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どうも、悪役にされた令嬢ですけれど  作者: 奏多


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セリアンに会いに

 秘密を握られたからというヤン司祭は、強引にセリアンと会う方法を指示してきた。


 ヤン司祭に秘密を握られているうえ、色々と協力してもらった私は、「あの指輪の記憶だけでは足りないんですよね」と言われて、粛々とそれに従うべく、二日後の今日、ヤン司祭との待ち合わせ場所へ向かっていた。

 今回は秘密裡の行動でもあったので、イロナを説き伏せて一人で出てきている。御者の他に従僕もいるので、まぁ大丈夫だろう。


「にしてもセリアンは、どうやってヤン司祭をやりこめたのかしら」


 ぜひに教えてもらいたいものだ、と思う。

 私は秘密を知られて以来、自分の秘密を毎年提供するという苦行をしてきたわけなんだけど、私もヤン司祭の秘密が握れたら、それがストップできる。

 とってもうらやましかった。


 もちろん、どんな秘密を握られたのかと聞いてもヤン司祭は白状しなかった。

 一体どんな手を使われたのかと聞いても、「私の方が聞きたいぐらいですよ」と言われる始末。

 でもセリアンは祝福なんて持っていないはず。


「だとしたら、聖職者同士のつながりで何かヤン司祭の秘密を握ったのかも。どっちにしろヤン司祭が、セリアンと接触して話をしたということなんだろうけれど」


 もし彼が、シャーロットに洗脳された状態だったらどうする気だったのか。いやでも、ヤン司祭も趣味が趣味だけにうかつなことはしない人だから、勝算があってセリアンに話しかけたのだろう。


「じゃあやっぱり、セリアンは正気なのよね……」


 今更ながらに、それを考えるとそわそわとする。

 パーティーの日のベール越しの口づけは、何かシャーロットに有利なように行動した結果なのかと、そんな風に考えてしまったりしたのだ。

 だって少し前のセリアンだったら、そんなことはしなかったと思うから。


「同情で、婚約してくれたんだと思ってたのに」


 本当に、私に恋してくれてるみたいで、戸惑うのだ。

 会えばあの一件も話すことになるかもしれない。

 それが怖いような気がして、セリアンに会うことに尻込みしそうだった。


「お嬢様、到着いたしました」


 御者台にいた従僕が、馬車が止まったところで外から声をかけ、扉を開けた。

 少し離れた場所に見えるのは大聖堂。

 そして扉を開けたすぐそこには、悪そうな笑みを浮かべたヤン司祭がいた。


 私は馬車から降りて、従僕と御者にこの近くで待つように言って、ヤン司祭に先導されて歩き始めた。

 従僕は心配そうにしていたけど、あきらめて御者台に再び乗る。

 ヤン司祭がくすりと笑った。


「案外お似合いですね、それ」

「……そうでしょうか」

「きちんと『少年』らしく見えますよ」


 私は今、ヤン司祭から昨日送られてきた修道士服を着ていた。

 黒い詰襟の裾長の長衣に、青い帯。

 下にもシャツやズボンを着こんでいるので、服のラインから女だとはよくわからないだろうけれど。頭は黒い帽子の中に、まとめた髪を突っ込んで隠している。時に長い髪の修道士や司祭もいるし、こうして帽子の中にまとめている人もいるので、そこは不審にはおもわれないだろう。


 それよりも、衣服を変えるだけで男っぽく見えると言われたことが、ちょっともやもやしないでもない。

 シャーロットぐらい綺麗だったら、こんな変装ぐらいでは男に見えなかったでしょうに。なんだか自分が情けないような気がしてくる。

 ヤン司祭は、私のそんな落ち込みも察してしまったようだ。


「大丈夫、お可愛らしいですよ」

「……おほめにあずかり恐縮です。司祭様」


 心がこもっていない賛辞には、棒読みで返事を返しておいた。

 そうして私は、ヤン司祭の後ろをついて行くようにして、大聖堂へ入って行った。

 ヤン司祭はあらかじめ誰かと会う約束をとりつけていたようだ。近くを通りがかった修道士に声をかける。


「もし、アーダルド司祭はどちらに?」

「お部屋にいらっしゃるかと。ご案内しましょうか」

「ええ、頼みます。お昼すぎに会うお約束をしていたのですよ」


 にこにこと言うヤン司祭と私は、修道士に先導されて大聖堂の奥へと歩を進める。

 内心、こんな簡単に入れてしまうことにびっくりしている。でも私一人ではなくて、ヤン司祭がいて、実際に面会の予定があるからこそだ。


「こちらです」

「ありがとう」


 修道士が案内したのは、二階の一室だった。そこは司祭達の部屋か執務室がある棟なんだろう。

 修道士が立ち去り、ヤン司祭がノックして扉を開けたので、私も続けてその部屋に入るのかと思った。

 でも振り返ったヤン司祭が言う。


「あ、君は庭にでもいてね」

「はい?」

「そこの君、うちの修道士を東の庭まで案内してもらっていいかな? リヴィー、君はしばらくそこで時間をつぶしていてください」

「わかりました」


 修道士は、今度は私を手招いて、庭まで連れて行ってくれようとする。

 私はうろたえながらも、手を振るヤン司祭の仕草に、たぶん庭に行けば彼に会える手はずになっているのだろうと理解した。


 見知らぬ修道士について歩くのは、緊張した。なにせ男装して、しかも修道士でもないのに偽っているのだ。ヤン司祭がいた時には、上手く切り抜けてくれる人がいる安心感があったけれど、一人ではどうしたらいいやら。

 でもなんとか、問題もなく大聖堂の庭に出た。


 大聖堂の庭はけっこう広かった。木々も多く、花壇には美しい花が咲き乱れていた。

 薬草なんかを育てている場所もあるようで、奥にはガラスの温室のようなものまで見える。

 この中の一体どこにいるのか。

 探そうとしたところで、私は遠くの木立の合間から、じっと私を見ている人に気づいた。


「セリアン……」


 庭の中にセリアンが立って待っていた。

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