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Small world  作者: 十八谷 瑠南
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わからないことがある

わからないことがある。

ずっと疑問だったこと。

どうして私はたまに私のことが嫌いになるのだろうかということ。

最近その疑問が少しとけたような気がする。


自分より美しいもの、自分より器用なもの、自分より強いもの、自分より打ち解けているもの。

そんなものを見るたびに私は自分が嫌いになる。

自分の名前が惨めなものの一人称の様に感じるほどに。

だから自分の見た目や性格だけじゃない、自分の名前も家族も友人もすべて惨めに感じてしまう時がある。

どうして私はあの人とはちがうのか。私はどうしてあんなふうになれないのか。


つまり私は自分の人生の主役であるのに、脇役にひどく憧れ、妬む。

主役なのにね。

主役でいたいから人は常に上を目指そうとするのだろうか。

理想の自分になるために。

理想の自分って?

仕事がバリバリ出来る人?

誰からも好かれて愛される人?

どんな困難にもめげないで夢に向かって立ち向かう人?

まあ、それこそが主役だよね。





「ああ、惨めだなあ~私の人生」






私はそこまでノートに書き記してペンを投げた。







「何ひとつできていない」






なんとなく文を書きたくなった。

“書く事は人をたしかにする”だったかな?

そんな言葉をどこかで聞いたから。

私はそんな理由でノートになんとなく文章を書いたものの、

私の人生は本当に脇役に憧れるだけの人生だったように思えてきたのだ。


小学校の教室にいても、中学校の教室にいても、高校の教室にいても、大学の講義室にいても、会社の事務所にいても。

どこにいても私は、私の周りにいる脇役たちに憧れた。

みんな輝いていた。

みんな素敵だった。

優しかった。

怖かった。

面白かった。

楽しかった。


そんな人たちに私はひどく憧れて憧れて自分が惨めで、悲しくて悲しくて。






「そんなこと思ってたんだなあずっと」






私は開いたノートの横に置いていたコーヒーカップを手に取った。

暖かいホットコーヒーを飲んで少し落ち着いた私はゆっくりカップを置き、

どこかで見たドラマのワンシーンの様に頬杖をついてノートを見つめた。

なぜか、そのとき私は実感した。

「ああ、なんか今」

思わず苦笑してしまった。

それからすぐ私はペンをとった。







惨めになったとき思い出そう。

自分がこの世界の主役であることを。

惨めになったときこそ思い出すのだ。

そして、演じる。

自分にとっての主役を。

そうすると、なんだか楽になる。

ああ、私はこの世界の主役なんだなあって。

そうやって主役は物語を作るのだ。





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