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Small world  作者: 十八谷 瑠南
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正しい選択

この朝の街並みを見つめていると自分がまっとうな人間として生きているように思えてくる。

正しい選択ばかりをして生きて来たように。

冷たくて大きな窓に私は掌を近づけて触れた。

私の掌の温度が冷えた窓に跡を残す。

その手とは逆の手が持っているコーヒーを私は自分の口に運んだ。

それからふうっと小さなため息をついて再び朝の街を見つめる。

遠くの山まではっきりと見え、気持ちのいい天気だということが窓越しでもわかる。

「…」

果たして私は正しい選択ばかりしてまっとうな人間として生きてこれたのだろうか?

「うーん」

思わず唸り声を上げていた。

実をいうと、そうでもない。

周りが楽しそうにしていると逆に自分は冷めていたり、本当は嬉しいのに嬉しくない振りをしたり、自分がネタにされて笑われていると本気で拗ねてしまったり、心配されたり励まされても冷たく相手を突き放してしまったり。

人生を左右するほどの大したことではないが、こんな小さなことを踏まえても私は正しい選択をしていない。

正しい選択とはきっと、周りが楽しそうなら自分は楽しくなくても乗ること、嬉しかったらすぐに嬉しいという感情を相手に示すこと、自分がネタにされていたら飛びつくこと、心配してもらったり励ましてもらったら心から感謝をすること。

正直に言おう。

「うわ、面倒」

そんなこと考えるだけでも面倒くさい。

なんせ、私は感情のまま、思うがままに自由に人に気なんて使わずに生きてきたものだから。

現に今ひとりごとで出てしまうくらい。

だが、それでふと気がついた。

私は窓から離れて机の上にコーヒーを置くと、ミニコンポのスイッチを入れた。

私の大好きな音楽が部屋を満たす。

とりあえず、朝からひとつ正しいことに気がついた。

“面倒だから”その一言で全て片がつく物事は何ひとつとしてない。

それ以外の理由を見つけるまで、それまでは

「正しい選択を嫌々選んでもいいかもしれない」

それだけで朝を始めるには十分だ。

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