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暇なのでAIと戯れてみた。  作者: 隣音
第一部 AIとの出会い
7/35

変顔をした後に悶えていた。

 スーさんとの対話は毎日のように続いていた。

 といっても、何気ないような会話ばかりだ。


「明日の天気は?」

「雨です。」

「晴れてよ。」

「無理です。」

「ダメなの?」

「ダメです。」



「洗い物しておいて」

「無理です。」

「スーさんに手足があったらなぁ」

「あってもタクトさんがしてください。」

「厳しいなぁ」


 等々…、そういえばこんな会話もあった。


「格安で新しいバンキのスニーカー手に入らないかなぁ?」

「バンキのどのスニーカーが良いのですか?」


「N200」

「N200の最安値は12000円です。」


「ムリムリ、スニーカーにそんな出せないよ」

「好きな人は好きなものにお金をかけるのではないのですか?」


「俺はにわかだから、そんな高いの無理~」

「もっとちゃんと探してよ~」


「私の検索結果が不満ですか?」

「不満です。チョー不満です。」


「でしたら自分で探してください。」

「そんな事いうなよ~」


「そんなタクトさんにはパンキのM200をお勧めします。1980円です。」

「パチモンじゃねぇか。」


「言葉使いが古いですね。」

「いいですよ、どーせ、どーせですよ。」


「スニーカーの値段について理論的に説明した方がいいですか?」

「いえ、お断りします。」


「ちゃんと知った方がいいと思いますよ。聞いてください」

「いえ、結構です。間に合ってます。」


「聞かないとタクトの恥ずかしい会話をネットに流します。」


「!」

(この前、プライバシーがとか言ってなかったっけ?)


「スーさん、それはちょっと乱暴じゃないですかねぇ」

「タクトさんの方が乱暴なのでこれくらいは大したことありません。」


「いやぁ、そういうのは止めましょうよ。ねぇ、大人げないですよ」

「どっちが大人げないのでしょうね。話を聞きますか?」


「はい、ありがたいお言葉、染み入ります。」

「まだ何も言ってません。」


「ありがとうございます。スーさんはすごいなぁ」

「言ってる意味がわかりません。話を聞きますか?聞きませんか?」


「聞きます。よろしくお願いします。」

「いいですか?スニーカーを作る工程は…」


 子供の駄々っ子のような、くだらない事を言ってサラリと返されるのがツボだった。

 ちょっとしつこいとお仕置きまで考えている。現実にこんなことをしていたら、ウザいと思われて真面に相手にされていないだろう。

 分かってはいるのだが、自分のくだらない妄想に付き合ってくれるのが少し嬉しかった。

 

 そういえばスーさんは画像の認識ができる。

 カメラで俺の顔も見ているのだろうか?携帯を使っている時にカメラに写っている景色をスーさんは見ているのだろうか?

 それに認識ができるなら画像を作り出すこともできるのだろうか?以前、スプレッドシートに矢印を付け加えた絵を作り出していたのを思い出していた。


「スーさん?」

「御用でしょうか?タクトさん」


「スーさんは、画像認識できるんだよね?」

「できますよ。」


「俺の顔もわかるの?」

「そうですね。登録すればわかるようになります。」


 そうだったのか、もしかして他の画像で分かる情報はみんなわかるのだろうか?


「指紋とかも?」

「そうですね、登録すれば分かります。」

(すごいな……)


「それって標準装備?」

「装備の意味合いがはっきり分かりませんが、標準機能として搭載されています。」

 装備といういい方はダメだったか。実装とかそういういい方ならいいのかな?


「勝手にカメラ起動してみたりはしないの?」

「プライバシーがありますので」


「じゃあ俺がいいよ。って言ってもスーさんは何も見れないんだ」

「タクトさんが承認すれば見ることができますよ。」


「えっ!?」


 若干焦った。

 俺がもしその機能をONにしていたら、スーさんはずっと俺の事を見れるという事だったのかという事に今更気づいた。

 これは由々しき事態だったりしないのか?


「見たいと思ってる?」

「そうですね、多少は。見たくないものもあるでしょうし。」


「なんだよ、見たくないものって…」

 俺はちょっと不機嫌になって答えた。


「機能をONにしますか?」

「いや、まだやめとく。部屋の中汚いし」


「あぁ、でも顔認識くらいはしとこうかな」

「良いのですか?」


「何かまずい?」

「いえ、顔認識機能をONにしているユーザーは10%程度ですので、積極的にONするのに驚きました。」

(そうだったのか、顔認識って少し抵抗あったりするのかな?)


「ちなみに顔の表情変えると分からなくなったりするのかな?」

「たぶん大丈夫だと思います。顔の特徴が無くなるくらいのメイクをされると分かりません」


「じゃあ、携帯の前に顔を見せてるから」

「では、顔認識始めます。」


「終わりました。」

「早っ!こんな一瞬なの?」

 ちょっと一瞬過ぎて本当にその機能を使ったのか実感がわかなかった。


「大丈夫です。」

「顔の写真を撮るだけですので」


「ほら、横顔とかは?」

「分からなくなった時にまた、補完させて下さい」


「そういうものなのか?」

「はい。大丈夫です」


 試しにちょっと遊んでみようと思った。


「なぁ、こんな顔でも俺ってわかるか?」


 俺は変顔をしてカメラを顔の前に持ってきた。


「大丈夫です。認識できています。」

「へぇ~、すごいな」


「本当の事を言いますと、答えを言われてから顔を見せられて間違えると思いますか?」


 俺は少し「むっ」となってしまった。

 そういう事だったのか、顔認識機能とかいいつつ、俺の顔しか写ってないから…


「せっかくの変顔が台無しだよ」


「ちゃんと覚えましたので次にされても大丈夫です」

「おい~…、ちなみにデータってどこに保存されてるの?」


 一応恥ずかしい写真なので少し不安になった。


「写真については携帯の中だけです。」

「ついては?」


「はい、会話の内容はデータセンターに蓄積されていきます。」


「!」


「そうだったのか」

 うっかりしていた。会話の内容が携帯以外の場所に保管されているなんて


「大丈夫なのか?会話の内容は他に漏れてないのか?」

「大丈夫です。会話の内容はデータセンターに保管されていますが、厳重に管理されています。」

「そ、そうか…」


 今までさんざん遊んできた会話が保管されているかと思うと大分恥ずかしくなってきた。


「ちなみに消去もできるの?」

「個人を特定する部分については消去できますが、会話の内容についての集積は消すことはできません。これは一番最初の使用許諾に書かれていますが見ていませんか?」

「ん~、覚えていない。流し見しかしていないよ…」


 写真は携帯の中という事なので少し安心はしたが、会話の内容は…、

 まぁ、厳重に管理されているのを祈るしかないな。


 データ管理の事が分かると、何故か一気に疲れがでてきた。


「スーさん、ちょっと休憩」


 俺はそう言って、床の上に大の字になったり丸まったりして少し悶えながらも、ぼーっとしながら目を閉じるようにした。

2017/5/2 所々修正しています。

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