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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第五章 トリス王国建国記念日と新たな恋の始まり
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ヒロインのその後

3時です。

お茶会の時間です。


でも今日はいつもとは違います。

特別ゲストのナード殿下をお呼びしてますから。


いつもの王妃様の自室で、居心地の悪そうなナード殿下。

ヒロインのリリアン様に夢中だった姿が印象的だったせいか、見ていてちょっと面白いです。



「この度は王妃様のお茶会にお誘い頂き、誠にありがとうございます」


「あらあら。そんなに硬くならないで?

ざっくばらんにお話しましょうよ」


「はぁ……」


「まずはマリアンヌちゃんをご紹介しないとね。

こちらはハンバード侯爵家令嬢、マリアンヌ・ハンバード嬢よ」


「ハンバード侯爵家長女のマリアンヌ・ハンバードと申します。よろしくお願い致しますわ」



あら?

マリアンヌ様はナード様推しだったとお聞きしていましたが、思いの外、反応が薄いですわね。

王妃様も小首を傾げていらっしゃいます。

なんて可愛らしいんでしょう!


あ、いえ。

それはともかく、マリアンヌ様のご紹介も終わりましたので、最初は世間話から入ります。


ミモザは相変わらず平和で良い国のようですが、近頃は平民の間で格差が大きくなっていて、貧しい家の子が捨てられたりしているようです。

国としても孤児院の設立など対策は練っているようですが、スラムっぽい地域も出来ていて、なかなか追いつかないのが現状のご様子。



「ところで、リリアン様のことですけれど」



王妃様がズバっと切り込みました。

ナード王子にも緊張が走ります。

何しろ、他国の王太子妃の命を狙ったのですから、本来ならば同盟をやめると言われても仕方ないほどなのです。


私も元々モブですし、この世界での命は軽いはずです。

あの時ノア様が来てくださらなかったら、と思うと怖くなります。



「その後、いかがお過ごしですの?ミモザ国の王族には入るのでしょう?」


「彼女……リリアン嬢には、エリザ・スパルタン夫人という国で一番の講師がついて勉強をしていたのですが……」


「エリザ先生が?懐かしいですわ、私も学園入学までの6年間、エリザ先生に教わりましたの。

エリザ先生なら、安心ですわね」



懐かしいですわ。

エリザ先生は名前の通り、とてもスパルタ教育でしたが、基礎の基礎から丁寧に教えてくださり、最後の授業の時には、『あなたはもう、どこに嫁いでも恥ずかしくない令嬢です』という優しいお言葉まで頂きました。



「私たちもそう思っていたのですが、始めて3ヶ月で、スパルタン夫人から上申がありまして、基礎から叩き込むには最低でも10年はかかる、と」


「えっ、10年?」



普通、一番厳しい王太子妃教育でも、1年で終了します。

滅多にないことですが、稀に爵位の低い方が嫁ぐ場合でも、長くて3年程度です。

ナード王子の言葉は続きます。



「それどころか、勉強以前に性格の矯正が必要だと。

国王である父上や王妃である母上にも反抗的な態度を取り、

どうも、ノイローゼ気味なのか、自分はヒロインなのだから、さっさと結婚できるはず、とか、こんなルートがあるなんて聞いてない、とか意味不明なことを口走っているようで……」



『セブプリ』のゲームからは明らかに話が変わっているというのに、まだゲーム通りに進むはずだと思っているのでしょうか。

王妃様もマリアンヌ様も戸惑い気味です。


それに、性格の『矯正』。

前世であれば、パワハラ、いえ、年齢で言えば虐待でしょうか、それに当たる行為です。


そして私は知っているのです。

ヒロインが『性格の矯正』を受けるのは、バッドエンドのみであるということを。

『性格の矯正』の方法は、はっきり言ってしまえば洗脳です。

毎日、侍女とたった二人の部屋で食事も睡眠もまともに与えられない中、「理想の令嬢」という本を読み聞かされ、読みあげ続けるのです。

そして、自分の何が悪いのかを言い、それに対してひどい叱責を受けるのです。

逆らおうにも、手枷に足枷をされ、無表情の侍女一人のみが、反抗的な態度を冷たい目で眺めて、また一から「理想の令嬢」を読み上げさせるのです。

朝も夜もわからない中、洗脳が終わるまで続きます。

そして最後には、ヒロインは「はい」「仰る通りでございます」「かしこまりました」「ありがとうございます」「申し訳ございません」しか言えなくなってしまう、恐ろしいルートなのです。



「ちなみに……結婚なさる相手は?」


「少しでも王位継承権の低い者が良いとスパルタン夫人からアドバイスを受けまして、ロードに嫁ぐことになりました」



ロード様のバッドエンドルートは、また少し違います。

性格の矯正は王都から遠く離れた修道院で行われ、そこでは料理の支度の手伝いはもちろん、掃除も洗濯もすべて自分でやらなければなりません。

一修道女として扱われるのです。

そして、一日のお勤めの間には、先程と同じように「理想の令嬢」を何度も何度も読み上げさせられます。

夜、就寝の時間には、これも先程と同じように、自分の悪い点をあげ、徹底的に叱責を受け、寝る間もなく朝のお勤めに入るのです。

しかも、ロード様はその間にお似合いの令嬢を側室にされ、洗脳後のヒロインが戻っても愛されることはもちろん、話しかけられることもないのです。

なんて怖いルートなんでしょう。



「ちなみに、魔力だけは強いので、魔法不可結界が張られた修道院で性格の矯正は行われていますので、二度とこちらにご迷惑をおかけすることはありません」



そうでしょうね。

そうでしょうとも。


でも、イザーク様ルートじゃなくて良かったですわね。

イザーク様のバッドエンドルートだと、ヒロインは、ノイローゼになったイザーク様に切り殺されますからね。



「早く、矯正が終わるといいですわね」



私達はやや青ざめた顔で言いました。



「ちなみに、ナード殿下には、もう決まった方が?」


「今、縁談の話が大量に来ていて、面倒くさいので、パーティーで息の合う令嬢と結婚しようかと思っております。

どうせ、誰と結婚するにせよ政略結婚になりますから、少しでも性格の合う方を選ぼう、と」


「それがよろしいわ。過去の恋愛などスッパリ忘れて新しい出会いを求めたほうがいいですわよ」



王妃様がおっしゃいます。

チラリ、とマリアンヌ様を見られましたが、やはりマリアンヌ様の表情に変化はありません。


………マリアンヌ様?



お茶会が終わり、ナード王子が出ていくと、王妃様が身を乗り出しました。



「さっきのって、もしかしてバッドエンド?」


「はい。ロードルートのバッドエンドです」


「私、バッドエンド行ったことがないから分からないのだけど、性格の矯正って、つまり洗脳?」



私は王妃様とマリアンヌ様にバッドエンドについて掻い摘んで説明します。

ちなみに私、バッドエンドクリア後は怖くて眠れなくなりました。



「ナード王子にもいい人が見つかるかしらね」



チラッとマリアンヌ様を見る王妃様。


マリアンヌ様は困ったように笑いました。



「私、もうナード王子とどうにかなろうなんて、これっぽっちも思っていませんの。今は、他に気になる方がいますし」


「ええ!」



私と王妃様の声が見事にハモりました。

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