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#21 ダンジョン防衛戦 夢の終わり

本日4話目です。

まだの方はご注意ください。

 冒険者たちが誘い込まれ、シュバルツと遭遇したようだ。

 シュバルツの咆哮がダンジョンの空気を揺さぶり、周りのアントたちを呼びよせる。


 それにしてもすごい迫力だな……というかジャイアントアントってあんな声が出せるものなんだな……


「始まったみたいだな」

「シュバルツちゃんかっこいいね!」


 シュバルツが咆哮したあたりからフィーネは大興奮だ。


 冒険者たちがシュバルツたちへ向かって駆け出す。戦いが始まったようだ。

 さすがにネームドモンスターは簡単には倒せないようだな。冒険者たちはだいぶ苦戦している。

 戦闘は他のアントに任せて、シュバルツは冒険者たちを観察しているようだ。


 呼び寄せられたアントたちも続々と冒険者のもとへと向かっている。すぐに合流して、戦いに参加するだろう。


「がんばれよ……」

「そこだー! やっちゃえー!」


 コアルームには、フィーネの応援する声が響いていた。


 ◆


「ダリオ! 砲撃が来るぞ! 壁を張ってくれ!」

「わかりました!『アースウォール』」


 ダリオが張った土の壁に身を隠すと、そこに酸の砲弾がぶつかる。

 ジュウジュウと音を立てながら土の壁が溶かされるが、しばらくは持ちそうだ。


「行きますよ、『フレイムストーム』!」


 炎の渦が、ジャイアントアントの群れを包み、攻撃が止まる。

 その隙に土の壁の陰から躍り出て、距離を詰める。


「せいっ!」


 こちらに向かってくるナイトアントに向けて大剣を振り下ろす。

 鎧に剣が食い込むが、少し浅い。やはりネームドモンスターは伊達ではないようだ。


「レオン、危ないぞ! 避けろ!」


 横から迫る気配を感じて後ろに下がる。どうやら炎の渦を突き抜けてナイトアントが突進してきたようだ。

 あの勢いの炎を超えてきたくせに、表面が少し焦げ付いただけのようだ。


「ぬうん!」


 ダリオに向かって迫るナイトアントをゴルバドがハンマーで殴り飛ばす。

 吹き飛んだナイトアントはすぐに立ち上がるが、ふらついているようだ。


「ゴルバド、ナイスだ!」

「はっはっは、後ろはお任せくだされ」

「しゃべってる間があったら1匹でも多く倒して来い!」

「これは手厳しい、それでは行きますぞ!」


 ゴルバドがハンマーを振り下ろし、ふらつくナイトアントの頭を砕く。どうやら打撃の方が効きそうだな。

 目の前のガーディアンアントに攻撃するが、あまりにも固い甲殻のせいで、刃が通らない。


「レオン! どけ!」


 ジノーが脇をすり抜け、短剣を素早く振るう。どうやら甲殻の隙間を狙って足を切りつけたようだ。

 ガーディアンアントが体を支えられなくなり、その場に崩れ落ちる。


「もう一度行きますよ! 『フレイムストーム』!」


 さっきよりも威力のこもった炎の竜巻が吹き荒れる。後衛にいたジャイアントアントたちがいくらか倒れるが、決定打には遠いようだ。

 それにしても戦闘が始まってからジェネラルアントが動く様子がない。まるで観察するかのようにじっとこちらを見ている。


 ネームドモンスターたちと戦っている間に、ジャイアントアントの増援が到着し始めた。だんだんとジャイアントアントの数が増えていく。


「ぬうん! このままではまずいですぞ!」

「だからってどうしろっていうんだよ! こちらとらこれで精いっぱいだっての!」

「仕方ありませんね、大きいのを一発お見舞いしますよ! みなさん気を付けてください! 『エクスプロージョン』」


 大きな爆発が起こり、爆風にあおられる。土煙が晴れると、増援に来ていたジャイアントアントの群れはそのほとんどが跡形もなく吹き飛んでいた。


「あいかわらずとんでもねえ威力だな! ジャイアントアントがまとめて木端微塵だぜ!」

「まとめて吹き飛ばすのはいいが、崩落が起こらないようにしろよ。はあっ!」

「もし天井が崩れてきてもちゃんと守ってあげますよ。『フレイムランス』」

「ははは、それは頼もしいですな。いっそ天井を落として生き埋めにしてしまうのもいいのでは?」


 軽口を叩きながら戦闘を続ける。強がってはいるがみんなギリギリの戦いだ。一歩間違えば簡単に逆転されるだろう。


「くっ、敵の数が減らないな……」

「あれを見ろ! 回復してやがる!」


 どうやら動けなくなったジャイアントアントたちをメディックアントが回復しているようだ。

 回復役を何とかしなければ……


「ダリオ! ジノー! メディックアントを狙うんだ!」

「任せてください! 『スプレッドフレア』」

「あいつか! そらよ!」


 広範囲に広がる炎がメディックアントを焼き尽くし、素早く放たれた矢が貫く。

 こちらも近くにいたメディックアントを切り飛ばす。ゴルバドが他のジャイアントアントごと何匹かまとめて吹き飛ばしているのが視界の端で見えた。


 これで回復役はあらかた倒した、もう一度増援が来る前に何とか数を減らさなければ……

 そんなことを考えていた時だった、今まで動きを見せなかったジェネラルアントが、ついに動き出したのだ。


「ギギギッ」

「なにか来るぞ!」

「これ以上何かしようっていうのかよ! もう勘弁してほしいぜ」


 ジェネラルアントが一鳴きすると、他のジャイアントアントの動きが一気に変わる。

 ナイトアントが横一列に並び、こちらへ突進してくる。避けきれないところだったが、間一髪ダリオの防御呪文が間に合う。


「くっ、『アースウォール』」

「ダリオ! 上から来てるぜ! ……ちっ、スナイプアントの狙撃がうざいな……」

「わかってますよ! 『ファイアウィップ』……魔術師に接近戦はさせないで欲しいものですね」

「ダリオ殿! 今助けに行きますぞ! くっ……そこを退くのです!」


 ジノーは遠距離からスナイプアントに狙撃され、ダリオは上から降ってきたアサシンアントに追い回されている。ゴルバドもなんとか助けに行こうとするが、ガーディアンアントに阻まれ進むことができていないようだ。

 まるでこちらの役割をすべて計算しているような動きだ。あのジェネラルアントはあそこまで知能が高いのか?


 仕方がない、ここは切り札を使うしかないようだ。


「おおぉ!」


 前方からまたもや並んで突進してくるナイトアントに向けて横なぎに大剣を振るう。

 切りつける瞬間、剣に魔力を込める。魔力をまとった剣はバターのようにナイトアントの甲殻を切り裂き。上半身を切り飛ばす。


「はっ、どうだ……!」


 魔力をまとわせることで剣の切れ味を大幅に上げる奥義の一つだ。

 武器の消耗が激しくなる上に、結構な量の魔力を使わされるから連発はできないのだが、そうもいってはいられまい。


「おらっ!」

「ぬうん!」

「これで最後だ! 『フレイムシュート』」


 他のメンバーもなんとか凌いだようだ。相手の数は少しずつだが、確実に減ってきている。

 ここでジェネラルアントがまたもや吠える。


「ギイイイイイィィッ」


 ジェネラルアントが咆哮を上げるとともに、2つの通路から追加の増援がなだれ込んでくる。

 追加されたジャイアントアントはそのほとんどが、ダリオに向かって進んでいく。


 助けに行こうとするが、他のジャイアントアントに阻まれ進むことができない。


「くそおおぉ! そこを退けえ!」


 ダリオも何とか応戦するが、手が足りない。ついにジャイアントアントの1匹が迫る。


「ぐうっ!?」


 回避しようとしていたが、足に食いつかれたらしい。そのまま振り飛ばされ、地面に落ちる。

 叩きつけられた衝撃で気を失ったようだ。足をやられたようで夥しい量の血があふれている。


「ダリオ! くそっゴルバド! 頼む!」

「ぬおおおお! 今回復しますぞ! 『ハイヒール』!」


 ゴルバドがジャイアントアントの群れに飛び込み、ダリオを抱えて飛び出てくる。

 ゴルバドもあちこち噛まれたようだが、まだ動けるようだ。


「ゴルバド! ダリオの様子は!」

「傷は塞がりました意識は回復していません! 命に別条はないですぞ!」


 ゴルバドの声に胸をなでおろす。しかしこのままではまずい。ダリオが気絶したことで魔法による支援が期待できなくなってしまった。

 ジャイアントアントの増援はある程度途切れかけてはいるが、一番危険なジェネラルアントとその取り巻きはまだ残っている。……仕方あるまい、ここはこうするしかないか。


 震えそうになる声を必死に張り上げ、残った二人に伝える。


「ここはもう無理だ! お前たちは先に脱出しろ! ここは俺が引き受ける!」


 それを聞いた仲間たちが信じられないといった様子で叫ぶ。


「お前ここで死ぬ気かよ! だったら俺が残る! お前が行け!」

「そうですぞレオン殿! 私も一緒に残りますぞ!」

「ジノー、ゴルバドこれが一番なんだ。お前の索敵能力ならジャイアントアントの少ない道を選べる! 途中で戦うにしても回復役は必要だ! いいから行け!」


 ジノーが震える声で続ける。


「だけど、だけどよ! 何も誰かが残らなくたっていいじゃないか! みんなで逃げれば……」

「……ジノー、頼む。このダンジョンは明らかに異常だ。誰かが伝えないとまずい」

「でも……」

「ジノー殿行きましょう。……レオン殿ご武運を」

「くそっ……レオン! 絶対に戻ってこいよ! 待ってるからな!」

「ああ、あとで必ず戻るから今度酒でもおごってくれよ」

「わかった……絶対だぞ! 約束だからな! 破ったらただじゃおかないぞ!」

「それは怖いな。ああ、約束だ。絶対戻るさ」


 ゴルバトがダリオを背負い駆け出す。ジノーも迷っていたようだが、ゴルバトの後を追っていった。


 ジノーにはああ言ったが、まあ無理だろうな。どうやっても死ぬ未来しか想像できない。

 せめてギリギリまで暴れるとしよう。


「さて、ここからは一歩も通さないぜ……」


 震える足に力を入れ、ゴルバドたちが入っていった通路の前に陣取る。

 ジャイアントアントの群れが迫ってくると思いきや、左右に分かれ、ジェネラルアントがゆっくり進んでくる。


「へっ、一騎打ちってか。モンスターのくせに粋な奴だね」


 こちらも剣を構える。しばしの静寂の後、両者が動いた。


「うおおぉ!」


 なけなしの魔力をすべて込める。あとを考えない正真正銘全力の一撃だ。

 今までの人生で最高と自信を持って言える一撃がジェネラルアントに迫る。


「ギッギィ……」


 甲高い音とともに高く宙を舞う影が二つ。一つはジェネラルアントの前足。そしてもう一つは半ば程から折れた俺の大剣だった。


 2つの影は回転しながら宙を舞い、遠くへと落ちる。

 ジェネラルアントは健在だ。じっとこちらを見下ろしている。


「はっ、最高の一撃だった。これで悔いはねえぜ……」

「ギギッ」


 ジェネラルアントが残った前足を振り上げる。まるで見事だったとでもいうように鳴くと、俺をめがけて足を振り下ろした。


「ジノー、ダリオ、ゴルバド、生きて帰れよ……」


 そんな願いとともに、強い衝撃を受け、俺の意識は消えた。

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