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どうも、悪役にされた令嬢ですけれど  作者: 奏多


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シャーロットの事情 2

 前世ではまだ女子高校生だったシャーロット。

 さえない容姿の彼女にとって、自分を主人公に置き換えて夢の中に浸れる漫画やゲームは、自分がシンデレラになれる素敵なアイテムだった。

 その中のアプリゲームに、こんな力を持つ主人公が、自分の選んだ相手と結ばれていくストーリーのものがあったことを思いだしたのだ。


 まさかと思って、シャーロットは様々なことを試した。

 結果、主人公と同じ力を持っていることが発覚。

 苦しかったり悲しかったりする過去の記憶を、相手の中に作り出せるのだ。そして女性には使えないことを確認した。


 やはりここはゲームと同じ世界。そしてシャーロットは主人公そのものだ。

 確信したシャーロットは喜んだ。この力があれば、今の自分の容姿があるなら、主人公のように素敵な男性と恋に落ち、幸せな結末を迎えることができるはず。


 まずはゲームの初期状態にたどりつくため、シャーロットは力を使った。

 周囲の男性達は老いも若きも、シャーロットに対して負い目がある状態にした。おかげで生活はとても楽になったし、誰もがシャーロットを助けてくれた。

 何人かは心を病んで自殺したりもしたけれど。


 おかげで貴族家の養女に収まることができた。


 その後のシャーロットはゲーム通りに行動した。

 目標は、この国の王子だ。

 彼は実父に捨てられてこの国へ養女に出され、心が傷ついた主人公が、自棄になってニセの記憶で、人を争わせることを繰り返しているのに気づき、止めようとしてくれるのだ。

 最初は反発する主人公。

 だけど王子の誠心誠意の言葉と行動に彼を信じ、その手を取るのだ。


 そこまでは上手くいった。

 あとは王子の婚約者となること。貴族の養女。そもそもの出自も、貴族の娘であれば問題はないはずだった。


 ――セリアンが現れるまでは。


 攻略対象ですら無いセリアンを、シャーロットは放置していた。

 でも彼は、シャーロットが知らぬ間に言葉巧みに王子を説得してしまった。気づけば王子は隣国の王女との婚約が発表され、シャーロットとの結婚は絶望的な状況になっていた。

 それでも王子は、シャーロットを側に置こうとしてくれた。けれど王妃に粗相をしたと言われ、謹慎させられた。


 それがセリアンのせいだということはわかっている。新たな養父から、隣国の侯爵であるセリアンが、王妃と図ってそう取り計らったのだと聞いたから。

 ならばセリアンを陥れればいい。そう思ったのに、彼には近づけなかった。

 マディラ神教のこちらの国の枢機卿は女性。

 彼女自らシャーロットは破門を言い渡され、セリアンどころではなくなったうえ、破門を覆すすべが思いつかなかった。


 これでは結婚もさせられない。むしろ家が傾くきっかけになってしまうと、養父はシャーロットを領地の別荘に押し込めた。

 たった一人、ほんのわずかな使用人しかいない小さな館で暮らすことになった。しかも外部の人間との接触も最小限にさせられていた。


 これはもしかして、ゲームのバッドエンドになってしまったの?

 でもリセットすることもできない。

 王子が結婚したという噂を聞き、即位して王になっても助けに来てはくれない王子のことを詰っているうちに時間が流れ、やがてシャーロットは30代になり……。


 容色すら衰えはじめたシャーロットは半狂乱になった。

 何か、何か手があるはず。

 そうして使用人の子供を使い、そこから金欲しさに寄って来た男を利用し、シャーロットは調べ上げた。

 どこかに、転生しなおせる祝福はないのかと。


 そうしてようやく見つけたのだ。

 過去の自分に、記憶だけだが送ることができるという祝福の持ち主を。



 探し当てた彼女は、どこにでもいるような中年の女性だった。

 彼女は小さいながらに安定して儲けを出している商家の妻らしい。平民の農家の出だというので、たしかに祝福の恩恵を人生に生かしているのだと、シャーロットにもわかった。

 でなければ、農家の娘が商家に嫁ぐことは難しいから。


 疑問に思うとすれば、もっと裕福な暮らしを送れるようになれるはずなのに、そうしなかったことだ。

 シャーロットは疑問に思ったことをそのまま彼女に尋ねた。すると彼女は、苦笑いしながら答えたのだ。

『できるだけ祝福を使わずに生きていられるのなら、その方が楽だから』と。


 彼女も最初は、その力でどんどんと裕福な生活が送れるようになるために、何度も『やり直し』をしたらしい。

 まだ幼い自分に、失敗したと感じた瞬間の記憶を送り、そうしてよりよい選択ができるようにした。

 元が農家の娘なので限界はあるものの、最初はそこそこ大きな商家に嫁ぐことができた。そこから望まれて、後妻ではあるものの貴族の妻にという話も来たことがある。

 でも、後悔して、止めたのだという。


『やっぱり平民に、お貴族様のようなことをし続けるのは無理なのよ』


 彼女はそう言ったけれど、シャーロットには理解できなかった。


『でももっと大きな店を持つ夫に嫁ぐこともできたんでしょう? なぜ今は、こんな小さな……』


 さすがのシャーロットも声をひそめた。その商家の中にいるのだから。それから彼女にも不快だからと怒られるのでは、と今更ながらに気づいたけれど、


『ええ、小さなお店でしょう。でもこれがちょうどいいのよ』


 彼女が言うには、大きくなればなるほど、お店を経営している時にかかわる人も増え、そして問題も大きく複雑になっていく。そんな店を支えなければ、自分の生活も一気に落ちぶれたり、時には商売敵によって冤罪で投獄される可能性だってあるのだ。


『何度もその度に回避しようと力を使って、疲れ果ててしまったの』


 それに最初は裕福な生活がしたくて頑張っていたけれど、ある日気づいてしまったのだという。そうして力を尽くしても、夫を愛していないのなら空しいだけだということに。


『私は穏やかな人生がほしくなって、今の夫の元に落ち着いたのよ』


 だから、彼女はシャーロットの話を受けることにしたのだという。


『愛する人と一緒に歩みたいというのなら、一度だけ手を貸しましょう』


 シャーロットは彼女の話は理解しがたかった。でも彼女の力を借りられるのならそれでいい。

 こうして……シャーロットは過去の自分に記憶を送ったのだ。

 二度と、愛するマクシミリアンとの間を邪魔されないようにするために。


 セリアンのディオアール侯爵家は有名で、シャーロットが隣国へ行くまでの間も、自分とは関係のない家だと思っていた。

 でももともと同じ国にいたのなら、ちょうどいい。

 隣国へ行くまでの間に、セリアンを排除しよう。もしくは、隣国へ決して来ないようにするのだ。


 でもついでに、彼にも愛する人と引き離される哀しみを思い知らせたい。

 ……どうしても復讐せずにはいられなかったのだ。


 だからまず、未来の自分が知っているセリアンの妻と彼を引き裂くことにした。

 彼女――リヴィアが誰かと結婚してしまえばいい。それも悲惨な結婚が一番だ。

 そうしてシャーロットは、記憶のおかげで早々に祝福を使えるようになり、リヴィアの婚約を邪魔し、マルグレット伯爵と結婚させようと画策した。

 それも、セリアンによって邪魔されてしまったが。


「でも聖女としての願いなら、彼は聖職者に戻らざるをえない。この後はリヴィアをもう一度、誰かとんでもない男と結婚させたら……隣国へ行きましょう」


 今度は聖女として彼と出会うのだ。

 その時を夢見て、シャーロットは思わず口に笑みを浮かべていた。

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