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#18 ダンジョン防衛戦 悪夢のはじまり

「これまたずいぶんとたくさん来たな」

「同じ装備の人がいっぱいいるよ!」


 ダンジョンへと向かってくる一団は、そのほとんどが統一された装備を付けているようだ。どこかの兵士なのであろう。

 その数は200人ほどだろうか、いくつかの塊になってこちらへと向かっている。


 その後ろには装備に統一感のない集団、おそらく冒険者と見られる集団が20人ほど続いているのが見える


 後ろを歩く冒険者の集団の中に、他の冒険者と比べて、違った雰囲気を持つ冒険者たちを見つけた。

 見るからに他の冒険者の付けているものよりもはるかに質のよさそうな装備を付けているものが4人いる。

 近くにかたまって進んでいる様子を見る限り、同じパーティーなのだろう。


「なんだか強そうな奴らがいるな……」

「見て見て! あの鎧かっこいいよ! 剣もおっきい!」


 高ランクの冒険者と見られるパーティーの中でひときわ目立つのが、赤い鎧を付け、大剣を背負った大柄な剣士だ、おそらく先頭を歩く彼がリーダーなのだろう。


 さらに続くのが、ローブを着て大きな宝石のはまった杖を持つ線の細い魔法使いらしき男、地味な茶色のケープをまとい、弓を背負った斥候らしき男、そして神官のような服を着て、巨大なハンマーを装備した大柄な戦士……いや神官か?……とりあえずその4人だ。

 おそらく、彼らがあの集団の中で最も強いだろう。


 兵士の中には、隊長らしき少し豪華な鎧を付けている兵士もいるが、あの4人の装備の良さとは比べ物にならない。


「あいつらは要注意だな……この前の冒険者たちよりも強そうだ」

「そうだね……でも、きっと大丈夫だよ!」


 能天気にフィーネが笑う。そうだな、ここで心配していても仕方がない。できることをやるだけだ。


 ダンジョンの入り口へとたどり着いた彼らは、地面に杭のようなものを打ち込む。

 すると、杭の周囲に半径100mほどの、円形のバリアのようなものが張られた。


「杭を打ち込み始めたと思ったら、なんだあれ……バリアか?」

「うーん……なんだろうね?」


 呟いた言葉にフィーネが反応する、フィーネにもわからないようだ。


 バリアの発生源であろう杭を鑑定しようとするができなかった。ならばと、バリアの中に視点を移動させようとすると……移動できない。これはどういうことだ?


 どうやら、バリアの中は物を鑑定をしたり、視点を移動したりといったことはできないが、遠距離に視点を置いて、中を見ることはできるようだ。


 つまりあのバリアは、ダンジョンの能力を阻害する何らかの能力があるようだな。大方拠点を守るためのものといったところだろうか。ダンジョン全体に何らかの影響を与えることはなさそうだ。


 円形のバリアが出来上がると、その中にテントが建てられていく。どうやら、長期間ここに滞在する予定であるようだ。


 あの兵士と冒険者の数を見る限り調査というわけではあるまい。本格的にダンジョンを攻略しに来たのだろうと思われる。


 テントを張り終えると、豪華な鎧を着た兵士が、何か指示をしている。

 指示が終わったのか、兵士と冒険者が雄たけびをあげ、行動を開始した。


 2割ほどの兵士を残して、残りは全員ダンジョンへと侵入してくる。残った兵士は拠点の防衛を行うようだ。


 侵入者たちは、最初の大部屋にいた下級と中型のアントたちの群れを倒すと、いくつかのグループに分かれて迷宮を進み始めた。ある程度奥まで入るまでは、下級と中型のアントしか配置していない。


 さて、もう少し奥まで進んでからが本番の始まりだ。いろいろと試させてもらうとしよう!


 ◆


「隊長! ダンジョンの入り口へと到着しました!」

「よし、結界柱を設置しろ! 設置後テントを張り、拠点を作る!」

「「「「はっ!」」」」


 道中何度かソルジャーアントに襲われたが、無事ダンジョンの入り口へと付いたようだ。

 今回の任務は数日間はかかると予想されている。すぐさま、隊員たちに拠点の準備をさせる。


 結界柱は、ある程度の強さのモンスターを寄せ付けない効果のあるフィールドを張ることができる。

 フィールドの維持に魔力が必要なうえに、モンスターの侵入を完全に防ぐことはできないが、拠点の設置には欠かせないものだ。


 さらにこの結界柱は、今回の任務の場合もう一つの効果を発揮する。


 ダンジョンの周囲では、いきなり別の地点に入り口が現れる、ということが起きることがある。

 拠点の中にいきなり入り口が現れ、モンスターが出てきては危険だ、休むことすら困難だろう。


 しかし、どういうわけか、結界柱を設置するとその周囲には入り口が現れないのだ。

 迷宮都市では、結界柱の高性能版である、結界石を使い、街中にモンスターが現れるのを防いでいるそうだ。さすがに結界石を用意することはできなかったが、これでも十分だろう。


 実際にダンジョンの周囲で使うのは初めてなので、少し不安ではあるが、これで入り口の発生を防ぐことができるだろう。


「隊長! 拠点の設置が完了しました!」


 テントの設置も終わったようだ、さっそくダンジョン内のモンスターを倒しに行くとしよう。


「うむ、ご苦労だった……これよりダンジョン内部の殲滅を開始する! 我々、第一部隊と第二部隊は拠点の防衛だ。第三から第五部隊は冒険者とともにダンジョン内へ突入! 冒険者たちは兵士たちから離れずにに行動するように。それでは各員行動開始!」

「「「「オオオォォ!」」」」


 雄たけびをあげ、動き始める。隊員たちは次々とダンジョンの中へと潜っていった。


 ダンジョンへと入っていく様を見守っていると。『緋色の牙』の方々がこちらへやってきたようだ。

 なんでもダンジョン攻略を果たしたことのあるAランクの冒険者たちらしい、今回集まった冒険者たちの中でも、抜きんでた戦力を誇るだろう。活躍を期待したいところだ。


「これは『緋色の牙』の皆さん。今回の任務はよろしくお願いします」

「ああ、こちらこそよろしく頼む。事前の打ち合わせの通りに俺たちのパーティーだけで入らせてもらうが、問題ないか?」


 どうやら、作戦の確認に来たようだ。特にイレギュラーな事態も起こってはいない、事前に打ち合わせした通りでいいだろう。


「はい、問題ありません。我々ではあなた方の足手まといになってしまうでしょうからね」

「わかった、それでは行ってくる。きっちり働かせてもらうよ」

「はい、お気を付けて。もしもの時は兵士たちをお願いします」


 さすがに精鋭である我々といえども、Aランクの冒険者と比べるとやはり劣ってしまう。一緒に行動して足を引っ張るくらいなら、最初から単独で行動してもらった方がいいだろう。

 作戦の確認を終えると『緋色の牙』の面々もダンジョンへと消えていった。


 しばらくするとダンジョンから戻ってきた伝令が、現在の状況を伝える。


 どうやら最初の大部屋にいたジャイアントアントの群れを無事に殲滅した後、物資を補給。その後分かれ道になっていたので、いくつかの班に分かれてダンジョン内の掃討を開始したようだ。ここまでは計画通りだ。


 その後も何度か伝令が来て、順調に掃討が進んでいることを伝える。報告通り、ダンジョン内部には下級と中級のアントばかりのようだ。

 拠点には次々と倒されたジャイアントアントが運ばれ、解体されていく。

 この量なら結構な金になるだろう。我々の装備に加工するのもいいかもしれんな。


 兵士や冒険者たちの中には軽傷を負ったものは少しいるらしいが、戦闘に支障がない程度だそうだ。少々予想していたよりも、ジャイアントアントの数が多いようだが問題はないだろう。


「今のところは順調に進んでいるようだな。このまま何事もなく終わればいいが」

「そうですな、予想よりも少々アリ共の数が多いようですが、現時点では問題なく倒せているとのことです。この分だとすぐに任務も終わるでしょう」


 しかし、それ以降いつまで経っても伝令が戻ってこない。まさかダンジョン内で何かあったのだろうか。


 多少の犠牲が出る可能性は予想されていたが、すべての部隊と連絡が取れなくなるなんて予想外もいいところだ。


「ええい! 何が起こっている! 伝令は何をしているのだ!」

「隊長、落ち着いてください。何かトラブルがあったのかもしれません。まずは確認のために何人かダンジョンへ向かわせましょう」

「……そうだな、第二部隊はダンジョンの中へ突入し何が起こっているのか確認しろ! 危険だと判断したらすぐに退却するように! くれぐれも無理はするなよ!」


 すぐさま第二部隊を確認のために突入させる。しかし、いつまで経っても誰一人ダンジョンから出てくることはなかった。

 拠点の防衛をしていた隊員たちも、様子がおかしいと気が付きざわつき始めたようだ。


「い、いったい何が起こっているのだ」


 呆然と、ダンジョンの入り口を見つめる。ぽっかりと口を開けるダンジョンの入り口は、最初と違いまるで化け物が口を開けて獲物を待っているかのように見えた……

次は、中に入った第3部隊の隊長の視点でお送りします。

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