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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第四章 続編ルートと新しい力
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マルコの好み 【後編】

ノア様目線です

「こちらの書類にサインをいただければ、午前の公務は終了です」


「ん」



書類に目を通してサラサラっとサインすると、マルコがティーセットを持ってきてくれた。



「ジュリア様のお加減はいかがですか?」


「ああ、今のところ順調だよ」



そう言ってから、ふと昨夜の会話を思い出す。

今が、そのタイミングなんじゃないか?



「ただ、心配事があるみたいでな」


「心配事?妊婦にはあまり良くないですね」


「ああ。なんでも、ティレーズに縁談が来てるらしいんだが」


「ティレーズも適齢期ギリギリですからね」



適齢期をとっくに過ぎた自分を棚に上げて、女性に対して失礼なことを言う奴だ。



「ただ、どの相手もみんな難あり、といった感じで、ティレーズは乗り気じゃないみたいなんだが、このままでは無理矢理結婚させられそうだと、非常に心配していてな」


「政略結婚はありふれた話ですが、難のある男性と無理矢理、というのは感心しませんね。

ティレーズなら、選び放題でしょうに」


「こっちで、いい相手がいればいいんだがな……お前、どうだ」



ジュリアにはさり気なく、と言われたが、つい突っ込んで聞いてしまう。



「私では、歳が離れすぎているでしょう」


「私とジュリアも同じだけ離れているが」


「それは、ジュリア様が良いと判断したから問題ないのです。普通の女性は嫌がるでしょう。

こんな、適齢期をとうに過ぎた男など。

それに、私が女性に与える印象が良くないのは、ノア様もご存知でしょう?」



マルコはそう自嘲的に呟く。

おいおい。

マルコももしかして、満更でもないんじゃないのか?



「難のある男と結婚するよりはいいだろう。

それに確か、お前の両親も、執事と侍女長じゃなかったか?お互いの仕事を理解していて理想的だと思うんだがな」


「随分、私を推しますね」



しまった。

やり過ぎたか?

ジュリアに怒られる。



「私が太鼓判を押して紹介できる男など、私の周りにはお前くらいしかいないからな」


「褒めても午後の公務の量は減らしませんよ?」


「そうじゃない。実際、友達はとっくに結婚してるし、お前は私の都合で適齢期を逃したようなものだからな。責任を感じてるんだ」


「今更ですね」



冷たい目で見られる。



「いいじゃないか、今更だって!それともお前、生涯女を知らずに過ごす気か?」


「別に、女を知ろうと思えばそういう店に行けば良いわけですし」



くそっ。

ああ言えばこう言う。



「夫婦はいいぞ?プロの女を相手にするより、余程いい」


「結局は惚気ですか」



違う、そうじゃない。

ああもう、どう言えばこの男はその気になるんだ。



「ティレーズなら、お前好みじゃないかと思ったんだがな」


「まあ確かに、頭空っぽなその辺の令嬢より余程ティレーズの方がいいですね。頭も良いですし、空気も読めますし、それに……」


「胸も大きいし、か?」


「今の発言、ジュリア様にお伝えしておきます」


「待て、やめろ」



そんな事を伝えられた日には、ジュリアに白い目で見られること間違いない。



「まぁ、こればかりは縁ですからね。ティレーズに良い男性が現れれば、その方と結婚するでしょう」


「お前はそれでいいのか?」



少し、声を低くして言う。

伊達に何年も一緒に旅していたわけじゃない。

マルコの考えがわかるとまではいかないが、感情の揺れくらいは私にもわかる。

こう見えて、マルコは今、結構動揺している。



「いい、とは?」


「いや。別にいい。気にするな」



あえて、ここで話を打ち切った。

ここから先はジュリアに任せるしかない。

ちょっと突っ込みすぎだと怒られるかもしれないが、少なくともマルコかティレーズを憎からず思っていることは確認できた。


私はカップに残っていたお茶を飲み干すと、午後からの公務に取り掛かった。

マルコもそれ以上は何も言わなかった。



夜。

ジュリアに今日あったことを話すと、案の定突っ込みすぎだと怒られたが、マルコの反応には満足そうだ。



「問題は、どうやってマルコをその気にさせるか、ですわね」


「アイツ、少し悟りを開いた修道士のようなところがあるからな」



ティレーズのことが無ければ、本当に生涯独り身で終えかねない。

このことに対しては、マルコの両親は何も言っていない。

マルコにも、特に結婚をせっつくようなことはないらしい。



「少し残念な子ですから」



と母親である侍女長のマリアが言っていたことがある。

母親にそんなことを言われるマルコ……不憫だ。


よく考えると、そういう面ではマルコの母とティレーズはどこか似ている。

ティレーズとマルコがもし結婚したら、またマルコのような辛辣な子供が生まれるのか?


私がそんなことを考えている横で、ジュリアは吊橋がどうこうとか、ドアトゥフェイスがどうとかパーソナルスペースがとか、よくわからない事を呟いている。



「ジュリア?」


「失礼致しました。少なくとも、マルコはティレーズに好意に近い感情は抱いているようですわね。

後は、『こちら側』で何とかいたしますわ」



『こちら側』と言うのは、おそらく女性陣のことだろう。

恋愛ごとに関しては男より女性の方が計画的な気がする。

もちろん、ミモザの学園にいたときの王子たちのように、グイグイと積極的にリリアン嬢に迫るということもあるし、意に染めた女性に猛アタックをかける男もいるが、どれも計画的というよりは勢い任せな気がする。

もちろん、すべての男がそうだとは思っていない。

私だって、徐々にジュリアに近づいていってモノにしたわけだし。

計画的だったというよりは、単純に接触する機会を増やしたかっただけなのだが。

ジュリアが私を好いてくれていたからなんの問題もなく結婚できたが、もし嫌われていたら、学校に訴えられていたかもしれない。

危なかった。



「聞いてますの?ノア様」


「え?あ、すまない。少し考え事を……」


「もう!今後、ノア様はマルコに何も言う必要はございませんと申し上げたのです」


「わかった。じゃあ、後のことは『そちら側』に任せよう」



ジュリアは胸の前で両手の拳を握りしめて呟いた。



「すべては、ティレーズの幸せのために!」



とても愛らしいんだが、やっぱり食べちゃだめだろうか。



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