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乙女ゲーのモブキャラに転生したら王子にプロポーズされました  作者: いち
第三章 魔法の国 トリス国
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帰還パーティー

きれいに着飾って頂いた頃、扉がノックされました。



「失礼。ノアだが、ジュリアの支度はできているかな?」


「はい。今すべて終えたところでございます」



そう言って、ティレーズと一緒に支度をしてくれていた侍女がドアを開けます。


今夜はノア様の婚約者として紹介されますので、少し派手めのドレスなのですが、おかしくないでしょうか……


チラリ、とノア様を見ると、なんだかとても嬉しそうです。



「ますます可愛さに磨きがかかったね。

こんな可愛いジュリアをエスコートできるなんて、誇らしいよ」


「ノア様は、いつも褒めすぎです……」


「ジュリアはいつも謙虚過ぎだ」



んんっ、と咳払いの声が聞こえて、ノア様が後ろを振り向きました。



「イチャイチャされるのは結構ですが、ノア様。そろそろお時間です」


「ああ、そうだったな。では行こうか、ジュリア」



ノア様に手を引かれて、パーティー会場へと向かいます。


王族入場のファンファーレが鳴り、ノア様が私を伴って堂々と入場されました。

正直、招待客の皆様の視線が痛いです。


国王陛下が立ち上がり、私とノア様を手でさしました。



「皆も知っての通り、何年も勉強の為に国を空けていたノアが戻った。

隣にいるのは、ミモザ国のジュリア・ルクラシア侯爵令嬢だ。

今夜は、ノアの無事な帰還を祝うとともに、二人の婚約を祝おうと思う」



ザワッ、と会場がざわめきました。

胃に穴があきそうです。


続いてノア様が発言されます。



「何年も国を留守にして申し訳なかった。

しかし、お陰で素晴らしい伴侶に出会うことができた。

妃共々、これからよろしく頼む」


ノア様に目線で合図をされました。

どうやら私の番のようです。



「初めてお目にかかります。ジュリア・ルクラシアと申します。まだ至らぬ点ばかりですが、これからの1年でノア殿下に相応しくなれるよう、精一杯努力いたします。

皆様どうぞ、よろしくお願いいたします」



うう……令嬢方の視線が突き刺さります。

こんな時は食事を楽しむに限るのですが、さすがに今日はそれは出来ません。


ノア様の横に座って、ご挨拶に来られる方々に挨拶を返していきます。

はっきり言って、流れ作業です。


でもまぁ、トリス国や周辺諸国の重鎮の方々のお名前は、幼い頃から叩き込まれていますので、顔を見て「ああ、この方が」という程度ですけれど。


中には諦めきれないのか、ご自身の令嬢を伴って挨拶に来る方もいて、ミモザの田舎者が、というような目で見られます。


確かに、ミモザはトリス国に比べて小さいですし、商業は盛んですが、これと言った特産品もないので、田舎扱いされても仕方ありません。


と、私は思っていたのですが。



「クレル伯爵。あまり失礼な目で私の婚約者を見ないで頂きたい。

ジュリアは、精霊の祝福を受けていて、魔法も既になんなく使いこなせる、優秀な令嬢だ。

失礼だが、あなたのご息女には、何か特出した点が?」


「あ、いえ、その………誠に失礼致しました」


「この子はジュリアちゃんに惚れ込んでいますから、言動には充分に注意なさった方がよろしいですわよ」



ノア様と王妃様がフォローして下さいました。

というより、ノア様、本気で不愉快そうです。



「ノア殿下、せっかくですし、楽しみましょう?」


「ああ、そうだな。まもなくダンスが始まるから、一緒に踊ろう」



最後に来たのは、フランソワ公爵。



「ご無沙汰しております、ノア殿下。

それから、お初にお目にかかります、ジュリア嬢。

先ほど耳にいたしましたが、ジュリア嬢は精霊の祝福を受けているとか?」


「ああ、その通りだ。皆も精霊の祝福を受けた人間に会うのは初めてだろう。せっかくだから、今見てみるといい」



ノア様はそばの花瓶に活けられていたバラの蕾のついた枝を一本取ると、私に手渡しました。


これは、ここで皆様に見せろということですよね?

私の意志はどこへ行ってしまったのでしょうか。



仕方なく、手渡されたバラの蕾にそっと触れます。

次の瞬間、フワリと蕾がほころんで花が咲いた様子に、会場内はさっきとは違う意味でざわめきました。



「祝福だ」

「ああ。伝説だと思っていたが、間違いなく精霊の祝福だ」



心なしか、皆さんの私を見る目が変わった気がします。



「さあ。ダンスの時間だ。ジュリア、私と一緒に踊っていただけますか?」



いたずらっぽく笑うノア様。

卒業パーティーを思い出しますわね。



ノア様と一緒に広間の真ん中へ。

曲が流れ始めると、私達は踊り始めました。



「ノア殿下は、とてもリードがお上手ですわね」


「そんなことはないよ。ジュリアこそ、基礎が出来ているからとても踊りやすい」



踊りながら、小声で会話をします。



「今夜、少しだけ夜更ししないかい?ティレーズが下がった後で」



ふ、二人きりでの夜のデートのお誘いです!

私は赤くなりながらも頷きました。



ダンスが終わると、テーブルに所狭しと並べられたお料理が気になります。

でも、国王陛下も王妃様もノア様も食べていない様ですので、

おそらく主催者側は食べないのでしょう。

とても美味しそうなのに、残念です。



私はひもじい思いをしながら、その日のパーティーを終えたのでした。

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