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#60 安全対策

前話の終わり方がもやもやするようだったので、早めに次話を投稿しておきます!

もしかしたらまだもやもやが消えないかもしれませんが…

「さっそく相手と話し合いを行う場合の動きについて話し合うとしよう。まずは、ある程度の案は既に考えているから、一度聞いてみて欲しい。もし抜けている部分があれば、いつでも言ってくれて構わないからな」


 モニターの向こうのアントたちや、隣にいる妖精たちにも異論はないようだ。

 さっそく、こちらの案を伝えていくとしよう。抜けている部分が無ければいいのだが……


「まず、10日後の返事だが、これは名前持ちのアントレディアを派遣する。その際だが、妖精のうちの誰かに同行してもらう予定だ。フィーネ、確か妖精は相手の言葉に乗せられた意思を読み取れるはずだったよな?」

「うん!そうだよ!」


 アーマイゼたちは、エンプレスアントに進化する以前は言葉を自由に操ることはできていなかったが、フィーネたち妖精は会話をすることができていた。

 これは妖精には、相手の言葉に乗せられた意思を直接読み取る能力があるからだと聞いている。

 細部まで読み取ることはできないため、相手が嘘をついているか、隠し事や害意が無いかまでしか読み取れないだろうが、十分だろう。

 今回はこの能力をいろいろな箇所で役立ててもらうことになる。


「妖精のこの能力は、相手の言葉が真実であるかどうかを判断することができる。そこで、エルフ側と接触した時に相手の目的を一度聞いてもらう。相手の言った目的に虚偽があった場合や、危険だと判断した場合はこの時点で話し合いは無しだな」

「ではそれは私が行いましょう。妖精の中では私が一番精度が高いですし、念話を使えた方が何かと便利でしょうから」

「フロレーテが行ってくれるなら助かる。手紙が罠だった場合、相手の狙いはダンジョンマスターだ。いきなり襲い掛かってくる可能性はそう高くはないだろうが、注意はして欲しい。ある程度安全を確保するための道具は渡しておく。目的を聞いて、相手の言葉に害意がない場合は2階層へ誘導してくれ。その際に、武器と持ち物の回収と何かを隠していないかの確認も頼む」

「わかりました。恩を返すためにも、頑張らせていただきましょう」


 妖精の能力を使えば、相手の言葉と意思が一致しているかどうかで簡易の真偽判定が可能だ。

 これによって、相手に害意があるか、何らかの攻撃手段を持っているかどうかを確認することができる。


 懸念は返事を渡した時点で相手が攻撃、もしくはフロレーテを人質を取ることだが……この可能性は低いだろう。

 相手の誘いが罠だった場合、おそらくその狙いはダンジョンマスターを直接倒すことだ。ダンジョンマスターが目の前に現れるまでは、あまり動きは見せないだろうと考えられる。もちろん、相手が動きを見せた場合も考えて、結界を張る魔導具などのアイテムを持たせたりと対策はさせてもらうが。


「2階層への誘導には、転移陣を利用する。転移先は2階層の中間地点だ。話し合いはここで行う予定だな。脱出用に、あらかじめこちら側の足元には転移陣を設置しておく」

『ダン様?話し合いは誰が行うのでしょうか?もしよろしければ私が向かいましょう』


 アーマイゼが交渉役に名乗り出るが、今回は俺自身が向かうつもりだ。

 交渉場所に来た時点で、相手に害意がある可能性は低いだろう。

 相手が心変わりする可能性もあるが、この場合は結界の魔導具と転移陣による移動で脱出する。

 転移陣で別階層へ移動してから、さらにダンジョンマスター権限による転移を使うことで逃げ切ることが可能なはずだ。転移陣の先にアントたちを控えさせておくのもいいだろう。


 変わり身を用意できるようなアイテムや、遠距離からの通話が可能なアイテムがあればよかったのだが、残念ながらその手のアイテムはショップには存在しなかった。筆談の場合は、真偽判定ができないとなれば、誰かが直接向かうしかないのだ。


 残念ながら、アーマイゼたちではその体の大きさのせいで、結界の効力が不十分になってしまう。

 なにより、相手がダンジョンマスターとの話し合いを望んでいる以上、こちらが出なければ相手が話し合いを受けず、望む情報が手に入らない可能性がある。

 安全を確保できるなら、直接俺が向かった方がいいだろう。


「いや、相手がダンジョンマスターとの話を望んでいる以上、今回は俺が向かおう。結界の魔導具にあらかじめ大量の魔力を充填しておけば、ある程度の攻撃は防御可能だ。さらに、交渉場所には護衛役としてアントレディアを何体か配置する。フィーネは俺と一緒に来て、フロレーテと一緒に相手の言葉の真偽判定と魔法を使う兆しが無いかの監視を頼む」

「うん!アタシに任せてよ!」

『ご主人、私たちにも何か役目は無いのかい?』

「アーマイゼとフォルミーカは、ダンジョン内とその周辺に相手の伏兵がいないかを監視してくれ。それと、もしもの時のために2階層の仕掛けの準備だ。シュバルツは、俺たちの退路の確保を頼む。転移陣の先にアントの部隊を配置しておいてくれ。それと、他に侵入者がいた場合は、こちらに来ないように足止めを頼む」

『お任せください!ネズミ一匹見逃しません!』

『畏まりました。必ずや期待に応えて見せましょう』


 相手は交渉を始める時点で、武器やアイテムを持ち込むことはできない。何かしらの切り札があったとしても、持ち込むことができなければ問題はないだろう。どこかに隠してあっても、真偽判定を回避できない限りは見つけることができる。

 魔法に関しては、周囲に控えているアントレディアに盾を持たせ、その予兆を察知することで対応する。できれば魔法対策の魔導具があればいいのだが……これは後で探しておくとしよう。


 もし相手が逃げたこちらを追ってきたとしても、その時は転移陣の先に控えたアントたちが迎え撃つことになる。

 相手の武器やアイテムは没収しているし、一応警戒はしておくが、他の切り札がある可能性は高くはないだろう。もし他に何かあったのならば、前回の戦いで使っている可能性が高いはずだ。


 これなら、相手の誘いが罠であった場合にも、俺がやられてダンジョンが崩壊するという最悪の事態は回避できるはずだ。

 安全対策は今のところこれくらいだろう。あとは10日間の間にどれだけ追加できるかだな……

 次は、相手からどう情報を引き出すかを話し合おう。


「さて、次は相手の誘いが罠ではなかった場合の交渉の進め方だな。今回の交渉を受けるかどうかは、俺たちの方が決めることができる。それに、相手にどういう意図があったにしろ、一度こちら側に攻撃を加えているという状態だ。これを使って交渉を有利に進めたい」

「確かにこちらが有利と言えますが、あまり無茶な要求はできませんよ?具体的にはどのように進めるおつもりでしょうか」

「今回の交渉で手に入れておきたいのは、相手がファイアアントたちを突破した手段を彼ら以外が使用できるのか、もしできるのだとしたらどれほどの規模になるのかだな。それと、効果の詳細もできれば聞きだしておきたい。まずは前回の戦いでこちらに与えた損害を水に流し、その上で交渉を行うことの対価としてこの情報を要求するつもりだ」


 現状こちらが要求できそうな情報として、一番有用なのはこれだろう。

 敵の切り札の運用規模、その副作用や使用に関する制限について知ることができれば、類似の状況が発生した場合に、少数で時間を稼ぐのか、大軍で無理やり押しつぶすのか、それとも撤退させるのかを決定する指針になるかもしれない。

 ある程度の制限は推測できてはいるが、それでも相手から直接聞きだした方が正確なのは間違いない。


 相手が情報を明かさないという可能性もあるが、その時はこちらも話し合いには応じないことになる。

 準備にかけた時間は無駄になるが、取り返しのつかないデメリットというものは無いだろう。

 それに、もしこの誘いが罠ではなかった場合、相手はこちらから何かを聞きだしたいと考えていると予想できる。それならば、こちらの要求が通る可能性が無いわけではないだろう。


『なるほど、確かに主殿の言う情報が手に入れば、今後の防衛に役に立つかもしれません。では、エルフたちからその情報を聞きだせたとしましょう。その後の交渉では何を要求するのでしょうか?』

「そうだな……そのあとは、おそらくお互いに情報を提供し合うことになるだろう。今回攻めてきた冒険者がどの程度強いのか、外から見たダンジョンの評価はどの程度なのかを優先順位を考えて決めていくことになるだろうな。もし何か知りたいことがあれば言って欲しい」


 すると、フロレーテが何か思いついたようだ。


「ダン様、一つよろしいでしょうか?」

「ああ、何か思いついたのか?」

「できれば、妖精の里を襲った炎竜王がなぜあのような行動に出たのかが知りたいのです。あの時、里を襲った炎竜王は深手を負っていました。もし、それだけのことができる存在がどこかにいるとなれば、知っておく必要があるかもしれません」


 ふむ、それは確かに聞いておいた方がいいかもしれないな……

 フロレーテたちを救うために炎竜王に挑みはしたが、運よく勝つことができたのは、相手が深手を負っていたからというのが大きい。

 このダンジョンの近くに住んでいるジャイアントモールたちがその住処を追われる原因になったのも、強力なモンスターが現れたからだと聞いている。確か彼らが住んでいたのは、炎竜王の縄張りであった山脈の近くはずだ。


 そのモンスターがこちらへ来るかは分からない、もしかしたら炎竜王と戦って、すでに倒されている可能性もある。だが、モンスターの特徴や弱点の手掛かりがあれば、対策も用意できるだろう。


「はいはい!アタシも思いついたよ!」

「よし、じゃあ次はフィーネだ。何を思いついたんだ?」

「世界樹の枝の使い方を聞いておけば、きっと役に立つはずだよ!」

「そうだな。もし聞けそうなら、それも聞いておきたいところだな」


 フィーネの案もいいだろう。

 フロレーテによると、大樹の枝や葉は魔法の触媒として使えたらしい。大樹の大元である世界樹も、同じような使い方ができるのは間違いないだろう。

 いろいろと実験すれば、使い方は判明するかもしれないが、直接持ち主に聞くのが一番手っ取り早いはずだ。


 とはいえ、相手の出方が分からない以上、世界樹の枝をこちらが手に入れているのを伝えてしまうのはまずいかもしれない。もし大丈夫そうなら、その時は具体的な使い方に関して聞くことになるだろう。

 場合によっては、相手の切り札の情報を聞きだすときについでに聞いてしまうのもいいかもしれないな。


「後はそうだな……もし聞けそうなら勇者について聞いておくのもいいかもしれないな」

「勇者ですか?お伽噺でもよければいくつか知っていますが……」


 どうやら、勇者にまつわるお伽噺についてフロレーテが知っているようだ。


 魔物の大軍を倒したもの、強力な魔物を打ち倒したものなどの話が語られていく。中にはダンジョンマスターと相対した者や、あの炎竜王に挑んだ勇者もいるようだ。

 いずれの話でも共通しているのは、神の世界から世界を救うために呼ばれること、その名にふさわしい圧倒的な力を持つことだ。


 ダンジョンコアから手に入れた知識によれば、この大陸の西にあるホレイシア教国が勇者を召喚する技術を持っていたはずだ。

 今の時代に勇者が呼ばれているとは限らないし、このダンジョンにやってくる可能性も低いだろう。しかし、お伽噺の内容を聞く限り、もしここに現れたらとんでもない被害を出しそうだな……

 エルフたちがこの情報を持っているならば、弱点などがあれば優先的に聞いておきたいところだ。


「……他に意見は無さそうだし、とりあえず今のところはこれくらいか。あとは残りの期間内に細部を調整していくことになるだろう。各自、もし何か気が付いたことがあればいつでも言って欲しい」


 こうして、エルフからの誘いに関する会議はひとまず終了した。

 残りの期間で、さらにリスクを排除していかなければならないだろう。

 とりあえずは……まずは何か使えそうなアイテムが無いか、戦利品やショップの内容を改めてみるとしよう。

 遠征隊を撃退したことで、そこそこのDPを獲得している。フロレーテが危険にさらされる可能性もあることだし、できるだけ安全策を充実させてきたいところだな。

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