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#19 ダンジョン防衛戦 悪夢の軍勢

本日2話目です。

まだの方はご注意ください。

「それでは各員行動開始!」

「「「「おおー!」」」」


 兵士たちの雄たけびが響く。皆の士気は高いようだ。

 第3部隊を率い、私たちもダンジョンへと潜るとしよう。


「よし! 1班は前へ! 報告書の通りなら、ガンナーアント以外の攻撃は鎧と盾で十分防げるはずだ!」


 鎧と盾で身を固め、槍を持った1班を先頭に、長槍を装備した2班、クロスボウを装備する3班、攻撃魔法使いと回復魔法使いを含む4班、そして後ろの防御を固める5班の順でダンジョン内を進む。


 報告よりも通路の幅がだいぶ広くなっているようだ。予定では途中で部隊を分けることも考えられていたが、この分なら分けない方がよさそうだな。


「前方にジャイアントアントの群れを発見!」

「ようやく出てきたか、1班は防御を固めろ! 2班は1班の間から槍で攻撃!3班と4班はガンナーアントを優先的に処理しろ! 撃て!」


 遠距離からクロスボウと魔法により攻撃する、いくらか弾かれたようだが、ダメージを与えることに成功する。

 近づいてきたウォーリアーアントが何とか噛みつこうとするが、鎧と盾に阻まれ、うまくいかないようだ。その隙に後方から2班が槍で攻撃し牽制する。

 その間に装填を終えた、クロスボウの至近距離からの斉射で残りのジャイアントアントを倒す。


 怪我人はいないようだ。なかなかいい滑り出しだろう。


「怪我人はいないようだな、このまま進むぞ。まずは報告にあった大部屋を制圧する!」

「「「「はっ!」」」」


 その後、順調にジャイアントアントたちを倒しながら、大部屋へとたどり着く。

 大部屋の中には数十を超えるジャイアントアントたちが待ち受けているようだ。予想していたより数が多いようだな……


「ふむ、数が多いが問題はないだろう。総員戦闘準備!」


 数が多かろうと、戦闘の方法は変わらない。盾で抑え込み、槍で牽制、矢と魔法で殲滅するだけだ。

 呼吸を合わせ、部屋の中へとなだれ込む。すぐさま隊列を組み、ジャイアントアントとの戦闘を開始する。


「どんどん攻撃を放て! 相手に攻撃する暇を与えるな! 前衛! 後ろにアリを通すなよ!」


 ジャイアントアントたちは前衛に阻まれ、攻撃を通すことができない。そのまま弓と魔法の斉射でだんだんと数を減らしていく。冒険者たちも、ただ見ているだけでなくジャイアントアントを牽制しているようだ。


 しばらく続いた戦闘の後、部屋の中に動いているジャイアントアントは1匹もいなくなった。


「戦闘終了! 被害状況を報告せよ! ……ふむ、犠牲者、重傷ともになし、軽傷者が数名か。伝令! 拠点に情報を届けろ! 小休止を挟み、矢の補給と回復が完了次第侵攻を再開する!」


 被害状況を確認し、休憩を取らせる。そのうち後からやってきた他の部隊も合流した。

 さすがにジャイアントアントの数が多かったせいで、何人か軽傷者が出たようだ。だがそれも回復魔法をかければ問題ない程度。これならばダンジョンの制圧も思ったより被害が出なさそうである。


 十分に休憩を取れたところで、消費した矢も後方から運ばれてきたようだ。侵攻を再開するとしよう。


「休憩やめ! これより侵攻を再開するする! 1班前へ! 進め!」


 大部屋を抜けると、通路が枝分かれしている。戦闘も問題はなかった、ここは他の部隊と手分けして進むことにしよう。


「道が枝分かれしているな……我々は正面の道を進むとしよう」


 そのまま、他の部隊と別れると、慎重に前方にある通路へと歩を進めていった。


 ◆


「ここまでは作戦通りだな!」

「そうだね! うまくいってるね!」


 侵入者たちは、入り口近くの大部屋のアントたちの殲滅を完了したようだ。

 ジャイアントアントとの戦闘は見事なものだった。全体が一つの生き物のように戦っていたのはさすが兵士といったところか。中級のアントたちでは少々の数では敵わないだろう。


 今は休憩中らしい、伝令らしきものがダンジョンの外へと走っていった。

 そのうちに、他の侵入者たちも大部屋にたどり着き、休憩を始めたようだ。


「あいつら分かれて進むみたいだぞ」


 侵入者たちは、枝分かれした通路をバラバラに進んでいく。

 いくつかの部屋にいるアントを殲滅し、順調に奥へと進んでいるようだ。


 そして、最初に入ってきた侵入者が、上級のアントが待ち構えている大部屋へとたどり着こうとしている。


「そろそろいいだろう、ここからはこっちの番だ。待機中のアントは壁を壊せ!」

「いよいよだね! いけいけー!」


 侵入者の後ろにあった壁が崩れ、崩れた壁から出てきた上級アントを含むアントの一団が通路へとなだれ込む、同時に前方からもアントたちが侵入者の方へと向かう。これで前後からの挟み撃ちの完了だ。


 ダンジョン内のモンスターは食事をとる必要がない、ということは、閉鎖した空間にどれだけ閉じ込めておいても問題はないのだ。そこで大部屋につながる通路を土で塞ぎ、中にアントたちを待機させた。

 土はある程度固めてあるので、外から見れば、他の壁とほとんど区別がつかない。そして油断して通り過ぎたところで壁を崩し、そこからアントが沸きだすという寸法だ。


 一度見れば対策される可能性もあるが、逃がすつもりはもとよりない。

 これなら、前回のように大部屋まで逃げられることもなく挟み撃ちにすることができる。


 さあ、ここからが本番だ。相手はどうでるかな?


 ◆


 順調にダンジョンを進み、いくつもの大部屋を通り過ぎる。

 ここまでは順調だ、定期的に来る伝令によると、他の部隊も大きな怪我人も出ず、順調に進んでいるようだ。

 しばらく歩いたところで、同行していた冒険者が声を上げる!


「後ろからジャイアントアントが来るぞ!」

「なんだと! 後ろには何もいなかったはずではないのか! 総員戦闘準備! 5班は防御を――」


 兵士たちに指令を出そうとしたところで、前方にいた兵士からも声が上がる。


「隊長! 前方からもアントが迫ってきます!」

「なに!? 挟み撃ちだと! いや……慌てるな! 1班と5班は防御! 3班と4班は全力で攻撃しろ!」


 後方から近づいてきたアントの姿が次第にはっきり見えてくる……なんだあれは……あんなモンスター情報にはなかったぞ!

 やってきたのは、分厚く刺々しい鎧に身を包んだジャイアントアントだった。体長も今までのものよりも一回り大きい。鎧をまとっているジャイアントアントは他にも何匹もいるようだ。

 情報にないモンスターが現れたのには驚いたが、やることは変わらない。ただ殲滅するだけだ。


「な、なんだあれは!?」

「慌てるな! ジャイアントアントには変わりはない! 攻撃開始! 撃て!」


 クロスボウから放たれた矢が敵へと吸い込まれていく。

 しかし、今まで中級のアントにもやすやすと突き刺さっていた矢は、鎧をまとうジャイアントアントたちにぶつかるも、その全てが弾かれてしまった。魔法も、表面をわずかに焦がしたり、ごく小さな傷を与えるだけで、とても効いているようには見えない。


「ばかな……攻撃が通じないだと……」

「隊長! ジャイアントアントが向かってきます! 指示を!」


 呆然としていると、攻撃を受け切ったジャイアントアントたちが猛然とこちらへ突進してきた。

 気を取り直し、突進を防ぐように指示を出す。


「と、突進が来るぞ! 前衛はおさえこめ!」

「はっ、はい!」


 前衛の兵士たちが、突進を防ぐ……勢いに押されて、少し後退することになったが、何とか抑え込むことに成功した。しかし、ジャイアントアントのまとう鎧の防御力の前に手も足も出ない。


「胴体を狙え! 胴体の下は鎧に包まれていない! あそこなら攻撃が通るはずだ!」


 胴体まで鎧に包まれているジャイアントアントだが、腹部の下側は甲殻がないようだ。あそこなら攻撃が通るだろう。

 クロスボウも至近距離からなら少しは刺さるようだ、中級の魔法も効果が出ている。ダメージを重ね、ようやく1匹倒すことに成功する。

 だがそこまでだった。次から次へと迫る強力なジャイアントアントに前と後ろを挟まれ、じりじりと押されていく……そしてついに……


「わぷっ!?」


 ジャイアントアントの攻撃を押さえこんでいた前衛の一人が近づいてきたジャイアントアントに、何かをかけられ、動きが鈍る。

 よく見れば、ジャイアントアントではない、よく似ているがクモのモンスターだ。


「な、なんだこれ! うわっ」


 ねばねばした糸に足を取られ、体勢が崩れたところを、強引に押しのけられ転んでしまう。

 その隙間から、ジャイアントアントが体をねじ込み、前衛が崩れていく。

 そして、ジャイアントアントが前衛を抜けてしまった……牽制のために突き出される槍を鎧で弾きものともせず、ジャイアントアントたちが無防備な後衛へと迫る。


「ぎゃああぁ!?」

「く、くそう!」

「いやだ! こんなところで死にたくなんてない!」


 前衛の兵士もジャイアントアントに囲まれ、次々と倒されていく。

 突進を食らい、大顎に噛みつかれ、次々とやられていく兵士たち……ウォーリアーアントの大顎を防いでいた鎧も捻じ曲げられている。

 何とか助かろうと抵抗しているが、数に押され抵抗むなしく一人、また一人と倒れていく。

 そして私の他に戦えるものもいなくなった……部隊の中心にいた私のもとへもジャイアントアントたちが迫る。

 迎撃するために腰にさしていた剣を振るうも、たやすく弾かれどこかに飛んでいってしまった。


「ばかな……こんなはずでは……」


 こんなことになるなんて思いもしなかった……確実に勝てる戦いだったはずなのだ。

 そうして、私の意識は闇へと消えた……


 ◆


「どこもうまくいったようだな、これでひと段落か」

「やったね! 大勝利だよ!」


 ナイトアントの群れに挟まれ、奮戦むなしく兵士たちはやられたようだ。ウォーリアーアントをやすやすと葬ったクロスボウも、ナイトアントの硬い甲殻の前では無力だったようだ。

 他の部隊の兵士たちも、同じように上級のアントたちに囲まれ、倒されている。


 別の部隊の兵士たちは、ガーディアンアントに攻撃を阻まれている間に、カノンアントに砲撃され、防御を強引に突破された。巨大な酸の砲弾を盾と鎧で防ぎきれずに全身に高濃度の酸をかぶった前衛の兵士は、あまりの激痛に絶叫を上げ地面を転がり周り、その隙に前衛を超えたアントたちが後衛へと迫り、全員倒されていた。


 もう一つの部隊の兵士は、他のアントと戦っている隙に、スナイプアントとアサシンアントによる奇襲攻撃により後衛が壊滅。有効な攻撃手段を失った兵士たちは、絶望の表情のまま戦い続け、疲れたところをアントたちの群れに飲まれていった。


 さらに入ってきた兵士たちは、上級のアントの群れを見て慌てて逃げ出したが、ボムアントたちがぶら下がっている下を通ってしまい、大量の酸のシャワーを浴びることになる。

 ボムアントは酸をまき散らした後に攻撃することなく退却してしまったので、他のアントが止めを刺しに来るまで、全身に走る焼かれるような激痛に耐え続け転がり周ることになった。

 この部隊が一番悲惨なやられ方だったかもしれないな……


 伝令に走っていた兵士たちも、壁を崩して湧き出てきたアントたちに囲まれ、なすすべもなく倒された。


 これで外のバリア内にいるもの以外の兵士たちは全滅したようだ。

 兵士たちと一緒にいた冒険者も、同じようにアントたちの群れに倒されている。


 さて、次はあの冒険者たちだな……

次はいよいよAランク冒険者のお話ですね!

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