特別なお茶会
主人公目線に戻ります
マリアンヌ様が上手くいかれたお茶会の帰り道、公務を終えたらしいノア様と行き会い二人で部屋へ戻ることにしました。
マリアンヌ様の事を話すと、ノア様はとても驚いていました。
そんな話をしていると。
「ノア殿下、ジュリア様」
後ろから声をかけられて、振り返るとナード王子がいらっしゃいました。
「どうしました?ナード殿下」
「あの。このハンカチの持ち主に心当たりはないでしょうか」
ハンカチにはハイネケン侯爵家の家紋と、若々しい刺繍。
おそらく、イザベル様のものでしょう。
その事をナード王子に伝えると、ナード王子は顔を赤くして言いました。
「あの。私はどうやらこのハンカチの持ち主に恋をしたようなのです。
厚かましいお願いですが、話をする機会を作って下さいませんか?」
正直、イザベル様とは色々ありましたし、気が進みませんが、ナード王子の気持ちもわかります。
「分かりました。明日のお茶会にお誘いしましょう」
「ありがとうございます!」
ナード王子は嬉しそうに微笑むと、立ち去って行かれました。
翌日、3時のお茶会。
私と王妃様、それにナード王子が待っていると、落ち着かない様子のイザベル様がいらっしゃいました。
改めてナード王子とイザベル様の自己紹介を終えて、和やかにお茶会は進みます。
ナード王子は相変わらず積極的で、イザベル様への好意を隠そうともいたしません。
あからさまな好意を向けられて、イザベル様も満更でもないご様子。
気がつくと二人の世界に入っていました。
「ねぇ、ジュリアちゃん。これって……」
「続編ヒロインが本編ルートに入った、といったところですわね」
まあ、元々押していたのはナード様ですけど。
お茶会は終始和やかに進み、その日はそれでお開きになりました。
翌日はミモザ国王とナード王子の帰国する日です。
ナード王子は、見送りに来ていたイザベル様の手を取り、跪きました。
「イザベル嬢。すぐにとは言わない。だが、私の妻になってくれないだろうか」
はい、突然のプロポーズキター!
「謹んでお受けいたしますわ」
「では、結婚申込書は国に帰ったらすぐにお送り致します」
「はい。お待ちしております」
イザベル嬢の髪色のようなピンクの雰囲気を辺りに撒き散らしながら、ナード王子は帰っていきました。
イザベル嬢がナード王子と婚約されて、花嫁修業の為にミモザへ向かったのはそれからまもなく。
その時の私は知らなかったのです。
私のお茶会に呼ばれると、婚期が訪れる、という噂が貴族の間で広まっていたことを。
「ジュリア。最近、君が主催するお茶会に出たいと言う令嬢が多いのは知っているか?」
「私のお茶会に?」
初耳です。
私は、王妃様とのお茶会が多く、あまり他の令嬢とはお茶会をしていないのです。
本来ならば、王太子妃として貴族たちとの絆を深めるため、もっとお茶会を開催しなければならないのですが。
「でも、なぜ私のお茶会に?
私を足がかりに、ノア様に今のうちから取り入ろうとしているのでしょうか」
「いや。君に気にいられたからと言って私の評価が変わるわけではないのは皆知っている。理由は他にあるみたいだ」
「理由とは?」
「君のお茶会に出ると、婚期が訪れる。または、恋が実ると」
そんな馬鹿な。
私にはそのような力はありませんし、いつの間にそんなジンクスができたのでしょう。
「まず、ティレーズが母上のお茶会に呼ばれて、すぐに結婚しただろう?次にマリアンヌ嬢、そしてイザベル嬢。
その他にも、君が主催したお茶会に出て、すぐに見合いや結婚が決まったという令嬢が多いらしい」
ティレーズとマリアンヌ様、イザベル様のことはともかく、他の令嬢も私の知らないところで結ばれていたのですね。
いえ。
結婚や婚約されたことは情報として入っていましたが、まさか私のお茶会に喚ばれたことが理由だったとは。
道理で、先日の建国記念パーティーで私にお礼を言う令嬢が多かったわけですわ。
なんのお礼だったのか疑問だったのですが、これでスッキリしました。
「ティレーズとマリアンヌ嬢はともかく、他の方々には特に何もアドバイスなどはしていないのですけれど」
「ふむ。どうやら令嬢の間では天使の加護の力ではないかと噂されているようだが、君のお茶会に喚ばれたい令嬢は、とにかく多いらしい」
「私には何もできませんけれど、そんなに望まれているのなら、もう少しお茶会を開催したほうが良さそうですね」
モブの私がお茶会を開いたからと言って、なぜ恋や縁談がうまく行くのかは謎です。
今でこそノア様の妻ですが、元々はモブですよ?
1人学園の裏庭でランチをしていたようなモブですよ?
大切なことなので二度言いました。
「こういう言い方をするとあざとくなるが、貴族に恩を売っておくのも悪くない。まぁ、お茶会を開いて令嬢を喚んでやるといい。君にとっても、いい気分転換になるだろう?」
「そうですわね。これも公務の一環ですし、お茶会は楽しいですから」
「本当に、私のジュリアは大したものだな」
「偶然が重なっただけだと思うのですが」
「偶然も何度も重なれば必然になる。君のお茶会は特別なんだよ」
ノア様に優しく頭を撫でられます。
とても気持ちがいいです。
私はご機嫌で、次のお茶会をいつにするか、ティレーズとスケジュールを相談しなければ、と考えていました。




