挙式
ノア様目線です
今私は、この国一番の大聖堂のドアの前で、最愛の女性と並んで立っている。
ようやく。
ようやく待ち望んだ婚儀の日。
腕を組んでいる隣のジュリアは緊張からか、少し顔が青ざめている。
「緊張しなくても大丈夫」
髪型を崩さないようにフワッと頭を撫でると、彼女の表情が少し和らいだ。
ジュリアは、危険な時には腹が据わるのに、こういった場ではどうにも緊張するようだ。
本当に変わった令嬢だ。
ファンファーレが鳴り、大聖堂の扉が開く。
二人で腕を組んで、司祭の前まで進んでいく。
互いに誓いの言葉をかわし合って、ジュリアのベールを上げると、頭上にティアラを乗せた。
これで、ジュリアも王族の仲間入りだ。
次は誓いのキス。
ぎこちなく私を見上げるジュリアはとても可愛い。
そのジュリアの頬に手を当てて、そっとキスをした。
本当はがっつりキスしたいところだが、今は人前だ。
ジュリアの可愛い顔を他の人に見せる気はない。
フラワーシャワーを浴びながら、大聖堂から出ると、国民から大きな歓声が沸いた。
このまま馬車で城までパレードを行なって帰るのだけど、ジュリアは緊張も解けたのか、可愛い笑顔で街道の国民に手を振っている。
その姿はすっかり王太子妃だ。
城についたら休む間もなく祝賀パーティー。
各国からの来賓も来ているので、気が抜けない。
驚いたことに、ジュリアは挨拶に来る賓客すべての名前と顔を一致させており、娘が生まれた、とか孫が生まれた、といった情報も持っていて話を盛り上げている。
王太子妃教育に、そこまであっただろうか。
ジュリアはいつも私の予想の上を行く。
ミモザ国からはジュリアの家族と王族の代表として国王陛下とバロン王子が来ていた。
その横にリリアン嬢の姿はない。
婚約破棄したという話は聞かないから、おそらく王城に幽閉でもしているのだろう。
それだけのことをしたし、それ相応の罰を与えるよう、ミモザ国王には伝えてある。
「昨日は我が国の者が申し訳なかった。
二度と同じことが起こらないよう、対処はさせてもらった。
私たちは君たちの婚儀を祝っているということだけ、ご理解いただきたい」
「ありがとうございます。妻の母国として、貴国の益々の発展を願っています」
言外に、ジュリアの母国でなければ許さなかったと匂わせる。
ミモザ国王とバロン王子は青い顔で頭を下げて去っていった。
次に来たのはロングアイランド国の王太子。
「この度はおめでとうございます」
そう言った後で、ジュリアの耳元で何か囁いた。
ジュリアはちょっと目を見開いて、流暢なロングアイランド語で返した。
「夫のいる私に言うべき言葉じゃありませんね」
「これは驚いた。我が国の言葉もマスターされているとは」
「ヘンリー王子。妻に何を?」
「いえ、特には」
王子はそのまま去っていったのでジュリアに直接聞くと、ロングアイランド語で「君をこのまま連れ去りたい」と言われたらしい。
誰がやるか!
宴も終わり、今夜から一週間は春の離宮で新婚生活を送る。
使用人は最低人数。
私たち夫婦にはよほどのことがない限り接触しない。
つまり、やりたい放題出来るのだ。
お目付け役のティレーズやマルコがいないのもいい。
この一週間だけは、二人きりの時間を過ごせるのだ。
ちなみに、この形式になったのは父上の代だ。
父上も穏やかそうに見えて、むっつりスケベだな、と思う。
春の離宮に着くと、私は迷わずベッドルームにジュリアを運んだ。
「ジュリアは何人子供がほしい?」
「何人でも。ノア様との子供ですもの」
妊娠出産には命の危険が伴う為、あまり無理は言えないが、私もジュリアとの子なら何人でもほしい。
「それなら、頑張らないとな」
「が、頑張るって……」
ジュリアの頬が赤くなる。
「ぎこちないところがあったら、ごめんね」
以前と似たようなことを言って、私はジュリアを抱き締めた。
その瞬間、グゥッと音が鳴った。
「ジュリア……お腹空いてるの?」
笑いを我慢して聞くと、ジュリアは真っ赤になっている。
食欲旺盛な子が、今朝から何も食べていないのだ。
私は夜食を用意して部屋の前においておくようにメッセージカードで伝えた。
しばらくして、ドアの向こうに人の気配があり、去っていく気配があった。
ドアを開けて、夜食を部屋に持ち込む。
「ほら、口開けて?」
真っ赤になりながらもジュリアは私の手から食べている。
ちょっと予定は狂ったけどこれはこれで可愛いからいい。
ジュリアの食欲が満たされたところで、私は改めてジュリアにキスをしてベッドに押し倒した。
さあ、夜は、これからだ。
新しい一面を見せてくれよ?ジュリア。




