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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第四章 続編ルートと新しい力
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ノアとジュリアの賭け

主人公目線に戻ります

「ティレーズ達は、そろそろミモザを発った頃でしょうか」



ノア様と3時のお茶をしながら話します。



「そうだな。少し向こうでゆっくりするにしても、そろそろ出発した頃だろう」


「あの二人が上手くいってよかったですわ。

ティレーズは、私の都合で婚期を逃しそうなものでしたから」


「それを言うなら、マルコこそ完全に私の勝手で婚期を逃していたからな」



今頃、仲良く馬車に揺られているのでしょうか。

想像すると思わず笑みがこぼれます。

王族ではないので護衛はついていませんが、マルコは頭も良く、腕も立つので安心です。



「新婚旅行に行かせてあげられないのが申し訳ないですけれど」


「まぁ、短い期間だがこの旅を新婚旅行と考えてくれるといいがな」


「あの二人は仕事のことをよくわかっていますから、きっと私たちの気持ちを汲んでくれますわ」



ノア様は頷くと、ニヤリ、と笑いました。



「帰ってきてから、マルコのデレっぷりが見られると思うと楽しみだな」


「あら。マルコとティレーズですわよ?きっと表面上は何もかも今まで通りですわ」



いくら結婚したからと言っても、仕事には厳しいマルコと人前ではプライベートを感じさせないティレーズです。

おそらく、仕事中は今までと変わらないでしょう。

あ、もちろん、二人が過ごす夫婦の部屋は用意してあります。

ティレーズ達がトリスを発ってすぐに、準備いたしました。

荷物もすっかり移し替えてあります。



「ならば、賭けをしようか。

帰ってきてからあの二人が甘い雰囲気を出していたら私の勝ち。今まで通りならジュリアの勝ち」


「受けて立ちますわ。勝った方は負けた方に手作りの何かをプレゼントする、という事でどうでしょう」


「む。手作りか……いや、負ける気はしないからそれでいい。ジュリアはお菓子以外だぞ」


「分かりましたわ」



私だって負ける気は致しません。

ノア様は何を作ってくださるのでしょう。

今から楽しみです。



午後の公務を終えて、夕食を済ませると私は王妃様にお茶に誘われました。

人払いされた部屋で、王妃様がワクワクした顔で身を乗り出します。



「ノアと賭けをしたんですって?」



なぜ王妃様がその事を……

ああ、今は私に侍女長のマリアがついてくれていますが、昔は王妃様専属の侍女でしたから、きっとマリア経由で聞いたのですね。



「お義母様はどちらだと思います?」


「そうね。私もジュリアちゃんと同じで、あの二人は人前でそんな姿は見せないと思うわ。

ポアロとマリアの時もそうでしたもの」



そう言えば、マルコのご両親も職場結婚でしたわね。



「ノア様は何を作ってくださるのか、今から楽しみですわ」


「ふふふ。あの子、手先が不器用だから、絶対におかしな物を作るわよ」


「楽しみですわ」


「もし仮にジュリアちゃんが負けたら、何を作るの?」



そう言われて考えます。

お菓子は禁止ですから、それ以外になりますわね。

そうなると、必然的に作れるものも限られてきますが……



「刺繍入りのナイトガウンでも作りますわ」


「ああ、それなら簡単だし、使ってもらえて嬉しいものね」


「今からガウンの作り方を習っておいたほうがよろしいでしょうか」


「必要ないわよ。賭けはこちらの勝ちに決まってますもの」



その言葉に引っかかりを覚えます。



「お義母様?もしかして、お義母様たちも?」


「ええ。私とマークも賭けをしているわ。勝ったら、負けた方に命令できるという賭けを」


「お義母様。一体何を命令するつもりですの?」


「うふふ。便箋10枚以上の私への直筆のラブレター。マークは口下手だから、普段からあまり気持ちを口に出さないのよ。10枚なんて、書けるのかしらね。ふふっ」



困り果てる陛下の姿が目に浮かびます。

少しくらい、内緒でお手伝い致しましょうか。



「ジュリアちゃん、手伝っちゃだめよ?」



心を読まれました。

ごめんなさい、お義父様。頑張ってくださいね。


……………………………………………………………………………


トリスを発って1ヶ月後、マルコとティレーズが帰ってきました。



「長い休暇を頂き、ありがとうございました」


「いいのよ。楽しかった?」


「はい。おかげさまで」



そう言うティレーズの顔が、なんだかツヤツヤしている気がします。

メイド服の首元から、微かに所有痕も見えました。

マルコ。

意外と手が早いのね。


感心している私に、ティレーズは続けます。



「早速今日から仕事に戻りますわ。私が不在の間は、どなたが主にお世話を?」


「侍女長のマリアよ」


「侍女長みずから!?先にお礼に伺って、引き継ぎを済ませたらまた戻って参ります」



そういうと、さっさと部屋を出ていきました。


まもなく戻ってきたティレーズから書類の束を受け取ります。

1日で済ませればいい量なので、そう大して大変ではありません。

これも、妊婦である私に気を遣ってくださっているからです。



トントン、とノックの音がしてティレーズがドアを開けると、マルコが立っていました。

入室を許可すると、私の前に来て頭を下げます。



「この度は休暇を頂きありがとうございました。ジュリア様のご両親も、今回のジュリア様のご懐妊を大変喜んでおられ、お母上みずから縫った襁褓を送ると仰っていました。手紙も預かってまいりました。こちらでございます」



マルコから手紙を受け取ります。



「マルコ。いつの間にそのような話をしていたのですか?私は聞いておりませんが」



元ルクラシア家の侍女としてのプライドを傷つけられたようです。



「ティレーズが旅の準備をしている間に呼び止められてお話したのだ。君を蔑ろにしたわけじゃない」


「そうでしたか。失礼致しました」



やはり、二人は特に甘い空気も出さず、淡々としています。

このまま行けば、賭けは私と王妃様の勝ちですわね。



「それとティレーズ。今日も王妃様の3時のお茶会にジュリア様が呼ばれているので、そのつもりで」


「はい」



ええ。

淡々としすぎていて、なんだか二人の仲が心配になるくらいですわ。



「あなたたち、うまく行っているのよね?」


「え?はい。マルコには大切にされていますわ」


「そう。ならいいのだけれど」


「仕事に私情を挟むつもりは毛頭ございません」



二人の声がハモりました。

この二人、どこまでいってもブレませんわね。

賭けはともかく、少しくらいイチャイチャしている姿も見てみたいものですが。


マリアンヌ様も参加された3時のお茶会でそんな話を致しましたら、王妃様も、確かに面白みがないわね、と同意されます。



「ジュリアちゃん、ここにティレーズを呼んで、からかいましょうよ」


「それはいい考えですわ。私達の作戦で二人は結婚したようなものですし、惚気話の1つくらい吐かせないと」



マリアンヌ様も賛同されて、ティレーズが中に呼びれました。



「皆様。先だってはお力をお貸しいただき、ありがとうございました」


「いいのよ。それより、二人きりのときのマルコはどんな感じなの?」



ティレーズの頬がポポポっと赤くなります。

あら、可愛い。



「どんな、とおっしゃいましても……」


「頻繁に愛を囁いたりしますの?」


「スキンシップは多め?」


「ヤキモチを妬いたりしますの?」



畳み掛けるように私達に問い詰められて、ティレーズは完熟トマトのようになっています。



「その……仕事中とは全然違います。甘い言葉も沢山言いますし、ス、スキンシップも多いですし……」


「まあ!」


「あのマルコがねぇ」


「でも、マルコは元々ムッツリスケベですし」


「あ、あのっ、ここでの話は秘密にしてくださいませ。

二人で、仕事中は今まで通りに接すると決めておりますので」


「大丈夫よ。元々王妃様のお茶会での話は、専属の侍女にも漏らしませんからね」



マリアンヌ様がおっしゃいます。

確かに、転生者のお茶会である王妃様のお茶会は、当然のように話した内容は極秘です。



「早く子供の顔を見せてちょうだい」


「マルコなら、意外と早く子供の顔が見られるかもしれませんわね」


「ありがとう、ティレーズ。下がっていいわよ」



ティレーズが出ていくと、王妃様が私に大きく頷きました。



「賭けは、間違いなく私達の勝ちですわね」



私と王妃様はうふふ、と扇で口元を隠しました。

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