが、気がつけば無くなっていました。

マリアンヌ様が死亡を確認したので、亡くなったことは間違いありません。

となれば、おそらく元々は転移者だったので、こちらでの姿を保っていられなくなって消失したのでしょう。


リリアンの遺体が無くなったことは、発見者には固く口止めし、埋葬した、ということにしました。


やがてロード様が単身で人質として来られ、ロード様は冬の離宮に事実上軟禁されました。



こうして、長かったヒロインとの確執もようやく終わりを迎えたのです。


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