賊の襲来とノア様のお仕置き
とうとうトリスへ戻る日が来ました。
お父様は少し涙ぐんでおられます。
「元気で過ごしなさい」
「はい。お父様方もお元気で」
ノア様のエスコートで馬車に乗り込み、いよいよ出発です。
今回も、前回と同様2週間かけて参ります。
安全なルートを選んだはずだったのですが……
「ノア様、先遣隊より賊の姿を確認したと連絡が入りました」
カルーア国を出る直前、護衛騎士から報告が上がりました。
ノア様の表情が厳しくなります。
「賊の数は」
「確認できただけで、およそ10」
護衛騎士も10人。
先遣隊を合わせても15人です。
「人数的に厳しいな。日暮れも近いし、このまま宿まで戻るには危険が大きすぎる。
だが、かと言って進むのも危険だな」
そう、中途半端な場所なのです。
「ノア様。私が護衛騎士含めてこの馬車一帯を防御致しますので、突き進まれては?」
私の言葉に、ノア様もマルコもギョッとされていますが、私の防御魔法の強さはノア様もよくご存知ですし、他に方法も思い当たりません。
「………一気に駆け抜けるか。馬車の揺れは激しくなるが、大丈夫か?」
「はい」
「お嬢様……」
ティレーズが心配そうにこちらを見ます。
「大丈夫よ、ティレーズ。私達にはノア様もマルコもついていますし、護衛騎士の方々もいます」
「よし。口をしっかり閉じていろ。舌を噛むぞ」
ノア様が護衛騎士の方に駆け抜ける旨お伝えし、御者には最速で進むよう指示を出します。
念の為でしょう。
ノア様とマルコが剣を抜きます。
一気にスピードを上げた馬車は、かなり揺れて、ノア様が私を、マルコがティレーズを支えます。
「見えてきました。駆け抜けます!」
窓からチラリと見えたのは、軽く20人を超える賊。
護衛騎士に切りかかっているようですが、私の防御魔法で手が出せないようです。
それに対してこちらは攻撃できるので、目の前の賊を切り倒しながら駆け抜けています。
賊が馬に乗っていないことが幸いし、私達は無事に危険地帯を抜けることができました。
「護衛騎士の方で、怪我をした方はいませんか?」
「ありがとうございます。全員無傷です」
「よかった」
ティレーズを支えていたマルコは離れましたが、ノア様は私を抱きしめたままです。
あ、剣は仕舞っていただきました。
「今回は仕方なかったとはいえ、出来ればもうこんな無茶はさせないでくれ。君にもしものことがあったら私は……」
ノア様の抱きしめる力が強くなります。
「申し訳ありませんでした」
「いや、いいんだ。こちらこそ騎士まで守ってくれてありがとう。でもこれからは、君を守る役目は私にさせてほしい」
「はい………」
ノア様の顔が近づいてきて、唇が重なります。
結局、トリス王国の関所を潜るまで、私はノア様に抱きしめられたままでした。
なんとか日暮れ頃には冬の離宮に到着することができたのですが………
「あ、あの、ノア様?」
「少し黙って」
今何故か、私はノア様にお姫様抱っこをされた状態で廊下を進んでいます。
うっ。
使用人の方々の生温い視線が……
ドアを蹴破るように入ったそこは、ノア様のベッドルーム。
なぜ、ここに……
ノア様は私をベッドへ横たえると、覆いかぶさるように上から見下ろしました。
「君は……無茶ばかりする」
そう言って、耳元にキスをされます。
「君の力は知っているが、私の寿命がどれほど縮まったか」
次は瞼。
「その…ご心配おかけして申し訳ありません」
次に首筋。
「本当に反省している?」
首筋にチクンと痛みが走ります。
多分ですけれど、今のは所有痕をつけられたのかと……
「はっ、反省しています!」
「やっぱりダメ。少し、お仕置きが必要だな」
ノア様の唇が、徐々に下へ下りていきます。
「ノア様……私達はまだ結婚前です!」
「わかってる。だから最後まではしない」
最後まではってことは……途中まではするんですね。
結局、夕食も食べないまま、私はノア様に夜までみっちりお仕置きをされました……
「途中で止めるのは、私もなかなか辛いな」
夜食をいただきながら、ノア様が言います。
だったらあんなお仕置きしなければいいと思うのですが。
「まぁ、しっかり体に刻み込んだから、ジュリアももうあんな無茶はしないだろう」
その言葉に、顔が熱くなります。
その、色々思い出して。
「ジュリアは次期王妃であり、私の最愛のパートナーなのだから、無茶はしないで大人しく守られていなさい」
「……はい」
私も素直に頷きました。
この時は、ちゃんと約束を守るつもりでいたのです。
この約束が、近い将来破られることなど、予想もせずに。




