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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第五章 トリス王国建国記念日と新たな恋の始まり
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ご利益様

初回の恋愛相談お茶会から1ヶ月後。

どうやら皆様うまくいったらしいという報告を受けました。

素人のアドバイスでしたし、どうなるか不安でしたが、うまくいって良かったですわ。


噂が噂を呼び、御令嬢方からのお願いが多く、その後も、一月に一度はお茶会を開催することになりました。

悩んでいる御令嬢、多いのですね。


そんな中、今日はこの国には滅多に訪れない台風です。

数年に一度しか訪れないので、使用人達も城のあちこちを補強したり、窓を板で打ち付けたりと忙しそうです。

国民の皆さんには、絶対に外に出ないよう、陛下からお達しがあります。

台風の怖さを知らず、外へ出て川の氾濫に巻き込まれたり、飛んできた物が当たって怪我をしたりする方が、毎回いらっしゃるそうです。


お城の侍女たちは怯えてしまって仕事にならないので、台風の日は公務も少なく、早めに晩餐を終えて眠るというのが通例のようです。


台風のあとは田畑がぐしゃぐしゃになってしまって、野菜の流通が滞るのだそうですが、皆さん、今年はあまり心配していないようです。

私には天使アリエル様の、五穀豊穣の加護があるから、と。


それにしても、加護は私に与えられているわけで、国に与えられているわけではありません。

なので、私が国の恵みを守っていただけるよう祈らなければ意味はないのです。


そういう訳で、大きなお腹を抱えて、王城にある礼拝堂で、祈りを捧げます。

元々、毎年何回も台風が来る日本育ちなので、台風の夜も別に怖くはありません。

夜の間の何時間か祈りを捧げて、それから心配して止めに来たノア様と一緒にベッドルームへ戻り、ゆっくり眠りました。



翌朝、台風が去ってからは城外公務です。

国のあちこちを巡り、被害が及んでいないか視察するのです。

植物は私でも元気にすることができますが、建物の修繕は無理なので、報告書を上げて国から修繕の補助金が出るように致します。


王族の馬車から降りて、歩いて視察をしていると、あちこちから囁き声が聞こえます。



「王太子妃様だ」



ええ、これは間違いないですわね。

私は王太子妃です。

でも。



「ご利益様よ」



これは意味不明です。

なんですか?ご利益様って。



「王太子妃様。いつもありがとうございます」



平民の方が地面に膝をついて声をかけてきてくださいます。



「こちらこそ、いつも頑張ってくれて感謝しています」


「あっ、あのっ、畏れ多いことですが、スカートの裾で構わないので少しだけ触れさせて頂けませんか?」


平民の少女が頭を地面につけたまま願い出ました。



「無礼であるぞ」



護衛騎士の方が遠ざけようと致しますが、別にドレスの裾に少し触るくらい、私は構いません。



「ありがとう。でも私は大丈夫」



護衛騎士の方を下がらせて、少女に歩み寄ります。



「ドレスの裾でいいの?触れられるのは構わないけれど、理由を聞かせていただける?」


「王太子妃様には縁結びのお力がありますので、少しでもあやかりたいと……」



え?

私は確かに王太子妃ではあるけれど、ただのモブですし、頂いている天使の加護を含めても、縁結びの力なんてありませんよ?



「貴族の間で広まった噂が、平民にまで広がっているようですわ」



そばに控えてくれていたティレーズが教えてくれます。

なるほど、そういうことでしたか。



「私にはそのような大それた力はありませんが、あなたがそれで満足するのなら、触っても構いませんよ」


「ありがとうございます!」



少女は恐る恐るドレスの裾に触れて、パッと手を引きました。触れた片手をもう片手で大事そうに握っています。



「あなたにいい縁が訪れますように」



にっこり笑って言うと、少女は目に涙をためて何度も頭を下げました。



ちなみに同じことが、1日のうちに何度もありました。

私にそんな力はないのに、いいのでしょうか。



王城へ戻ると、護衛騎士から話を聞いたノア様が笑います。



「本人の気持ちの問題も大きいからね。

君に触れたことで、大丈夫と暗示をかけられれば、上手くいくかもしれないね。

それにしても、平民から触れたいと願われる王族なんて、君くらいなものだよ」

「あまり王族らしくなかったのでしょうか」



何しろ、元がモブですから。



「いや。君はそれだけ国民に愛されているという証拠だよ。

王族は畏怖される立場でなければいけないが、あまり国民から遠ざかりすぎるのも良くない。

とても難しい問題だね」


「私ももっと、王妃様やノア様を見て勉強いたしますわ」


「相変わらず勉強熱心だね。でも、お腹の子に障らないよう、程々にね?」


「はい」



最近ではお腹の子が蹴ることもあり、ノア様はとても喜んでいます。

元気に産んであげなければいけませんね。



「ノア様はやはり、男の子がほしいですか?」


「いや、私は女の子でも構わないよ。後継問題なら、男の子ができるまで頑張ってもいいし、最悪ティーダがいるからね」



頑張るって、何を頑張るというのでしょう。

顔が熱くなります。

私が妊娠出産を頑張るというのなら話はわかりますが、ノア様が頑張るのは、その前の話ですわよね?

妊娠してからすっかり忘れていましたけど、そうでした。

ノア様はエッチな方でした……


ご機嫌なノア様は私のお腹を撫でて、お腹の子に声をかけると、ソファーで私を横抱きにしました。



「私は本当に、君と子供さえ無事なら男女どちらでもいいんだ」


「ノア様?万が一の場合、母体と赤ちゃんのどちらを優先するか決めなければいけなくなります。その場合は、赤ちゃんを優先してくださいね」


「だめだ!私はもしもの場合には君を優先する。君は、私にとって唯一の存在なのだから」


「ありがとうございます。そんな事態にならないよう、祈りましょう。幸い私には天使ジブリール様の安産の加護もありますから」


「そうだな。今はとにかく、無理はしないことだ」


「はい」



城外公務の疲れが出たのでしょうか。

私は知らない間に、ノア様の胸の中で眠ってしまっていました。

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