建国記念パーティー
宝探しゲームは、結局、町医者をされている方が優勝しました。
私と王妃様の刺繍が入ったハンカチは「家宝にする」そうです。
その他にも、上位5名にはサプライズで私手作りのお菓子を差し上げました。
「食べるのがもったいないので家宝にします」
いえ、カビが生えますからね?
食べてください。
日が暮れてからは、いよいよ建国記念パーティーです。
ヒールの高い靴は履けませんので、いつも以上にノア様との身長差を感じます。
「ジュリア。決して無理はしないこと。
気分が悪くなったら、すぐに奥で休むこと」
ノア様が念を押します。
これを言われるのは今日だけでもう5度目です。
心配はありがたいのですが、少ししつこいです。
王族入場のファンファーレと共に、陛下と王妃様、その後にノア様と私、ティーダ様と続いて入場します。
陛下の挨拶が済むと、順番に来賓の方々が挨拶に訪れます。
メインはやはり私のことが多く、妊娠についてはもちろんの事、天使の加護についても話が及びます。
あまりにも皆さん同じことを聞いてきますので、最後はテンプレートを読み上げてるだけみたいになってしまいました。
次に挨拶に来られた方をみて、私は目を丸くしました。
「ミモザ国王陛下、それにナード殿下。ご無沙汰しておりますわ」
「今日はバロン殿下はご一緒ではないのですか」
ノア様の質問に、陛下が答えます。
「ご無沙汰しております。その節は大変ご迷惑をおかけ致しました。
本日はバロンにどうしても外せない用事がありましたので、ナードを伴って参りました」
「そうでしたか。今回の滞在はゆっくりされるのでしょう?」
「はい。3日程滞在する予定です」
ナード様は、前に比べて少し精悍な顔つきになりしたわね。
何かあったのでしょうか。
それに、リリアン様のその後も気になります。
でも、この場で聞くようなことではないので、その話題には触れません。
あくまでも、今は。
お陰様で悪阻の症状が出ることも無く、私とノア様はダンスをすることにしました。
「お腹が出ているから、踊りにくいですわね」
「大丈夫。ちゃんと私がリードするよ」
ノア様素敵すぎます。
いつもに比べて見上げるような格好になってしまいますが、私を見下ろすノア様から、色気がダダ漏れてます。
「そんな風に見つめないで。今すぐキスしたくなってしまう」
ノア様こそ、その色気大放出やめてください。
鼻血が出ます。
きっと、出血多量で死にます。
ダンスを終えると流石に少し疲れが出てしまい、私は陛下や王妃様に無礼を侘びて、自室で休むことにしました。
トントン、とドアがノックされたので、ノア様かと思い返事をすると、なんと王妃様がいらっしゃいました。
「私はちょっとジュリアちゃんに話があるの。
すぐに済むし、無理もさせないから、あなた達は外で待っていなさい」
王妃様に言われて、王妃様付きの侍女とティレーズが部屋の外へ出ます。
「ねぇねぇ。ヒロインのリリアン様はどうなさっているのかしら。今日も来られなかったでしょう?まあ、どの面下げて来るんだって話ですけど」
「……ミモザ王家にがっつり囲まれてる筈ですから、花嫁教育をしているのではないかと思うのですが……どなたに嫁ぐんでしょうね」
王家に取り込むと言う意味では、おそらく非嫡出子のイザーク様は除外されるでしょう。
リリアン様の実力や評価を考えると、王太子であるバロン様というのも考えにくいです。
「お義母様、明日マリアンヌ様もお呼びして、お茶会を致しましょう。
そして、そこにナード様もご招待いたしませんか?」
「あら!いい考えね。では、明日の3時のティータイムにご招待しましょう。
マリアンヌちゃんとナード殿下には私から伝えておきますわ」
王妃様は満足された様子で、ニコニコと部屋を出ていきました。
明日のお茶会、楽しみですわね。
王妃様と入れ違いに、ノア様がいらっしゃいます。
「何も食べていないだろう?コック長のエリクがジュリア用に料理を作ってくれたから、少しだけでも食べるといい」
「まぁ!ありがとうございます。後でエリクにもお礼をしないといけませんわね。
早速頂きますわ。一人で食べられますし、ティレーズも控えてくれていますので、ノア様は会場に戻ってくださいな」
「しかし……」
「王太子がいつまでもパーティー会場を留守にするなど、外聞がよくありません。
私の為にも、戻ってくださいませ」
いつまでも居座ろうとするノア様にしっかり釘を差す。
「わかった。何かあったらすぐに呼んでくれ」
ノア様はティレーズに声をかけると、またパーティー会場へ戻られました。
「珍しいですわね。奥様がノア様を遠ざけるなんて」
そうなんです。
本当はそばにいて欲しかったのですが、今夜のパーティーは規模も大きく、各国からの国王と王妃や王太子、主要貴族も招かれています。
妊娠中の妻に王太子がつきっきりで、外交も行わない、というわけにはいかないのです。
下手をしたら、他国に「次期国王はこんなものか」と舐められてしまいます。
それだけは、阻止しなければ。
そんなことを掻い摘んで説明すると、何故かティレーズがハンカチを目元に当てた。
「あの変わり者の奥様が………ご立派になられて」
ティレーズ、失礼ですよ?
私はエリクお手製の食事を終えて、ふぅ、と息をつきました。
「少し横になるわ。パーティーが終わる頃に起こして頂戴。
お客様のお見送りだけはしたいから」
「かしこまりました」
ベッドに横になるとほぼ同時に、私は眠りに落ちました。




