マルコの好み 【前編】
「ねぇ、ノア様?」
その晩、ベッドルームで二人きりになると、私は早速切り出しました。
「ん?なんだい、ジュリア。欲しいものでもあるのかい?」
私、そんなに欲深そうに見えるのでしょうか……
「お菓子かい?でもこの時間に食べるのは……」
「違います!」
確かに他の令嬢に比べると多少食い意地ははっていますけど、どうしてすぐに食べ物の話題になるのでしょうか。
「マルコのことなんですけれど」
「マルコ?何かキツイことでも言われたかい?」
「いいえ。私はそんなに接点がございませんし、何も言われていませんわ。
そうではなくて、今、マルコには心に決めた方がいらっしゃるのかしら」
ノア様の顔色がサッと変わります。
どうしたのでしょう。
「マルコのそんなことを気にするなんて、まさかジュリア……」
「違います。私ではありません」
「じゃあ、誰が?マリアンヌ嬢?」
「いいえ。相手の詮索は後にしてくださいな。
それよりどうですの?心に決めた方はいますの?」
「マルコとはそんな話をしたことがないから明確には分からないが……いないんじゃないかな。
いたとしても、あのマルコだ。私に知られるような態度はとるまい」
確かに。
ノア様よりマルコの方が一枚も二枚も上手ですし、ノア様とマルコのコイバナってちょっと想像がつきませんわね。
まさかノア様が私を想い始めたばかりの頃にコイバナをしていたなど知らない私はそんなことを思います。
「マルコも適齢期をだいぶ過ぎてしまっているし、恋愛経験のなさで言えば、私と同レベルだ。たまに、言い寄ってくる令嬢を素っ気なく追い払っているのは見かけるが……
アイツは辛口だし、少しキツイ顔をしているだろう?女性からの評価は、残念ながらあまり良くないんだ」
ふむふむ。
とりあえず、ティレーズにライバルはいないようですね。
「マルコ本人は、どんな女性がお好みですの?」
「あまりそういった事について話したことはないんだが、前に言っていたのは、聡明で打てば響くような女性。胸が大きければ尚いい、と」
ティレーズは聡明ですし、空気を読むことにも長けていますし、会話を盛り上げるのも上手です。
もちろん、話の流れを読んでの反応も早いです。
お胸は、私の見た限りでは標準か、それより少し大きいのではないかしら。
マルコの好みにあっていると思うのですが。
「そろそろ、マルコを慕っているのが誰なのか教えてくれてもいいんじゃないかい?」
「ええ。それが、ティレーズですの」
「ティレーズが?ティレーズならば、マルコについてはよく知っていると思うが、よくマルコを好きになったな」
ノア様。
マルコに失礼ですわ。
「ふむ。それでは私から、それとなくマルコをつついてみようか」
「ノア様。マルコは鋭い男性ですわ。ノア様が急にそんな事をしましたら、すぐに何かあったと勘付きますわ」
「む……」
何かいい方法はないでしょうか。
「そうですわ。一言だけ。ティレーズに見合いの話が来ているが難のある男性ばかりであまり乗り気ではないけれど、このままだと無理矢理縁組させられるかもしれないと、私が心配していた、とそれとなく話題に紛れ込ませてくださいますか?」
「ふむ。それくらいならアイツもそこから恋愛の話に発展するとは思わないだろう。
明日にでも言ってみるよ」
「あくまでもさり気なく、ですわよ?」
「わかったわかった。それより、母上から、ジュリアの妊娠が落ち着くまではジュリアを抱くな、と言われたのだが」
「ええ。お腹の子に障りますので」
ノア様は私のお腹にそっと手を置きました。
顔が蕩けそうになっています。
「ここにいるのだな。無事な出産は約束されているが、やはり心配だ。あまり無理はしないでくれよ?」
「分かっていますわ。それより沢山お腹の子に声をかけてあげてくださいませ。
今はまだ聞こえていないでしょうが、もう少ししたらお腹の外の声が聞こえるようになるそうなので」
「そうなのか!よし、毎晩語りかけることにしよう」
嬉しいですけれど、毎晩となるとちょっと面倒くさいですわね。
私は早く寝たいですし。
まぁ、ノア様が幸せならそれでいいですわ。
誤字脱字報告ありがとうございます。
とても助かります。




