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#15 クイーンアント

 アントの大軍を倒し切った冒険者が引き返していく……どうやらダンジョンから脱出していくようだ。


 まさかあそこまで強力な冒険者が来るとは……強い冒険者が来るだろうとは思っていたが、想像以上だった。


「や、やったよーダン! あの人たち帰っていくみたいだよ!」

「ああ、何とかなったな……それにしても、かなりの数がやられたな……」

「アリさんいっぱい死んじゃった……」


 フィーネがしょんぼりしている。3階層の拡張をさせていたワーカーアントたちは残っているから、巣の維持に関しては問題はないだろう。しかし、ソルジャーアントをはじめとする戦闘向きのアントたちはかなりの量が犠牲になった。……ダンジョンの中も少し寂しくなってしまったな。


 少ししんみりしてしまった。気を取り直して、ダンジョンの状況の確認を続ける。


「まさかあれだけの数が倒されるとは思わなかったな……」

「あの人たち強かったね……」


 あの後、アントフライの警告音を聞きつけ集まったアントたちの大半が冒険者に倒されてしまった。次々と集まっていったアントフライたちが何度も仲間を呼び続け、その様子は、まるで黒い津波のようになっていた。よくあれを倒し切れたものだ……


 アントたちの決死の奮戦により、なんとか冒険者たちを撃退することに成功はしたが……被害は甚大である。もし、今このダンジョンを攻められたとしたらほとんど抵抗することもできなく攻略されてしまうだろう。できるだけすぐに戦力を補充したいところだが。


 大量のアントたちを動員することで、今回は何とかなったが、もしあのレベルの冒険者たちが徒党を成してダンジョンへとやって来たら、ダンジョンを守りきることはできそうにもない。ダンジョンを守るためには、さらなる戦力が必要だろうな。


「戦力を増やさないといけないんだが――さてどうする」


 マザーアントを増やすべきだろうか? いや、今回倒されたアントはかなりの数だった。数に頼る戦法は有効ではあるが、いつかアントが増える数が追い付かなくなる可能性は捨てきれない。

 となると、アントたちの質を上げるしかないのだが――それも難しい。


 アントたちは1匹1匹の戦闘力はそこまで高くない、ネームドモンスターとなっているアントたちもあのレベルの冒険者の相手をするのは厳しそうだ。つまり、アントたちをさらに進化させる必要がある。


 ダンジョンから魔力が供給され、保有魔力が上限になっても、アントたちは2回目の進化する様子を見せない。

 これ以上進化しないのだろうか?進化ができればそれが一番なのだが、さてどうしたものか。


「フィーネ、何かいい案とかないか?」

「うーん、他のモンスターを召喚するとアリさんたちと喧嘩しちゃうんだよね……」

「そうなんだよな……」


 以前ダンジョンのモンスターの種類を増やそうと思い、穴の中で生活できるようなモンスターを召喚したのだが、たちまちアントたちに囲まれ、倒されてしまった。

 どうやらダンジョン内のモンスターは無条件に協力的になる仕様ではなく。捕食者と被食者のように、相性が悪いモンスター同士だと、どちらかが倒されてしまうようだ。


 ちなみに、ジャイアントアントは共生関係にあるモンスター以外はすべて襲ってしまうようだ。つまり、ジャイアントアントがいる階層には、他のモンスターを配置することはできないのである。

 ドラゴンなんかの強力なモンスターなら、倒されることはないだろうが、逆にアントたちを殲滅してしまいそうだ。


「あっ! 新しい階層を作ってそこにモンスターを配置すればいいんだよ!」

「うーん、それも考えてはいたんだが……かなりポイントがかさむんだよな……」


 確かに、4階層を追加して、ジャイアントアントが移動できないように、転移陣などで繋いでしまえばモンスターを配置することは可能である。

 その手は一応考えてはいた、しかしDPの消費に対する防衛力の上昇の効率が、ジャイアントアントを使う場合に比べて、悪いような気がするのだ。


 ジャイアントアントが使えないということは、穴を掘ってダンジョンを拡張することは難しい。ポイントを消費して、穴を掘ることもできるが、ポイントの消費が激しいので厳しいだろう。

 となると、ダンジョン内の環境を変更して空間を確保する必要があるのだが、キューブ1つだけだと草原などにするには狭い。ということは、広いスペースを取るためには、どうしてもいくつものキューブを並べる必要がある。山を配置するなら加えて高さも必要になるため、さらにコストがかさんでしまうだろう。


 そこから、十分に戦力になるまでモンスターを召喚、強化していくにはどれだけのポイントがかかるか想像したくない……


「いや……背に腹は代えられないか……」

「アタシきれいな森とかお花畑がいいな!」

「なにかいいモンスターがいそうだったらな……」


 残りポイントは8万と少しといったところだ。いささか心もとないが、新しい階層を準備することができないわけではない。あとはおいおいモンスターを追加していけばいいだろう。……フィーネの要求は置いておくとして、まずは4階層目を追加するとしよう。


 4階層を追加すると、いつものようにアナウンスが響く。


 《4階層が追加されました》

 《魔力変換機能が解放されました》


 ふむ、4階層の追加に伴い、新しい機能が解放されたようだ。


 魔力付与機能は、DPを消費することによって、モンスターやアイテムの保有魔力を増加させることができるらしい。DPと魔力の変換効率は1:1のようだ。ダンジョンコアの吸収機能の反対バージョンといったところだろうか。


 確かに使える機能ではあるが、アントたちに魔力を付与して保有魔力をカンストさせたところで進化しないのだから意味が……いや、待てよ?何か忘れているような……


「そうだ! マザーアントだ! マザーアントがまだ進化してないじゃないか!」

「ふあ!? もう! 大きな声出さないでよ! びっくりしたじゃない!」

「ああ、ごめんフィーネ。ちょっと興奮しちゃって……」


 思わず叫んだら、フィーネに怒られてしまった。まあそんなことはどうでもいい。


 そう、だいぶ前からダンジョンにいたせいで、忘れかけていたが、マザーアントは未進化のモンスターである。必要以上に魔石を食べることもなく。増加した魔力は産卵によって消費してしまう。ネームドモンスターとなった今でも、保有魔力の上限が大きすぎてカンストすることなく、未だ進化していなかったのだ。

 自然に進化をするのを待つには、かなりの時間がかかるだろう。しかし、魔力付与機能を使えばすぐさま進化させることができる。


 新しく階層を作り、別のモンスターを配置するのはかなりのコストがかかる上に、どこまで効果があるのかは分からない。ならば、ここは賭けになるが、マザーアントを進化させてみるのもいいかもしれない。


「よし決めた! マザーアント たちを進化させるぞ!」

「おおー! ドキドキするね!」


 フィーネとともに、マザーアントたちの進化後に思いを馳せながら、魔力を付与する……DPをほとんど消費してしまったが、これで保有魔力はカンストだ。保有魔力がカンストすると同時に、2体が進化を始める。さて、どんなアントに進化するのか。


「!? ダン! なんかすごく大きいよ!」

「これは――予想以上だな。クイーンアントか、体長はどれだけあるんだ?」

「ふおおお! すごい! すごいよ!」


 マザーアントたちが進化を終え、現れたのはとてつもなく巨大なモンスターだった。名前はクイーンアントというらしい。


 体長は――大きすぎていまいち掴めないが、おそらく20mといったところだろうか、とにかく大きい。今まで2体がいた部屋が一気に手狭になるほどの大きさである。

 さらに巨大になった腹部に、巨大な足、王冠のような形をした突起を持つ頭部に、見るからに堅そうな重厚な甲殻。まさしくジャイアントアントの女王にふさわしいモンスターと言えるだろう。


「フィーネじゃないけど、すごいとしか言いようがないなこれは……」

「むっ! アタシすごい以外も言えるもん! えーっと……すごく強そう!」

「それ結局すごいってことじゃないか……」


 まあフィーネの気持ちもわからなくはない。これはすごいとしか言いようがないだろう。


 まあ問題はあまりに大きすぎて、今の通路の大きさじゃダンジョンの中を移動することはできそうにないってところか。

 移動するにも、巨大すぎる腹部が邪魔をして素早い移動は期待できそうにもない。どちらかというと、ダンジョンの最深部にいるラスボスといった感じのモンスターになるのだろう。


「ダン! 見て見て! なんかいっぱい卵産んでるよ! すごい!」

「卵を産む能力もマザーアントの上位互換ってことか」


 クイーンアントは次々と卵を産んでいく。10、20……すでに2体合わせて100を超えた……どれだけの卵を産むのだろうか。……ようやく産卵が終わる、部屋の中にはかなりの量の卵が産み落とされ、クイーンアントの巨体も相まって、かなり狭そうな感じになってしまった。


「おおー! いっぱいだね!」

「全部で400個くらいか? 1匹当たりでも200個か、いきなりとんでもない数に増えたな」


 ネームド化したマザーアントが1日におよそ20個の卵を産んでいたということは、なんと10倍である。

 このまま増えれば、爆発的にダンジョン内のモンスターの数が増えるだろう。領域を拡張しなければ、すぐにダンジョンが手狭になってしまうかもしれないな。


 しかし、数は大幅に増えたのだが、相変わらず問題は解決していない。いまだに数で押すしか有効な戦法はなさそうだが……やはり、他のモンスターを配置しなければならないか?


 その時、何かに気が付いたフィーネが、声をあげる。


「ねえダン! あれ! あれ見てよ!」

「ん?どうしたんだフィーネ。何をそんなに慌てて……なに!?」


 フィーネの声に、指さす方向を見ると、名前をつけておいたアントたちが進化を始めている。

 今まで進化する様子はなかったというのに、どういうことだろうか。もしかしたらマザーアントがクイーンアントへと進化したことが関係しているのかもしれない。これでモンスターの質の部分も解決するといいのだが……そんな期待を受けながら、アントたちは次々と新たな形態へ進化していくのであった。

モンスターのステータスは名前なし状態でのステータスです。

ネームドモンスターは基礎戦闘力と保有魔力の上限が2倍になります。


クイーンアント

名前:-

基礎戦闘力:3000

保有魔力:0/200000

状態:健康


クイーンアント強すぎじゃない!?って言う意見が出そうなので一応言い訳を。

クイーンアント単体ではそこまで強くありません、攻撃に関しては、巨体での踏み潰しと薙ぎ払いが危険な程度です。耐久の高さと一撃の重さは脅威なので、この戦闘力です。

どちらかというと、アントの生産能力の方が非常に危険です。


クイーンアントはダンジョン最深部から移動しないので、今後クイーンアントが戦闘で大活躍する!といった場面はまずないです。


アント増えすぎ!という点でも、ダンジョンの調査が終わったので、今後ちらほらと侵入者たちがやってくることになります。

ある程度数を確保できないとすぐに狩りつくされてしまいそうなので、卵の量を増やしています。まあマザーアントを増やしちゃうのもアリなんですけどね…

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