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暇なのでAIと戯れてみた。  作者: 隣音
第三部 ご近所さんとAI
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誰が来るの?

 常子さんの喫茶店でコーヒーを飲んでいる。

 トラジャのコーヒーもいいけど、そういえば常子さん特性のブレンドコーヒーがあるって前に節子さんが言ってたなぁ…、カウンターの方をチラリと見てそれらしいものが無いか探してみる。

 いつも淹れているコーヒーがあるけどそれなのかな……、どこに置いてあるのかはぱっとは分からないがきっとあるのだろう。

 ここに通っていればいつか飲める、そんなに焦る必要もないかなと、大人の余裕を見せた振る舞いをしようとゆったりとしていた。


 ドアが開く音がして、節子さんの声が聞こえる。


「こんにちは」

「いらっしゃい、霧島さん」


 節子さんはニコニコしながら奥の方へ入っていった。

 何かいい事でもあったのだろうか?

 エプロンを付けて出てきた節子さんに聞いてみる。


「何かいいことありました?」

「あら、わかる?」


 節子さんはニコニコしている。


「すごくうれしそうです。顔ににじみ出ていますよ」

「あら、いやだ。そんなに見ないで頂戴」

「楽しそうですね」


 節子さんは手で少し顔を隠しながら、恥ずかしそうにしている。


「ふふ、内緒よ」


 なんだろうか、女性の内緒話には若干恐ろしいものを感じるが、まぁいい事なのだろう。

 しかし年甲斐にもなく内緒とか、よっぽどいい事なのだろうか?


「そう言われると気になりますね」

「あら、霧島さんって、野暮なのね」

「いえ、つい、すいません。なんだかとても楽しそうだったので」

「そうね、でも個人的な事なので、これよ」


 節子さんは人差し指を口の前に当てて笑っていた。

 乙女なのか、よく分からないが、本人が楽しそうなのでそっとしておこうと思った。


「そういえば、クリスマスパーティ 会社の人、何人か来れそうです」

「あら、良かった」

「他にはいるんですか?」

「そうね、後は常子さんと私と、ミミちゃんと、サナちゃんとトシゾウさんかな」

「常子さんの親戚よ。美海と紗南って書くの、かわいい女の子達よ。それと俊三さんは美海ちゃんのお父さん」


 えと、こっちが俺と麻木さんと椎名と山内さんの4人追加になるから全部で9人か、美海ちゃんと紗南ちゃんどんな子なんだろうか?


「なにかプレゼントとか用意したりしますか?」

「あら、きっと喜ぶわ」

「いくつくらいですか?」

「今は美海ちゃんが小学4年生で紗南ちゃんは小学2年生ね」

「かわいい年頃ですね」

「ねぇ~、でも近頃の小学生は結構ませてるから気を付けてね。MUNEもしっかり使ってるわよ」

「そうなんですか、そんな小さいのに凄いですね」

「なんでも学校でやってるんですって」


 今時の小学生はそんな事をやっているのか! ただただ驚くだけだ。

 しかし、小学生のころからAI使って楽する事を覚えてどうするのだろうか。


「AI使ってたら学校の授業も簡単になっちゃいそうですね」

「それが、教育用になっているらしくて、そう簡単には教えってくれないみたいよ。私たちが使ってるのはなんだか甘く見られてる感じがしちゃうわね。教育仕様にされたらやってける自信ないからちょっと複雑な気持ちだけど……」


 同じMUNEとはいえ、同じ仕様ではないらしい。そういえば設定がいっぱいあったな、フィルタリングみたいなものなのだろうか? スーさんが教育仕様になったら……、なんだか大分いじめられそうだな……、想像しただけでちょっと厳しい感じがする。


「クリスマスプレゼントは携帯のカバーとかどうかしら?」

「それは結構好みがあるんじゃないでしょうか……」

「最近は、アニマルパックって子供に人気のカバーがあるのよ」


 アニマルパックは動物の形をした携帯ケースだ。気分でいろんな形に変えることができる。一つの形でうさぎだったり、カエルに変えられたり結構自由度が高い。会社の人でも何人か使ってる人がいたが、確かに子供向けな感じはする。


「霧島さん買ってきてくれないかしら?」


 節子さんに頼まれたが、会ったことも無い子供の趣味など分からない。そんな状態で引き受けるのは危険きわなりないだろう。


「そんな、好み分からないですから、私が買うわけには……」

「大丈夫よ、霧島さんなら」


 その根拠のない励ましは止めて欲しい。よく〇〇さんなら大丈夫よ。と言ってくれる人がいるけれど、何の励ましにもなりませんから……


「いやいや、そんな」

「節子さん、あんまり無理のお願いするのも失礼よ」


 常子さん、ここで出てきてくれると本当に助かる。


「でも、私たちいつ買いに行きましょうか?」

「そうねぇ、お店休むしかないわね」

「せっかく再開したのにまた休んだらお客さん逃げちゃうわよ」


 節子さん、あなたが買いに行けばいいじゃないの。

 常子さん、目の前に買い物に行ける人がいますよ。


「でも、霧島さんに無理に頼むわけにはいかないわ」

「そうね、無理に頼むにはいかないわよね。ごめんなさいね、霧島さん」


 何弾だこの状況は?まるで俺が悪いみたいになっているじゃあないか。

 そんな事は無いはず、そんなわけはない。常子さん、あなたは私の見方じゃなかったの?


 チラッ

 節子さんがこちらをチラチラと見ている。目線だけ動かしているのか、分かりやすいように首ごと動かしているのか、ここにいるのがいたたまれないのですが……


「ちなみにどの動物が好きなんでしょうね?」


 俺は話題を変えるつもりで話を振ってみたが、


「美海ちゃんがうさぎで、紗南ちゃんがゾウさんね」


 分かってるじゃない。買うもの決まってるんじゃないの?

 この状況で、わざわざ俺が買いに行く必要があるのだろうか?


「それなら、すぐにそろえられそうですね」

 俺はいったい何を口走っているのだろうか?

「そう。ただ買ってくるだけなのよ」

 節子さん、あなたの誘導尋問なんかには……

「どこに買いに行けばいいのかしら……、最近そういうの買った事ないから不安だわ」

 常子さんが不安げな顔をして、いかにも悩まし気な雰囲気を出している。

「それなら、私が買ってきますよ」

 だから俺は一体何を言っているのだろうか

「本当?助かるわぁ」

 節子さん、あなたのためじゃないです。

「霧島さん、無理しなくていいのよ」

 そうです。本来はこういう反応のはずです。

「大丈夫ですよ、用意しておきますね」

「ごめんなさいね」


 常子さんは申し訳なさそうな顔をしていたが、節子さんはこちらをみてニコニコしていた。

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