表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Small world  作者: 十八谷 瑠南
14/24

トレードマーク

「うーん。私は納得いかない」

思わず映画館を出て私はそんな声を上げていた。

「そう?」

「うん」

横にいる友人に大きく頷いた。

「だってあれはさ、ヒロのトレードマークだったんだよ?なのにそれをシリーズぽっとでの新キャラにあげちゃうなんてさ」

「まあ、あの帽子似合ってたよね」

「1からずっとかぶってた大事な大事な帽子だったんだよ!あの帽子のために命を掛けたことまであったのに。それをあげちゃうなんて!あんなぽっとでの新キャラに!」

「それはさっきも聞いた」

「私、やだ。このシリーズ初回からずっと見てたけど・・・あれはダメだよ」

私は大きなため息をついた。

まだすこし蒸し暑い外は私をさらにいらつかせる。

「ねえ」

私はその声に、なによ?とだるそうに答えた。

「あんたにとってヒロの帽子ってそんなに重要?」

「うん。重要だった。あれがないとなんか寂しい」

「まあ、わかるけどね。でも、ヒロらしいじゃん。あげちゃうなんてさ。あんなに大事な帽子」

「うん」

「あの映画私たちが小学生の頃からずっと見てるもんね。大人になってからもずっと。だから寂しく感じるし、きっと変わらないでいてほしいって無意識に心の奥底で思ってるからだよ」

そうか。

だからなのだろうか。

ひどく、拒絶感のある物語に感じてしまったのは。

主人公のヒロは私たちのずっとヒーローだったから。

私は呟いていた。

「あのままで」

「ん?」

「あのままで、いてほしかったなあ」

私は、うーんと唸って大きく伸びをした。

ヒロの物語に出会ったのはまだ小学校に入ったばかりの頃。

あの頃から20年以上がたった。

あの帽子を被ったヒロを私は何度応援し、時には励まされたことか。

あの帽子は彼のトレードマークだったから。

変わって欲しくない。

でも、友人が言ったように正義感あふれるヒロらしい行動だった。

帽子があってもなくてもヒロはヒロじゃないか。

それに何よりも

「でもさ」

殺人級の太陽の光がなぜか私は気持ちよく感じた。

「新作も見たいよねえ~」

何よりも終わってほしくなんてないのだ。

トレードマークを失くしたヒロがどんな活躍をするのか知りたい。

横にいた友人は、そんな私の言葉を聞いて間違いないねと言って笑った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ