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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第三章 魔法の国 トリス国
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深夜の密会

「本日はお疲れでしょうから、お早くお眠りくださいませ」



夜着に着替えると、ティレーズが髪を梳かしながら言った。



「ありがとう。そうさせて頂くわ」


「ミモザにいた時のように寝坊するわけには参りませんからね?」


「……わかってるわよ」


「それでは、私はこれで下がらせて頂きます。また明日の朝参りますので。おやすみなさいませ」



ティレーズが出ていくと、私は一度は潜りこんだベッドからまた這い出しました。


髪を手櫛で直して、ガウンを着てソワソワとノア様の訪れを待ちます。


コンコンっとバルコニーの窓が鳴り、カーテンを開けると、ラフな格好のノア様が立っていらっしゃいました。



「ノア様。外はお寒いでしょう?中へどうぞ」


「いや。さすがに結婚前の女性の部屋に夜にお邪魔するわけにはいかないからね。バルコニーにソファーがあるんだ。そこで話そう。

ああ、ジュリアはちゃんと暖かい格好をしてくるんだよ」



確かに、結婚前の男性を夜、部屋に招くだなんてはしたないことでしたわね。

前世でもそんなことはしませんのに。


私はガウンの上にストールを羽織って、バルコニーへ出ました。

ノア様の部屋とはバルコニーで繋がっているとは聞いていましたが、ノア様の言うソファーは、ノア様の部屋と私の部屋の中間にありました。


ちょうど窓が途切れている場所で、部屋の中からは見えない場所になります。 



「どうかしたか?さ、座って」


「はい。何だか、その……」


「イケナイことをしてる気分になる?」



思っていたことを言い当てられて、私は赤くなりました。



「ここは部屋の中からは見えない場所だからな。密会にはもってこいだろう?」


「以前にも使ったことがあるような言い方ですわね」


「ちっ、違う違う。私の妄想が暴走しただけだ」



いったいどんな妄想をされたのでしょう。 

聞いてみたい気もしますけれど、恥ずかしいことを言われそうなのでやめておきます。


ノア様はパチンと指を鳴らして暖かいミルクティーを出すと、目の前のテーブルに置きました。

1つだけ。



「冷えるといけないから、飲んで」


「でも、ノア様の分が……」


「私はジュリアにくっついていれば暖かいから大丈夫」



そう言われましても、万が一風邪でもひかれたら大変です。


私は左手を上に向けると、目を閉じてそこに温かいミルクティーがある様子を想像しました。

手のひらに魔力を集めていきます。


トン、と左手に重みを感じて目を開けると、そこにはちゃんと温かいミルクティーが出せていました。



「ではこれは、ノア様に」


「もうこんな魔法も使えるようになったのかい?凄いな、ジュリアは」


「成功して良かったですわ」



ノア様の前にミルクティーを置くと、ノア様は思い出したように立ち上がりました。



「そうだ。大事なものを忘れていた。

すぐに戻るから待っていて」



そう言って、部屋に戻ったノア様は、少ししてお盆に乗せた大皿を持ってこられました。



「こんな時間に食べるなんて、本当は良くないけど、パーティーでは何も食べられなかったから、腹が減っているだろう?」



大皿には何種類かの手で摘める料理が乗っています。

ノア様の言われた通り、実はとても空腹だったので、とてもとてもありがたいです。



「ありがとうございます。早速いただきますわ」



私は美味しそうなサンドイッチから頂くことにしました。

中にはローストチキンが挟んであり、非常に美味しいです。

その後も、遠慮なくお料理を頂いていたら、隣に座るノア様がクスリと笑われました。


はっ。

私とした事が、食べることに夢中になってノア様の存在を忘れていましたわ。

こんな、すごい勢いで食べるなんてはしたない真似、ティレーズに見られたら怒られること間違いありません。



「失礼致しました」



口元を拭って、冷静なふりをします。



「いや。君は相変わらず美味しそうに食べてくれるね。

でもこんなに喜んで食べてくれるなら、もう少し用意させればよかったかな」


「いえ。これだけ頂ければ充分です」


「本当に?」


「本当ですわ」



空腹も満たされて、大満足です。

冷めないうちに、ミルクティーも頂きます。

お腹もいっぱいになって、体はホカホカと暖かくて、こんな幸せでいいのでしょうか。



「今日は流星群を見られるわけじゃないけど、喜んでもらえたかな」


「はい、とっても。ありがとうございます」


「ジュリア。もう少し、私の側に寄って」



言われるまま、ノア様にぴったりとくっつくと、

ノア様は私の腰に手を回しました。



「ジュリアは暖かいな。眠くなってきそうだ」


「それでは、もうお部屋に戻られますか?」



ふり仰ぐと、ノア様の顔が近づき、そっとキスをされました。 



「もう少し、デートを続けよう。明後日からはジュリアも王太子妃教育に入って、あまり会えなくなるから」



そう言って、またキスをされます。

何度か啄むようにキスをされた後、スルリとノア様の舌が入り込んできました。


このキスには……相変わらず慣れません。



「んっ……ふっ」



私が声を漏らすと、ようやくノア様はキスをやめました。



「危ない。これ以上続けていたら、もっと先を望んでしまいそうだ」



もっ、もっと先?!



男性に免疫のない私には刺激が強すぎます。



「この先はちゃんと結婚してから、だね」



私は赤い顔を押さえて頷くだけで精一杯でした。



冷めかけたミルクティーを飲み干して、ノア様は私の身体を強く抱きしめると、耳にキスをして囁きました。



「明日も早いし、これ以上は私が危ないから、そろそろ部屋に戻ろうか」


「はい……」



私がミルクティーを飲み干したのを見届けると、ノア様はまた指パッチンでカップを片付けました。

大皿は、部屋に持って帰るようです。



「明日は、少しのんびりするといい。

ああ、でも母上からお茶会に誘われていたね。無理して付き合うことはないからね」


「いえ。王妃様とのお茶会はとても楽しいので、楽しみにしているんです」



何しろ、前世の話や「セブプリ」の話ができますからね。



「ならいいけど。母上は少し変わったところがあるからな。……ああ、ジュリアも同じだから気が合うのかな」


「私、変わってます?」


「学園で王子たちを目の保養としか思ってなかった時点で、充分変わってると思うよ」


 

思い出したのか、クスクスと笑われました。 


だって私、モブキャラですし、王子とどうこうなんてあるはずないと思ってましたからね。


今でも、ノア様の婚約者になったことが信じられませんのに。



「さあ、本当にそろそろ部屋に戻ろう。

せっかく温まったのにまた身体が冷えてしまう」


「はい。それでは、おやすみなさいませ」


「おやすみ、ジュリア」



ノア様は私が部屋に入るところまで見届けられて、ご自分も部屋に戻られました。


時計を見ると、結構時間が経っていました。


早く寝ないと、明日の朝寝坊してまたティレーズに怒られますわね。


私はストールとガウンを脱ぐと、ベッドに潜り込みました。



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