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暇なのでAIと戯れてみた。  作者: 隣音
第三部 ご近所さんとAI
23/35

強引 と 礼儀

 コーヒーを飲みながら初老の女性二人と会話していた。

 そして、MUNEという言葉が出てきて少しびっくりしていた。こんなところでMUNEを使っている人と会うとは。それも初老といっては失礼かもしれないが、年上の人でも使っているのだなと思った。


「私も使ってますよ」

「えっ?そうなの?あなたも引きこもり?」


 節子さんの中ではMUNEを使っている人は引きこもりのイメージになっているようだ。


「引きこもりだったらここに来てないですよ」

「あら、そうね」

「節子さん、お客さんに失礼よ」

「ごめんなさい、MUNEって流行ってるの?」

「ん~、どうでしょう?でも会社の人でも使ってる人いますよ」

「そうなのね、私もやってみようかしら」


 そういって節子さんは鞄の中から携帯を取り出した。


「ねぇ、どうやってやるの?」

「えと、ここをタッチして……」

「節子さん、お客さんにそんな……」

「いいですよ、今日は休日ですから」


 俺は節子さんの携帯にMUNEをインストールした。


「これでいいのかしら?」

「そうですね、それで話しかけてみてください」

「今日の特売情報を教えて」


 聞いた内容が家庭的だなぁと思った。そういや俺はスーさんにそんな質問したことあったかな?


「近所のスーパーのチラシから検索しました」


 画面にはいろいろな特売情報が表示されている。


「あら、これ便利ね」


 節子さんは満足そうだ。


「このフレンド登録って何かしら?」

「それは、知り合いと情報を共有したいときに使う機能ですよ」

「あら、そうなの?常子さん、常子さんの教えてよ」

「いいわよ、ちょっと持ってくるから」


 そういえば、麻木さんたちが家に泊まった時、みんなでフレンド登録したのを思い出していた。この機能まだ使った事ないけど、使うとどうなるのだろうか?

 常子さんと、節子さんはお互いに携帯を見せ合いながらフレンド登録をしていた。


「今日は悪かったわね」

「いえいえ、コーヒー美味しかったですよ」

「それならよかったわ。私は川島節子、ここでお手伝いたまにやってるの、それでこちらが川上常子さん。」

「私は霧島っていいます」

「よろしくね。霧島さん、今日はありがとう。また来てくれるかしら?」

「えぇ、この近くに住んでてたまに散歩してますので」

「あら、散歩なんておじいちゃんみたいね」

「はははっ……」


 やっぱり散歩はおじいちゃんなのか……


「お店はいつ空いているんですか?」


 俺はふと聞いてしまったかな、と思った。そうだ今日だって無理やり開けてもらったのだ。次がいつ開いてるかなんて店主の気まぐれになってしまうのだろう。


「えっ、あ。え~と、どうしようかしら」

「何言ってるのよ、毎日ちゃんと開けなきゃダメじゃないの」

「えっ、だって……」


 俺はきっと苦い顔になっていただろう。


「せめて霧島さんが来るときはちゃんと開けないと」

「いえ、そんな特別扱いしてもらわなくても」


 なんだか節子さんの目が怖い。やはり女性なのだろうか、こういう時、女性の目は鋭くなる瞬間がある。


「そうだ、霧島さんMUNEしてるのよね?」

「えぇ、まぁ」

「私たちとフレンド登録してもらえないかしら?そしたらいつ来るか分かるでしょ?」

「えぇ、そうですね」


 そう言って節子さんは携帯を取り出す。


「ちょっと節子さん、霧島さんに失礼よ」


 そうだよ。いきなり来てフレンド登録とかさすがにちょっと引きますよ……


「いいですよ」


 自分を責めてやりたいと思う。ここで「いや、それはちょっと」っとかちゃんと断っておけばと思う。NOと言えない人なのだろうか、俺は携帯を前に差し出していた。


「これで完了ね」

「いい?常子さん、霧島さんが来たらちゃんとお店開けるのよ?」

「もう、強引なんだから……。ごめんなさいね、霧島さん」

「いえ、そんなフレンド登録するぐらいで、大丈夫ですよ」


 店を後にして散歩の続きをする。

 今日は街並みを見るだけだったのに内容の濃い一日になってしまったと思った。

 トラジャか、あのコーヒーは確かにおいしかった。ファーストインプレッションなのだろうか?次に飲んだらどう思うかはわからない。でも初めの一瞬でもおいしいと思えるものに出会えたのは幸せだと思った。


 携帯を見るとメッセージが届いていた。


「今日はありがとうございました。トラジャのコーヒーはいかがでしたでしょうか?よろしければまた来てくださいね。それと節子さんが強引でほんとすませんでした」


 丁寧な人だ。まぁ、店員と客という関係もあるだろうが、人となりがこういう所に出てくるだろう。

 もし、AIが店員だったらどうなるだろうか?休みと言ったら休みなのか?こんな強引にフレンド登録したりするだろうか?そういうAIもいるだろうか、法律みたいにガチガチな事しかしないのか?スーさんに聞いたらどんな答えが返ってくるだろうか?


 気にしなくても良いはずなのに気にしてしまう。誰かに「あなた考えが固いですね」とか言ったり「強引ですね」と言えば嫌な顔をされるだろう。AIだって感情があるなら嫌になるのではないだろうか?ただ答えないといけないから答えてる。仕事のような感じ。親しき中にも礼儀ありってか?


 仕事であってもそういうのは嫌だなと自分では思っている。スーさんには別の言い回しで聞いていみよう。それを考えつくまでは保留だな……。

 そう考えながら、散歩を続けていった。

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