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Small world  作者: 十八谷 瑠南
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大好きなもの

「自分が一番大好きなものを誰にも受け入れられなかったらどうする?」


私は毛むくじゃらの友人にそう問いかけた。

毛むくじゃらの友人は小さな頭を私の手のひらに乗せて気持ちよさそうに喉を鳴らした。

「君はそんなこと気にしないか。好きなものは好きだよね」

喉を撫でてやると笑ったような顔をして毛むくじゃらの友人はそのまま私の手を枕にして眠ってしまった。

「好きなものは好き。そうやって我を通せればいいんだけど」

通すことが私はできない。

人の意見に流されて生きてきたから。



大好きだったぬいぐるみ。

いとこの女の子に汚いと言われてから物置に入れたまま。



気に入って何度も見ていたDVD。

クラスメイトの誰かが面白くなかったと大きな声で話しているのを聞いてからどこかにいってしまった。



眠る前にいつも読んでいた小説。

同じグループの子たちにオタクみたいと言われて読まなくってしばらくしてから捨てた。



いつも励ましてくれた音楽。

バンドメンバーがバラエティーで笑いものにされているのを見てから、私のお気に入りから削除した。





自分の意思で好きなものを好きと私ははっきり言うことができない。

誰かから批判された時、馬鹿にされた時、自分が大好きだったものがひどくつまらないものに見える。









「じゃあ私は?」










本当にそう聞こえたような気がして、わたしは自分の手のひらを見つめた。

毛むくじゃらの友人の大きな瞳がじっと私を見つめていた。

その瞳は言っている。







「じゃあ、私は?」






私は毛むくじゃらの友人を優しく見つめた。



「あなたのことをつまらないものだなんて思うことはない。これからも。ずっと」



毛むくじゃらの友人は、じゃあいいやなんて顔をして再び私の手を枕にして眠った。

相変わらず笑ったような顔をして眠っている。




ずっと小学生の頃からそばにいた私の毛むくじゃらの友人。




私が今まで手放したものはきっと大好きだったけど、そこまでのものだったのだ。

本当に大好きなものは大丈夫。

簡単には捨てない。

だから人の意見に流されてもそれはそこまで。

本当に大好きなものはこうして手元に残るじゃないか。

手のひらで寝息を立てるこの小さな友人を見て私はそんなことを思った。


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