ヒロインの襲撃、再び
王城に帰ると、結婚式で着る私のドレスが出来上がっていました。
ドレスに施された刺繍は、私と王妃様の合作です。
「まぁ、可愛い。とっても似合うわ、ジュリアちゃん」
「ありがとうございます」
試着した私を見て、王妃様はとても満足そう。
モブキャラの私がノア様と結婚するという夢のような日まで、あと数日。
私は連日、侍女達によって体を磨き上げられています。
前世で言うエステのような感じです。
自分の身体に自信もありませんし、初めは恥ずかしいだけでしたが、エステの効果なのか何なのか、前より少し胸が大きくなった気がします。
ティレーズによって食事制限もかけられているので、ウエストも細くなりました。
後は、明日の挙式を待つのみ。
のはずだったのですが。
その晩、寝ようとしていたところで私は大きな魔法の発動を感じて起き上がりました。
一瞬、辺りに光が走り、目を開けたときには、なぜかリリアン様がいました。
おそらく転移魔法でしょう。
国に張ってある防御魔法は、他国からの転移魔法も防げるようにしてあるはずなのですが、そこはやはり、ヒロインだからでしょうか。
「リリアン様。こんな時間にこんな場所へ、なんのご用ですの?」
「私、やはりノア様が良いのですわ。だから、あなたには消えていただこうと思いまして」
サラッと怖いこと言いましたよ、この令嬢。
「傷心のノア様を私がお慰めして、そこから愛が生まれて結婚する。いい『ルート』でしょう?」
すごいドヤ顔です。
「私は防御魔法が得意ですし、攻撃は当たらないと思いますが」
「それも踏まえて、強力な攻撃魔法をしっかり勉強してきましたわ」
その努力、王子妃教育に向ければよろしいのに。
でも、1つだけ確信しました。
「リリアン様。あなた、転移者でしょう」
「えっ、なんでそれを……まさかあなたも?」
「黒髪に黒い瞳。平ぺったい顔。どうみても日本人ですもの。ちなみに私は転生者です」
「転生者……ふふっ、でもモブキャラ」
リリアン様がおかしそうに笑います。
「モブキャラがノア様と結婚なんて、あり得ないわ。ゲームではどうしても辿り付けなかったノア様ルート、ここでは私がもらうわ」
ああ、ノア様ルート攻略してないんですね。
素敵なルートですのに。
現実のノア様はもっと素敵ですけれど。
そんなことを考えているうちに、リリアン様は詠唱を始め、どんどん魔力が大きくなっていきます。
これはまずい、と魔力を練り上げて防御結界を張ります。
「『デッドライト』!」
リリアン様が最上級の攻撃魔法を放った瞬間、私の結界の目の前に、もう一つ強力な結界が現れました。
この魔力は……
「ノア様!」
ドアを開け放ったそこで、ノア様が魔法を放っていました。
「リリアン嬢。これはどういうことか説明してもらおうか。場合によっては、ミモザとの戦争も視野に入れなければいけないが」
「ちっ、違うのです!私はただ、ジュリア様が少し怪我をすればいいな、と」
いやいや。
アナタ消すつもり満々だったではないですか。
「何故ジュリアに怪我を?」
「それは……私、どうしてもノア様のことが諦められなくて!」
「それで、私の愛するジュリアを攻撃した、と?」
ノア様の背中に黒いオーラが見えます。
「私は防御だけでなく攻撃魔法も使えます!
きっと、ノア様のお役に立てると……」
「花嫁教育もままならないのに?
ふっ、君は自分を高く評価しすぎている。
これも、学園で王子たちにチヤホヤされたせいかな。
何か勘違いしているようだが、私は生涯、ジュリア以外を愛するつもりはない。
君は私を怒らせた。金輪際、この国への出入りは認めない。ミモザ国にも今回の件は伝えておく」
「そ、そんな!待ってください」
「『己のあるべき場所へ戻れ』」
ノア様の強制送還魔法で、リリアン様はその場から姿を消しました。
「ジュリア!無事かい?」
「ノア様の結界のおかげで、無事でございます」
「嫌な魔力を感じて来てみれば……なんで一人で立ち向かおうとしたんだ」
「女同士の、譲れない闘いだったのです」
「まったく、君って子は……」
それにしても、国土防御結界、少し手直しした方がいいかもしれませんね。
またリリアン様に来られても迷惑ですし。
「明日は朝早いから今夜は見逃してあげるけど、約束を破った罰はちゃんと受けてもらうよ」
そうでした。
ノア様に無茶をしないと約束をしていました。
ノア様はそれはいい笑顔でおっしゃいました。
「明日の夜は、たっぷりお仕置きだな」
………今から、明日の夜が怖いです。




