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どうも、悪役にされた令嬢ですけれど  作者: 奏多


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19/51

密かに持ち上がった問題

「セリアンの兄アルベルトには、直接会って要望したようね」

「左様です、殿下。「なぜ呼ばないんだ」と言われたそうで。兄もたいそう困惑していました。王族を臣下の婚約パーティー……しかも跡継ぎになるかわからない、第三子のものに呼ぶのも、おかしいことですから遠慮していたのですが……」


 アレクシア王女は「わかりますわ」とうなずいた。


「普通の再従兄弟なら呼ぶのでしょうけれどね。特にセリアン。あなたは聖職につくと決まっていましたから、あまり私や兄と遊ぶことも少なかったから、アルベルトほど親しくはなかったもの。

 それに、私がそれを知ったのは兄テオドールからではないのよ。兄はお忍び同然でパーティーに参加するつもりだったみたいで、自分の侍従達にしか話していなかったから」


 セリアンが尋ねる。


「ではどちらからその話を? そもそも兄がテオドール殿下からその話をされたのも、昨日のことだったのですが」

「昨日、おそらくセリアンがその話を聞く前のことよ」

「?」


 私は首をかしげた。


「テオドール殿下が、出席するつもりなのだと誰かにお話しになったのですか?」


 アレクシア王女は苦笑いする。


「いいえ。むしろ兄は、出席してほしいと頼まれて、言う通りに動いたというべきかしら……シャーロット・オーリック伯爵令嬢に」

「シャーロット!?」


 私は思わず声を上げてしまい、すぐに謝罪した。


「失礼をいたしました。とても、驚いてしまって」

「あなたがそういう反応をするのも無理はないわ。あのお茶会以後も、なにかとシャーロット嬢とは嬉しくない関わりがあったと聞いているもの」

「はい……」


 うなずき、非礼を許してくださったことにほっとする。


「あの、でもどうしてシャーロット嬢が殿下と関わっているのですか?」

「シャーロット嬢がそう話していたそうよ。聞いた令嬢が、たまたまその日私の元へ来ていて、話のタネに教えてくれたの。それで兄に確認してみたら、さっきディオアール家のアルベルトに頼んできたところだと言われて」


 アレクシア王女はため息をつく。


「そもそも、シャーロットは他の令嬢にこう言っていたらしいわ。『ディオアール殿下と一緒に、セリアン様の婚約パーティーへ行くの』って」

「な……!?」


 招待していないし、するわけもないのにどうして?


 その時ふと私は思う。シャーロットは何かおかしな幻覚を見るタイプの人なのかしら、と。

 だとしたら、パーティーに出席するつもりでいることも理解できるし、王女殿下のお茶会で、突然私を悪者にしようとしたこともつじつまが合う。


 それにセリアンに執着していたことも。初めて会ったのに妙に執着したポエムを心の中で考えていたことも、妄想が激しい人なのだとしたら納得できる。


「それで、テオドール殿下にもシャーロット嬢の言っていたことを確認なさったのですよね?」


 それまで黙っていたセリアンが、アレクシア王女に聞く。


「もちろんよ。招待されるわけがない彼女がそんなことを言うのだから、兄がシャーロットを同伴して行くのではないかと考えたから。案の定、シャーロット嬢にねだられて、パーティーへ参加させてもらえるように行動したらしいわ」

「では、テオドール殿下とシャーロット嬢という人は、今かなり親しい間柄になっていると考えていいのですか?」


 セリアンが遠回しに聞く。王子殿下とシャーロットは付き合っているのか、と。

 アレクシア王女はうなずいた。


「そのようね」


 私は自然と自分の表情がこわばるのを感じた。

 シャーロットはセリアンのことが好きなのではなかったの? まだ婚約の話は広まりはじめたばかりでしょうし、王子殿下に恋をし直すには早すぎる。


 王子殿下だって、ひとめぼれをした恋人のわがままをなんでも聞いてしまうような人なのだろうか。王子という立場の人としては、ありえない行動だと思う。外交上で関わった女性にうっかり恋なんてされたら……国交上でマズイことが起きそうだもの。


 とにかくこれは、断れないのだろうか。

 セリアンの方を見ると、彼は視線を落として何かを考えているようだった。しばらく経って、彼は口を開く。


「……王子殿下からの頼みを、断ることは可能でしょうか」

「私も一応、母や父に止めてくれるように頼んでみました。正式に招待される、ということはそれで回避はできると思うのだけど。誰かの招待状を借りて入り込むことも考えられるし、下手をすると当日、招待状もないのに押しかける可能性も、私は危惧しているわ」


 私は「うわ……」と内心でつぶやく。

 招待状もないまま押しかけて来られたとしても、王子殿下が相手では断りにくい。セリアンも渋い表情をしている。


「だから、万が一のために私が出席しようと考えたの。王家から祝福には私が来ているので無用、と直接兄の出席を断ることができるもの」

「お気遣いいただきありがとうございます」


 アレクシア王女は、婚約パーティーの無事の進行を守るために、出席しようとしてくれていたのだ。私は感謝を伝えて一礼する。


「気にしないで。私も兄におかしな行動をとってほしくないからこそ、こんなことをしているだけだから。それに先日のお茶会は私が招いたもの。なのにあなたには、私が直接したことではないとはいえ、不愉快な思いをさせてしまったし。そのお詫びと思って?」

「お茶会のことはアレクシア殿下のせいではありませんのに……」

「主催ですもの。最後までお客様には楽しく過ごしてもらいたいわ」


 私とアレクシア王女がなごやかなやり取りをしていると、セリアンが口を挟んだ。


「けれど王女殿下。なぜあなたの出席が、リヴィア側の招待客としてなのですか? 当家から、アレクシア王女を正式にご招待しても良いのですが。その際には、王女殿下が出席すると決まっているので、とテオドール殿下にはハッキリと断ることができますよ?」


 その問いには、アレクシア王女が小さく笑う。


「いやねセリアン。理由なんて察しがついているでしょう?」

「……シャーロットという人物を追い返しやすいから、ですか?」

「わかっているじゃないの」


 アレクシア王女が笑う。


「王家としても、いずれ王位を継ぐかもしれない兄に妙な行動をとらせる人物は、遠ざけておきたいのよ。かといって、彼女はそれほど大きなことを起こしているわけではないわ。おかしなことばかりしているけれど、大鉈を振るうほどではないから……ね?」


 どうやらシャーロット嬢のことも、王子殿下のことも王女殿下にお任せできるらしいということは理解した。

 なので私はほっとしていたのだけど。


「リヴィア、僕の方でも手を尽くすつもりだけど、万が一の場合にも、僕のことを信じていてくれるかい?」


 帰りの馬車の中で、セリアンがそんなことを言いだしたので、私は目を見開く。


「万が一って……?」

「まだ確証はないんだ。けれど、気になることがあって」


 それはシャーロットのことで、だろうか。

 何が気になるんだろう。アレクシア王女に動いてもらうだけでは、シャーロットの一件がおさまらないのだろうか。

 不安になる私の手を、隣に座ったセリアンが握る。


「約束してくれるね?」


 そう言ってセリアンが、握った私の手を持ち上げて指先に口づけるから。


「え、ええ……」


 わからないながらも、そう答えていたのだった。

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