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#24 ダミーコア

「やっとダンジョンの修復が終わったな」


 フィーネと仲直りした次の日。兵士たちがやってきて、いろいろな場所が荒れてしまったダンジョンの修復が終わった。

 まあ荒れたといっても、崩落させた天井を埋め戻したり、アースアントに作らせた壁を撤去したりと、どちらかというとこちらの行動の後始末の方が手間がかかったのだが……


 兵士たちがダンジョン内で全滅したことで、25万ポイントものDPが獲得できた。

 残念ながら7階層の追加とキューブの追加、さらにフィーネのために森を用意してかなりのポイントを使ってしまったのだが、まだいくらか残りはある。


 7階層を追加しても、機能の拡張はなかった。6階層を追加した時もそうだったので、5階層の追加の時点で機能の拡張は終わりなのかもしれないな……


「そろそろ戦利品の確認でもするか!」

「おー! 何があるか楽しみだね!」


 兵士や冒険者の装備は倉庫の中にしまってある。死体の方はさすがに残しておくわけにもいかないので、ダンジョンコアに吸収させておいた。何かいいものがあるだろうか。


「これはただの鉄か……」


 鑑定してみたところ、兵士たちの装備はただの鉄の装備のようだ。ナイトアントの甲殻に太刀打ちできなかったようだし、期待はしていなかったが……

 フィーネは鉄の兜に潜って遊んでいた。楽しそうにしているが、次のものがまだまだあるので片付けてしまう。


 次は冒険者たちの装備である。兵士たちと一緒にいた冒険者たちの装備はそこまででもないな……

 ファングボアの皮鎧、魔鉄製の長剣、おや?シールドアントの盾なんてものもあるな。


「ダン? これは?」

「マジックポーチ? へえ、見た目より物が入るんだな」


 フィーネが見つけたのは、小さな革袋だった。

 何の変哲もなさそうな革袋だが、見た目より多くものが入るようだ。

 いくつかあったので、覚えておく。いつか役に立つかもしれないな。


 他に何かないか見ていったが、そこまでいいようなものはなさそうだ。これも片付けていく。


「さて、次が本命だな……」


 次はシュバルツと死闘を繰り広げた冒険者たちの装備だ。装備の見た目も他のものよりも数段よさそうである。あれだけの力を持った冒険者の装備なら効果も期待できそうだ。


「火竜の鎧に、爆炎のロッド、裁きの大槌……さすがに強そうな装備ばかりだな」

「かっこいい装備がいっぱいだね! あっ! ダン! このナイフきれいだよ!」


 こちらの装備は、名前からして強そうなものが並んでいる。

 裁きの大槌か……地面に横たわる巨大なハンマーを試しに持ち上げてみようとしたが、ビクともしなかった。

 自分の非力さにちょっと悲しくなった……まあダンジョンマスターだし、前に出て戦うこともないからいいか。


 どの装備も今までの鑑定したものとは一線を画すものばかりのようだ。

 フィーネが精巧な装飾をされた鞘に納まったナイフに目を付けたようだ。

 ナイフといっても大きさは30センチはあるだろうか。フィーネが持ち上げようとしていたが、危ないのでやめさせておく。


「へえ……」

「きれいなナイフだね!」


 鞘から抜いてみると、青みがかった銀色の刀身を持つナイフが現れた。

 鑑定するとミスリルで作られたナイフらしい。鋭く研ぎあげられている刃はとてもよく切れそうで、なおかつ驚くほどに軽い。使えるかどうかはともかく、護身用として持っておくのもいいかもしれないな。


「まあ、いくらいい装備があっても、うちのダンジョンには使える奴がいないんだけどな……」

「みんな持てないからね!」


 確かにいい装備なのだが、このダンジョンのモンスターはジャイアントアントだ。

 武器があっても、持つことはできないし。防具も人間用なので着ることはできない。

 盾をくくりつけたりはできるかもしれないが、自前の甲殻もあるからな……邪魔になりそうだしいらないだろう。


「あとはこれか……ふむ、結界柱っていうんだな」

「けっかいちゅー?」


 装備の鑑定を終え、倉庫の中に戻しておく。残ったのはあのバリアのようなものを張っていた杭のようなものだ。崩落現場に残っていたので、拾っておいたのだ。

 鑑定の結果は結界柱と表示された。保有魔力がだいぶ減っているようだ。

 さっきのナイフと同じような材質の杭の表面に、複雑な魔法陣が彫られている。


「うーん、効果を試してみたいところだけど。使っても大丈夫なのか?」

「たぶん大丈夫だと思うよ!」


 あのバリアの効果を調べてみたいが、何かしらの害があるかもしれない。

 使ってみるか迷っていたところ、フィーネが自信のありそうな声で大丈夫だと言った。


「ん?フィーネ。わかるのか?」

「アタシは妖精だからね! 魔法陣くらい読めるよ!」

「へえ、そんな特技があったんだな」

「ふふーん! すごいでしょ!」

「助かるよフィーネ! これでこのアイテムが使えそうだ」


 フィーネは褒められたことでご機嫌になったようだ。さっそく魔法陣を解読してもらうとしよう。


「じゃあフィーネ。さっそくどんなことが書いてあるのか教えてくれるか?」

「任せてよ! えっと……地中……設置……領域…………識別コード?」


 フィーネが杭の表面の魔法陣を見て回る。しばらくすると、解読が終わったようだ。


「終わったよダン!」

「おお! すごいぞフィーネ!」

「ふふーん!」


 フィーネの説明によるとこの結界柱は、杭の先端を地中に埋めることにより、杭を中心とした領域を展開。

 魔力を消費し続けることによって、領域を維持することができるらしい。特に攻撃などの効果はないようだ。


 危険性がないことがわかったことだし、一度試してみるとしよう。

 結界柱に魔力を補充して地面に刺しこんでみる。すぐに領域が展開された。

 なんだかピリピリした感じがするのだが、本当に大丈夫なのだろうか……


「なあフィーネ。なんだかピリピリしてるんだけどこれ大丈夫なのか?」

「ふえ? ピリピリ? そんなことないよ?」

「何も感じないのか? おかしいな……」


 どうやらフィーネは何も感じていないようだ……となると原因は何だろうか。


「うーん、ピリピリするしなんだか落ち着かないんだけどな……何かわかりそうなこととかないか?」

「ちょっと待ってね! ……領域の中の感じはダンジョンにちょっと似てるかな? 違うところもあるみたい」

「ふーむ、ダンジョンか。違和感のもとはそれかな?」


 どうやら結界柱が作る領域の内部は、ダンジョンに似ているらしい。試しにメニューを開いて……あれ?メニューが使えない。

 ……どう考えても一番怪しいのはこの領域だろう。なんだかピリピリするし。

 結界柱を地面から抜くと、メニューがまた使えるようになった。


 ふむ、結界柱が作る領域内だとダンジョンの機能が使えなくなるようだ。……違和感のもとはそれなのかもしれないな。

 確認が終わったので、結界柱をまた地面に刺しておく。


 ……それにしても今日のフィーネはやけに頼りになる。もしかして偽物だったりするかもしれない。


「なあフィーネ。今日はやけに頼りになるけど、偽物だったりしないよな?」

「むっ! それどういう意味よ! こうしてやる!」

「痛い!? わ、悪かったフィーネ。謝るから髪の毛を引っ張るのはやめてくれ!」

「アタシはいつも頼りになってるんだから!」


 どうやら本物だったようだ。フィーネが髪の毛を引っ張って怒る。フィーネをなだめていると、突然何かが割れるような音が響いた。


「うお!?」

「ふわ!?」


 驚いて音のした方を見ると、結界柱が真っ二つに割れてしまっていた。


「割れてるな……」

「うん、割れてるね……」


 制限時間や耐久度でもあったのだろうか?効果の検証をして結界柱の対策を練りたかったのだが……

 直そうにも、どうやって直せばいいのかわからないのだから仕方ない。仕方ないからあきらめるか。


 割れてしまった結界柱を、ダンジョンコアに吸収させてしまう。その時、アナウンスが響いた。


 《ダミーコアが解放されました》


 ダミーコア?どうやら新しい機能が追加されたようだ。


 どういう理由で追加されたのだろうか?

 ダミーコアが解放されたのは結界柱を吸収させた直後。結界柱を吸収させたから、という可能性があるか。


 結界柱以外のアイテムでも追加されるのだろうか?試しに火竜の鎧を吸収させてみる。


 《環境:竜域が解放されました》


 ふむ、どうやらアイテムによっては吸収させたときに、何かしらの機能が解放されるようだ。


 爆炎の杖を吸収させると、煉獄の環境が追加され、裁きの大槌では聖域が追加された。

 3つともうちのダンジョンでは使いにくそうな環境だ。実際使うこともないだろう……


 兵士の装備は、吸収させても何も起こらなかった……つまりある程度の等級か、特定の効果のあるアイテムを吸収させた場合、何かしらの機能が解放される可能性があるようだ。


 さて、ダミーコアは1つ作るのに1万ポイントが必要なようだ。ポイントはあるし、試しに1つ作ってみるとしよう。


「これがダミーコアか」

「ダンジョンコアにそっくりだね!」


 コアルーム内に、ダミーコアが現れる。偽物のコアというだけあって、見た目はダンジョンコアと全く一緒だ。

 効果の方は……ダンジョンの機能の一部を使えるほか、ダミーコアを中心に半径1kmほどの領域を作ることができるらしい。

 試しに領域を作ってみる――今度はピリピリしないようだ。同じダンジョンによって作られる領域だからだろうか?


 どうにも結界柱によく似た効果のように思える。やはり結界柱を吸収させたおかげで作れるようになったのだろうか?

 結界柱とはどういうものであったのだろうか。壊れてしまったのが悔やまれる。


 ダミーコアを作れる数は、保有している階層の数までのようだ。

 領域を作れるのはいいのだが、ダンジョン内に設置してもあまり意味はない。操作に関してもダンジョンコアがある。せいぜいが冒険者が誤認した場合に、これを持ち帰っていくくらいだろう。


 ダンジョンの外に並べて領域を広げようにも、半径1km程度ではそこまで大きくはならないな。


「これは微妙な効果だな」

「あんまりいらないかもね……」


 ダミーコアはあまり使い道がないな……とりあえず作った分のダミーコアは、4階層の入り口の前にコアルームっぽい部屋を作って設置しておこう。運が良ければ、3階層を突破されてもそこで引き返していくかもしれない。


 まあ今回は、ダンジョンコアの新しい機能が増えただけでもよしとすることにしよう。

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