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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第四章 続編ルートと新しい力
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続編ルート阻止

ノア様目線です

「王太子がダンスをしないとなれば他の者も踊りにくかろう。こちらのイザベル嬢と踊るが良い」


「お断りします。私のダンスの相手を務めてもらうのはジュリアだけと決めております」


「なぜ、そう頑ななのだ」



イザベル嬢と踊る踊らないで揉めているまさにその時、王族入場のファンファーレが鳴った。


目を向ければ入り口から入って来たのはジュリア。

とてもにこやかな表情でこちらへ向かってくる。



「ジュ、ジュリア。もう公務は終わったのか?」


「はい、陛下。恙無く務めさせて頂きました。

それより、この騒ぎは何ですの?」


「いや……イザベル嬢を側室として娶るにあたってだな、皆にわかるようにダンスを……」


「イザベル様を娶ることは決定いたしましたの?」


「私は認めていない」



ここだけはきっぱりと言い切る。



「裏はとれまして?」



ジュリアが小声で聞いてくる。



「ああ。イザベル嬢がどうしても私の妻になりたいと父親に強請って、チェス勝負で縁談が決まったと、イザベル嬢本人から聞き出した」



コクンと頷くと、ジュリアは笑顔で言った。



「大切な子供の縁談をチェス勝負で決めるとは、随分大人気ない真似ですわね」



それは、父上に対して不敬に当たるのでは……



「しかし、勝負に勝ったのは確か」



言い募るハイネケン公爵に、ジュリアは笑顔を崩さない。



「お約束の縁談は終わったではありませんか」


「ならば、側室としてイザベルが輿入れするかどうか、私とチェス勝負なさいますか?」



ハイネケン公爵も笑顔だ。

父上に勝つほどだし、余程チェスに自信があるのだろう。



「お断りしますわ」


「なっ……負けるのが怖いのですか?」


「いいえ。なぜ、こちらになんの利もないのに勝負しなければならないんですの?

それでもどうしても勝負したい、と仰るのであれば……そうですわね、お菓子作りで勝負致しますか?もちろん、作るのは私とハイネケン公爵ですわよ?」


「お菓子作りなど……やったこともないこちらが明らかに不利ではありませんか」


「勝負したいと仰ったのはハイネケン公爵です。

ならば、何で勝負するかを決める権利を得るのはこちらのはずですわ」



外交の基本だ。

それにしても、ジュリアから不思議な気を感じるのだが……



「ま、待て。確かにチェスで負けたのは事実だが、出産に際してのそなたの身を案じてのことでもあるのだ」



父上が後出しのように言う。

この話はジュリアから聞いていたが、ジュリアはこの夜一番の笑顔で言った。



「その件でしたら、問題ありませんわ。私、公務に出ている間に天使ジブリール様と天使アリエル様から加護を頂きましたので」


「天使から加護を?!」



天使ジブリールと言えば、子孫繁栄と安産を司る天使。

天使アリエルは五穀豊穣の天使だ。

その二人から加護を受けたとなれば、この国の未来は安泰。



「そ、そんな嘘が通用するとでも……」


「『お義父様』は信じてくださいませんの?」



目をウルウルさせて、父上を見上げるジュリア。

小さな頃、よくこの手段で父親に我儘を聞いてもらったと、新婚旅行中に聞いたことがある。



「違うんだ、ジュリア!そなたを信じていないわけではない!」



案の定、父上は嫌われまいと必死だ。

そこに、一人の侍従が慌てた様子で父上のところへやってきて、何やら耳打ちした。



「そ、それはまことか?」


「はい。国内の教会すべてにお姿を見せられた、と」



父上は驚愕した表情だ。



「今、教会から連絡が来た。天使ジブリールと天使アリエルが、確かにジュリアに加護を授けたと、お姿を現してお告げがあったらしい」



ね?と言うように首を傾げるジュリア。

可愛い。



「それなら、出産の心配もいらないし、側室は不要ですわね」



母上がここぞとばかりに言う。



「お父様……」



それまで空気だったイザベル嬢が、ハイネケン公爵の袖を引いた。

少し涙目だ。



「私、ノア殿下の側室なんて無理ですわ。

だって、精霊の祝福もなく、魔法もそこそこ、ましてや天使の加護など受けていない私では、到底王太子妃様に敵いませんもの。

側室として王城に入っても、ノア殿下はきっと私の閨は訪れてくださいませんわ」



よくわかってるじゃないか。

ゴリ押しで側室になったとしても、私はイザベル嬢の閨など訪れるつもりはない。



「それと、天使ジブリール様より、私は懐妊しているとお告げを受けましたわ」


「それはまことか!」


「はい。まだまだ初期ですけれど」



ジュリアの爆弾発言に、父上は腰を抜かさんばかりに驚いている。

ハイネケン公爵もだ。



「元より、今回の縁談はお遊びで始まったこと。この辺りで引いたほうがよろしいのではなくて?」



母上が堂々と言うと、ハイネケン公爵は頭を下げた。



「まことに、おっしゃるとおりでございます」


「それと、ジュリアに対する数々の物言い。王太子妃に対して不敬である。不愉快だ、下がれ」


「も、申し訳ございません…」



親子共々下がろうとしたのを止めたのは、なぜかジュリアだった。



「ハイネケン公爵?何も賭けない、というのであれば、今のこの場で余興としてチェスのお相手をしてもよろしくてよ?」


「ジュリア?」


「それとも、負けるのが怖いのですか?」



先程言われた言葉を、ジュリアがそのまま返す。


母上はなぜか楽しそうな顔で、チェスの用意をするように指示を出した。


夜会の参加者たちは、この余興に興味津々だ。

何しろ、先程からの私達のやり取りをずっと聞き耳立てていたのだ。

暇を持て余している貴族たちは、面白いことになったとでも思っているのだろう。

しかし、チェスは紳士の遊び。

淑女のジュリアがハイネケン公爵に勝てるとは思えないのだが。


俺の心配をよそに、勝負は開始された。

ゲームは淡々と進んでいく。



「チェック」



最初にチェックを取ったのはハイネケン公爵。

しかし、ジュリアは慌てることなく駒を進める。



「チェック」



それからすぐに、今度はジュリアがチェックを取る。

徐々に、ハイネケン公爵の手駒が少なくなっていく。



「チェック」



また、ジュリアがチェックを取った。

ハイネケン公爵は苦しげに駒を動かす。

ああ、しかしその手は……



「悪手でしたわね。チェックメイト」



始めてものの10数分で、勝負は決した。



「これほどの腕前とは知らず、大変失礼致しました」



父上にさえ勝つほどのハイネケン公爵をコテンパンに負かすなど、誰が予想しただろう。

ああ、母上はきっと予想していた。



「さあ皆様、余興は終わりでございます。

ダンスを楽しみましょう」



母上がドヤ顔で言って、ワルツが流れ始めた。



「ジュリア。私と踊っていただけますか?」


「ええ、もちろんですわ」



にっこり笑ったジュリアの手を引いて、会場の真ん中まで行く。

ゆったりと踊りながら、私は小声でジュリアに言った。



「聞きたいことは山ほどあるが……懐妊したと言うのは本当かい?」


「らしいですわ。私もまだ実感がわきませんけれど」


「ジュリアがあんなにチェスが上手いとは、知らなかったよ」


「ふふ。子供の頃からお父様に仕込まれていましたから。

チェスは外交に通じるものがある。出来るようになっておいて損はない、と」


「やれやれ。ジュリアは本当に英才教育を受けてきたんだな。しかも、他の令嬢とは違った形で」



厳しい英才教育を受けてきた令嬢は沢山いるが、チェスまで教えこまれるというのはなかなかない。

もしかしたら本気でミモザ国の王太子妃にするつもりだったのでは無いだろうか。



「ジュリアが、ミモザやカルーアの王子たちに靡かなくて良かった」



もしかしたら、世界の情勢が変わっていたかもしれない。



「私にはノア様だけですわ」



可愛いことを言ってくれる。

このまま今夜も抱き潰したいところだが、妊娠初期ならそうも行くまい。


私は踊り終わったジュリアの額にキスを落とすと、そのまま二人で会場を後にした。

ジュリアを安静にさせなければ。


ここ数日の煩わしさから逃れられたことと、ジュリアの妊娠で、私は嬉しくて仕方なかった。

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