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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第四章 続編ルートと新しい力
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ティレーズの本気【後編】

マルコ目線です

この所、ティレーズがあまり元気がないな、と思っていたら、ノア様から縁談のことで悩んでいるらしいと聞いた。


ティレーズも適齢期ギリギリ。

親も焦っているのだろう。

しかし、ノア様の話を聞く限りでは、どの縁談も相手に難ありらしく、なぜティレーズほどの女性にその程度の男しか見つけられないのか、失礼ながらティレーズの両親の能力を疑ってしまう。



「お前、どうだ」



ノア様は私をティレーズの相手に推したいようだが、歳も離れているし、女性受けする見た目でもない。

私ではティレーズが可哀想だろう。


そんなことを思っていたから、自分はティレーズの相手から無意識に外して、いい相手がいないものか密かに探していた。


数日後。

いつも通りジュリア様の公務について引き継ぎを行っていると、いつもよりティレーズとの距離が少し近い気がした。

香りが分かるほどではないが、目線を下げればなかなかの胸を見下ろすことが出来る距離。

女性の胸に目が行ってしまうのは男の性だと思う。

決して私が変態なわけではなく。


翌日も、その翌日も距離は近いまま。

最初は戸惑ったが、今はティレーズが近くにいても違和感を覚えなくなった。

むしろ、少し離れていると落ち着かない。

ティレーズから縁談のことで密かに相談を受けたのは、この距離になれきった頃だ。




「申し訳ありません。こんな話をされても困りますよね」



ティレーズは力無く笑うと、それ以来縁談の話はしなくなった。



「……ですので、午後からの公務は、」



説明しながらふと見ると、ティレーズと視線が絡んだ。

ティレーズは、目のクリクリしたジュリア様と違い、切れ長の目をしている。

なんだか流し目を送られた気分になって、一瞬胸がドキンとした。


本当に困っている様子のティレーズに力になってやりたいが、私が探していてもなかなかティレーズに釣り合う男は見つからない。


ノア様も何も言わないから、ティレーズの縁談がどうなっているのか、まったく状況がつかめずイライラする。


ただ、ティレーズ宛に実家から何度も手紙が来ていることだけは把握していた。

あまり良い内容ではないのだろう。

仕事熱心なティレーズが、時折空を見上げてはため息をつく姿を見かけるようになった。


今はどういう状況なんだ?

ティレーズは、親の言うまま難のある男と結婚するのか?

ティレーズほど優秀な娘が?

それは許しがたいことに思えた。


ティレーズから何も言ってこないから黙っていたが、もう我慢の限界だ。



「ティレーズ。縁談についてはどうなったんだ?」



ティレーズは驚いた顔をしたが、すぐに諦めたような切ない笑いを浮かべた。



「もう、良いのです。諦めました」



私の中で、何かが弾けた。



「あなたは本当にそれでいいのか?なぜ徹底的に反抗しない」



気がつくと、ティレーズを詰っていた。

お門違いだと分かっていたが、ティレーズが諦めて親の選んだ相手と結婚し、この国を出ることになるかもしれないと思うと、言葉が止まらなかった。


私なら。

私なら、ティレーズの力になってやれるのに。

私ならティレーズにこんな顔をさせないのに。

しかし、返ってきた言葉は予想外で。



「私にもお慕いしている人がいます」



その言葉に少なからずショックを受けながらも、その男に想いを告げればいいと伝えると、それは出来ないという。


想いを伝えられない相手。

かつ、ティレーズの身の周りにいる男。

私には一人しか思い浮かばなかった。



「まさかノア様……」


「違います。ノア殿下に最も近い……あなたです」




消え入るような声で、ティレーズが言った。


予想もしていなかった言葉に、どんな反応を返していいかわからない。


何か言わなければ、とは思うが、言葉が出てこない。

私の沈黙をどう受け取ったのか、ティレーズは泣きそうな顔をした。



「マルコ様?やはり、ご迷惑ですわよね……」


「違うっ!そうじゃない!」



気がついたら大声で否定していた。

この私が、人前で大声を出すなんて。


本当はどこかでわかっていた。

こんなにもティレーズのことが心配なのも、ティレーズに良い相手を見つけられないのも、私にとってティレーズが特別な女性だからだ。

だが、自分は対象外と思っていた。


いや、今も思っている。



「私は……あなたよりだいぶ歳上で、適齢期などとうに過ぎている。それに、見た目も優しげとは言い難い」



世の女性は、ジュリア様のような奇特な方を除いて、大抵が優しげな容貌の男を好む。

私も若い頃は数人の女性に声をかけられたこともあるが、それは私をノア様への足がかりにしようとされていたからだ。

私本人を見て、好ましいと言ってくれた女性などいない。

ましてや、こちらは適齢期をとうに過ぎている。


しかし、ティレーズはそんな私の懸念など軽く吹き飛ばした。



「その厳しい見た目も、物言いも、すべてノア様の為。

私は、そんなあなたが好きなのです。

それに、歳など……奥様とノア殿下に話したら笑われますわ」



ああ。

やはり、ティレーズは「私」と言うものをちゃんと理解してくれている。



「あなたの家族は反対しないだろうか」



いくら本人がいいと言っても、適齢期を過ぎた男など、訳あり物件と思われても仕方ない。

反対される可能性は大いにある。

しかし、その懸念にも、ティレーズは胸を張って答えた。



「私が、何も言わせませんわ」



そうだ。

これが、私が好きになった女性だ。

自信に満ちあふれ、常に堂々としている。

凛とした花のような女性。



「男前だな。まぁ、そんなあなただから、私も好きになったのだけど」



己の想いを口にすると、とてもしっくり来た。

一方のティレーズは、先程までの勢いはどこへ行ったのか、顔を真っ赤にして、オタオタしている。


私はティレーズの前で片膝をつくと、そっと華奢な手を取った。



「私と結婚してくださいますか?ティレーズ」


「はい!喜んで」



久しぶりに、ティレーズの満面の笑みを見た気がした。



ティレーズは私たちの結婚についてジュリア様に報告するというので、私もノア様に報告することにした。


ノア様は元々私をティレーズに推していたから、とても喜んでくださった。



「早く式を挙げて子供を作れ。そうしたら俺の子と遊ばせられる」


「そんな簡単には参りません。ティレーズのご家族に挨拶に行かねばなりませんし、ティレーズが妊娠したら、ジュリア様の公務も滞ると思いますし」


「1ヶ月休暇をやるから、しっかりティレーズを貰ってこい。

それに、ジュリアはしばらく公務がほとんどできなくなるのだから、仮にティレーズが妊娠しても問題ない」



この殿下は、1ヶ月休暇などと軽く言うが……



「ノア様は、私がいなくても本当にちゃんと公務を進められるのですか?段取りや書類の整理など苦手でしょう」


「それについては、いくらでもやりようがある。

まあ、お前は何も心配せず、ティレーズを手に入れることだけ考えろ」



その晩、ノア様は陛下に私とティレーズの事を早速報告した。

ジュリア様はご自分から言いたかったらしく不満げだ。



「来週から1ヶ月休暇をやるから、ティレーズを嫁にしてこい。

ノアの身の回りについては、ポアロと他の者でなんとか回せるだろう」



ポアロ、つまり父上がノア様につくなら、安心だ。

陛下の身の回りの世話もあるので、ノア様に付き切りというわけにはいかないだろうが、そこは父上が部下をうまく動かすだろう。



「ありがとうございます。早速、ティレーズのご家族に会いに行ってまいります」


「ジュリア様は大丈夫ですか?大切な時期なのに……」



ティレーズが心配そうに言う。

それに対しては王妃様がお答えになった。



「私は経験者だし、マリアンヌちゃんには医学の心得もあるし、私と侍女長のマリアでスケジュールを相談するから大丈夫よ」


「ありがとうございます。どうか奥様をよろしくお願いします」



こうして、ティレーズの両親に挨拶に行ったわけだが、私の予想に反して、ティレーズの両親は手放しで喜んでくれた。



「我が娘ながら、気が強いからなかなかいい相手が見つからなくて……王太子妃様の元でずっと働けるならそれでいいと思っていたのですが、やはり結婚だけはしてほしかったのです」


やはり親として心配していたのだ。

ただ、持ってくる見合い話がだめだっただけで。


両親に認めたられた後は、ティレーズの元々の雇い主である、ジュリア様のご実家に挨拶へ。



「ジュリアはあなたを困らせてない?小さな頃から全部あなた任せだったから。

でも、本当に結婚おめでとう。あなたは私達にとって娘みたいなものだから、本当に嬉しいわ」



ジュリア様のお母様はとても喜んでくださり、お父様も目に少し涙を浮かべながらも、結婚後もティレーズがジュリア様のそばにお仕えすることに安心したご様子だった。



馬車で片道2週間の道のりにもう少し余裕を持たせて、各所に泊まりながら私とティレーズはゆっくり帰国した。

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