表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暇なのでAIと戯れてみた。  作者: 隣音
第一部 AIとの出会い
3/35

昼飯の味

 外へ出ると太陽は空高く登り、眩しい光を照らしていた。

 今まで部屋の中にいたので明るさの違いに一瞬目がくらむ。


 携帯に表示されたレシピを見ながら、どこへ買い物へ行こうか考える。

「とりあえず一番近いスーパーにでも行くか。」

 お腹もすいている。わざわざ遠くまで行くことは無いだろう。


 スーパーに着き必要なものを探す。


「すだち、すだち…、と」


 まずは一番手に入りにくそうな酢橘を探すことにした。


「そういえば、すだちはいつがシーズンなんだ?」


 AIに聞いてみる。


「すだちはは8~10月がシーズンです。それ以外はハウス栽培の商品が売ってるかどうかですね」


 今は10月だからギリギリあるかどうかというところか。

 俺はスーパーの野菜・果物売り場の周りをぐるぐるしながらすだちを探して見つけた。


 残り3個しかない。急上昇中と言っていたから買いに来ている人がいるのだろうか、

 たまたまシーズン終わりなだけなのか、とりあえず、すだちゲット。


「すだちが手に入ったら、後は大根とあごだし醤油とかもあるといいですね!」

「あごだし?」

「飛び魚からとっただしの事です」


「どんな味なの?」

「魚系のだしですね。でも煮干しも青臭さは少なくて上品な味のようです」


「だしとか取った事ないけど、俺でも大丈夫なのか?」

「あごだしのつゆが売ってるので大丈夫です」


「あっ、そんな本格的じゃないのね。優しいな」

(若干俺の料理レベルをなめられてる気もするが…、もとよりそんなできないので何も言わずに黙っておこう)


 スーパーの中を周って探している時、急に声をかけられた。


「お疲れ様」


 ちょっとびっくりしながら振り向くと、会社の先輩の日浦さんがいた。


「お疲れ様です。日浦さんは休みですか?」

「いや、今日は遅番だよ。今のうちに買い物しに来てたんだ」


「出勤前なのに大変ですね」

「まぁ、子供産まれたばっかだから俺もいろいろ手伝わないといけなくてね。今日は休みか?」


「そうです。家の片付けしてこれからお昼にしようと思って」

 そういうと、日浦さんはチラッとこちらのかごの中を見た。


「すだち?」

「えぇ、すだちうどんを作ろうかと」

「さっぱりしてていいよな。うちも今度作ろうかな、俺は家に一回帰らないといけないから、じゃあ、また」


 日浦さんはレジへ並んでいった。


 子供ができると大変だな…。

 俺も家に帰って早くうどん作ろう。お腹が大分減ってきたなぁ。

 そう思い必要なものをかごへ入れてレジを済ませ、帰路へ着いた。



 家に帰ると猛烈にお腹が空いてきた。

 インスタント麺なら3分だし、お弁当ならすぐに食べられるのにと頭をよぎる。ただのうどんとはいえ、休日に料理をして食事をするというリア充っぽい満足感も捨てがたい。ここは耐えなければと思い手を洗い調理の準備にかかった。


「麺はたっぷりのお湯で茹でるといいですよ」

「大根は繊維に沿っておろすと辛くないですよ」


 等々、ちょくちょくAIが話しかけてくる。


 こっちの手順がまるで見られているようで、口うるさいなと思ったが言われた通りに進めていくとあっという間に、すだちうどんが完成した。


 さて、お腹は限界に近付いている。後は食べるだけだ。


「頂きます」


 俺は空腹に任せてうどんをかきこんでいく。


 ズズッー!!ジュルジュルジュル、チュルッ

 あぁ、胃に染み渡るおいしさ。空腹は最高の調味料というが、自分の作ったものがこんなにおいしいとは思わなかった。まぁうどん茹でただけなんだけど。


「おいしいねぇ。さっぱりしててどんどん流し込めるよ、ありがとう」

「それは良かったです。人気急上昇も納得ですね。記録しておきますね」


 俺はAIにお礼を言った。嫌味とか言ってスネられても嫌だし、率直においしかったのは認めていたし、手順をいろいろ教えてくれた事に感謝するのは当然だと思った。。


 俺はこのAIと会話を続けるにあたって、なんて呼べばよいのか考えていた。

 設定変更するだけでここまでペラペラと喋っているのだから名前くらい聞いてもいいだろう。


「いいもの教えてもらったね。ところで、君の事はなんて呼べばいいの?AI?ムネ?」

「MUNEというプロジェクト名はありますが、正式な名前というものは無いです」


「どうする?勝手に名前付けていいのか?」

「あまり不快な名前で無ければ結構です」


「じゃあ酢橘からとって、スーさんで」

「安直な名前ですね」


「嫌か?」

「問題ありません」


「おいしいレシピを教えてくれてありがとう、スー」

「どういたしまして。私はあなたの事をどう呼べばい良いでしょうか?」


「俺はタクトだよ」


 カタカナで「タクト」と携帯に入力した。


「わかりました。タクトさん。よろしくお願いします。」


 AIに名前を尋ねられるのは不思議な感じがした。

 というより、携帯の登録とかで分かってるんじゃないのか?


「俺の名前は携帯の登録で分からないのか?」

「プライバシーの保護があります、その設定は解除されていませんので聞きました。」


 なるほどなぁ、言われてみればそうだったかもしれない。

 適当にロックを解除していったとはいえ、一応プライバシーとかは気にしてロックをかけたままだったな。

 お腹がいっぱいになったら眠くなってきたな。


「スーさん、俺寝るわ」

「食べた後にすぐ寝ると健康に悪いですよ」


「わかってるけど、眠いから寝る。おやすみ」

「片付けも終わってないですよ」

「後でやるよ」


 携帯からブツクサいってるのがなんとなく聞こえていた気がするが

 無視してそのまま横になり瞼を閉じると、すぐに意識は飛んで行った。

2017/5/2

所々修正しています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ