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のんきなことは
大きな雨雲から逃げるように走る。
まるで昔見た映画の一場面のようだ。
大きな宇宙船から逃げる主人公。
そんな気分。
ゴロゴロと雷まで鳴り始めた。
いよいよ攻撃が始まるのかなんて考えてしまう始末。
そんな風に雨雲を楽しめる私は呑気なものだ。
「うわ、降ってきた」
私は雨雲からの攻撃を背中にうけながら、走った。
水たまりを飛び越え、時には自分から飛び込み。
走る。走る。走る。
呑気なことを考えることができる奴は幸福だと思う。
いじめられていたら?誰かをいじめていたら?怯えていたら?怒っていたら?忙しかったら?
「こんなこと考える余裕なんてないだろうな」
辛くて泣いていたら、それどころじゃないし。
優越感に浸っていたら、何が幸福かすらわからなくなる。
びくついていたら、きっとびくついてる原因のことで頭がいっぱいだ。
イライラしていたら、呑気なことですらイライラする。
時間がなかったら、もはや無。
私はにやっと笑ってまだ走る。
激しく降る雨の攻撃の中を。
あの映画の主人公のように。