#4 進化
ダンジョン製作12日目
結局次の方針が決まらないまま1日が過ぎてしまった。
まあ、無理に1つに絞ることもないだろう。
まだまだ時間はあるのだから、状況に合わせていろいろ試してみよう。
さて気分転換のために、アントたちの様子でも見ることにしよう、なにかいいアイディアが浮かぶかもしれない。
ワーカーアントたちはあちこちに散らばって、せっせと仕事をしている。
それはいいのだが、ダンジョンが広くなり5匹程度では手が足りなくなりつつあるようだ、新しいワーカーアントを追加した方がいいかもしれない。
ソルジャーアントは相変わらず入り口近くの大部屋の周囲をパトロールしているようだ。
アントたちが働く様子を眺めていると、ワーカーアントのうちの1匹がなにかを運んでいるのに気が付いた。
よく見ると運んでいるのは、曇りがかった無色半透明、水晶のような見た目のこぶし大の結晶だった。
さて、あれはいったいなんだろうかと、観察を続ける。
入り口付近の大部屋までやってきたワーカーアントは、そのまま土や石ころと同じように倉庫に放り込むのかと思いきや、ソルジャーアントの方へと向かっていく。
ソルジャーアントはワーカーアントが運んできたそれを受け取ると、そのまま飲み込んでしまった。
ソルジャーアントに謎の結晶を渡したワーカーアントは、ダンジョンの拡張作業の続きをするために戻っていく。
ソルジャーアントも、何事もなかったかのようにパトロールを再開した。
しばらく観察していると、同じような光景が何度か見られた。
どうやら結晶は、ダンジョンのある程度深い場所で出てくるようだ。
ワーカーアントたちは、結晶を見つけるたびにソルジャーアントのもとへ運んでいき、ソルジャーアントはそれを受け取り飲み込んでいく。
いったい何をしているのだろうと、思っているうちにそれは起きた。
いくつかの結晶を飲み込んだソルジャーアントが、その場にうずくまり、震えだしたのである。
ソルジャーアントはしばらくの間そのままだったが、突然震えが止まったかと思うと、メキメキと音を立て巨大化を始める。
巨大化が終わり、ソルジャーアントが立ち上がる、その姿は大きく変わっていた。
体長は2m程まで成長し、特徴的だった大きな顎はさらに鋭く、巨大になり鈍く輝いている。
さらに背中には棘のような突起が生え、甲殻も分厚くなっているようだ。
リストを確認すると、ソルジャーアントの名前が消え、ウォーリアーアントが追加されている。どうやら別のモンスターへと進化したようだ。
進化したウォーリアーアントはしばらく体の様子を確認するように、身じろぎをしていたが、確認が終わったのかパトロールを再開した。
どうやら、あの結晶のようなものは、モンスターを進化させる効果があるようだ。
ふむ、ここはワーカーアントを召喚して、結晶を掘る効率を上げるのもいいだろう。
ワーカーアントを召喚するためにメニューを見ると、500ポイントでウォーリアーアントを召喚できるようになっていた。
とりあえずワーカーアントを10匹召喚する、これでワーカーアントは合計15匹になった。
ワーカーアントに結晶を掘りだしたら、大部屋に集めておくように伝える、ワーカーアントたちはダンジョンへと散らばっていった。
◆
ダンジョン製作13日目
ワーカーアントたちが掘り出した結晶がたまっている。
ウォーリアーアントに与えようとしたが、見向きもしなかった、どうやらいらないようだ。
それなら、とワーカーアントに結晶を食べるように命令してみる。
ワーカーアントは次々と結晶を食べていき、同じように震えだした。
どうやらワーカーアントも結晶を食べることで進化が可能なようである。
震えが止まり、ワーカーアントは進化してメディックアントになったようだ。
メディックアントの見た目は腹部が少し大きいだけで、ワーカーアントとほとんど変わらない。
メディックということは何らかの回復効果でも持っているのだろうか。
ワーカーアントも進化することがわかったので、さらに4匹のワーカーアントを進化させる。
次々とワーカーが進化していくと、1匹だけ他よりも一回りほど大きく、長い触角を持つものに進化した。名前はテイマーアントとある。
どうやら進化先は1つだけではないようだ、ということはソルジャーアントの進化先もウォーリアーアントだけではないかもしれない。
ソルジャーアントを召喚しようとメニューを見ると、メディックアントとテイマーアント以外にも3種のモンスターが増えている。
これは後で確認するとして、ソルジャーアントを3体召喚すると、アナウンスが響く。
《ダンジョン内のモンスターの種類が5種類になりました》
《鑑定機能が解放されました》
ダンジョンコアの新しい機能が解放されたようだ、試しにワーカーアントを対象にしてみる。
ワーカーアント
名前:-
基礎戦闘力:10
保有魔力:0/100
状態:健康
モンスターの種類や戦闘力、状態を確認できるようだ。
ふと思いつき、転がっている結晶に使ってみる。
魔石
保有魔力:8
あの結晶は魔石というらしい。保有魔力にはばらつきがあり5~10くらいのようだ。
さらに、魔石を食べているソルジャーアントにも鑑定を試してみる。
ソルジャーアント
名前:-
基礎戦闘力:20
保有魔力:172/200
状態:健康
魔石を食べるたびに、ソルジャーアントの保有魔力が増加していく。
そして、保有魔力が200になると、ソルジャーアントが進化を始めた。
他のソルジャーアントも、保有魔力が限界になると同時に、進化を始めたようだ。つまり保有魔力が上限に達すると進化をするのだろう。
ウォーリアーアント1匹の他に、盾のような大きな頭を持ったアントと大きな腹部を持つアントに進化したようだ。
新しく現れたアントに鑑定を使う。
シールドアント
名前:-
基礎戦闘力:50
保有魔力:0/500
状態:健康
ガンナーアント
名前:-
基礎戦闘力:50
保有魔力:0/500
状態:健康
新しいアントはそれぞれ、シールドアント、ガンナーアントというようだ。
2体のアントは、ウォーリアーアントとともに、巣のパトロールを始めた。
次は追加されたモンスターを呼び出してみるとしよう。
500ポイントを使い、アントフライを3匹、アントワームを1匹召喚する、アントスパイダーは召喚コストが500ポイントだったので次の機会に回すことにする。
現れたのは50㎝ほどの巨大な蠅と、3m程のミミズだ。どうやらアリ型のモンスターではなかったようだ。
召喚された4匹に、テイマーアントが近づいていく。
テイマーアントが触角を振ると、4匹はテイマーアントの周りに集まりだした。
そのままテイマーアントの後ろについて、巣の奥へと移動していった。
テイマーアントは、他のモンスターを使役することができるようである。
明日からはワーカーアントを増やして、しばらくは魔石の採掘を進めるとしよう。
アントたちが思い思いに活動する様子を眺めながら、そう決めたのであった。
本編中に載せていなかったモンスターのステータスをここに載せておきます。
メディックアント
名前:-
基礎戦闘力:50
保有魔力:0/500
状態:健康
テイマーアント
名前:-
基礎戦闘力:50
保有魔力:0/500
状態:健康
アントフライ
名前:-
基礎戦闘力:10
保有魔力:0/100
状態:健康
アントワーム
名前:-
基礎戦闘力:20
保有魔力:0/200
状態:健康
基礎戦闘力は、戦闘中での危険度を総合的に判断した数値です。
保有魔力の上昇に伴い、戦闘力は向上します。
保有魔力が上限に達すると、進化可能なモンスターは次の形態へ進化します。
総戦力は、ダンジョンに所属するモンスターの基礎戦闘力の合計値です。
ダンジョン名:-
深さ:10
階層数:1
残りDP:97P
総戦力:600
ダンジョン解放まで残り47日